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1997年 11月 14日 [ イベント ]

No.012-4:詩情と迫力、冬の日本海の風物詩「地曳網」


 “天然のいけす”と呼ばれる富山湾の湾曲が鮮やかに見渡せる黒部市生地海岸。冬ともなれば波が大きくうねるこの荒磯の風物詩となっているのが、昔ながらの漁法「地曳網」である。
 地曳網漁法は、江戸末期の天明年間(1781−1789)にはすでに生地浦で行われており、大正初期には網場が18か所を数えるほどであった。さらに、富山湾沿岸の他の浜においても、地曳網は盛んに行われていた。しかし現在、この伝統漁法の操業を見ることはなかなかできなくなった。
 生地海岸での操業も、12月20日から3月下旬の厳冬期のみ。冷たい浜風のなか、30人以上でかかっても1時間半を要する大仕事である。指揮をとる漁師の言葉も荒っぽく、まさに冬の荒波との格闘といった迫力だ。網のなかの漁獲を知らせるのはカモメたち。その数が多いほど網のなかは大漁。タイ、アジ、ヤリイカ、カワハギ、ニギス…、富山湾の多彩な魚種が網のなかで跳ねるのを見て、ようやく漁師たちにも笑顔が浮かぶ。
 浜に揚がった魚を分配する方法も面白い。漁師の人数分に魚をおおよそ等分し、円形に並べる。その周りを漁師たちが後ろ向きになって回り、止まったところでそれぞれの取り分が決まるというわけだ。地元ではこれを「キザする」と呼んでいる。
 生活の糧を得るために古くから続いてきた地曳網だが、その光景は富山湾でも珍しいものとなり、いつ頃からか見物人や観光客が集まるようになった。また、冬の日本海の詩情を表す絶好の被写体目当てに、県内外から多くのカメラマンも訪れている。
 なお、地曳網の操業は毎日午前9時からと午後1時半からの2回行われている。

* 問い合わせ
●黒部市観光開発室
〒938 黒部市三日市725
TEL 0765-54-2111(内線163)

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