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2020年 9月 30日 [ トピックス ]
No.971:富山県発の技術、宇宙での活用に期待/富山県美術館、IPT2021作品募集
また、富山県美術館(富山市木場町)の話題も紹介しよう。3年に一度開催する日本で唯一の国際公募ポスター展「第13回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2021」(通称:IPT2021/会期:2021年7月中旬~9月上旬)の作品を募集している。応募締切は12月10日(木)。
●デジタルものづくりラボに金属3Dプリンタ
日本海側随一の工業集積を誇る富山県。「富山県産業技術研究開発センター」は、材料開発から製品試作、機能評価まで製品化に必要な研究開発が行える最新の試験研究設備を備えており、共同研究や技術指導、技術情報の提供、人材育成などさまざまな支援を通し、県内産業の振興に努めている。
県産業技術研究開発センターの「ものづくり研究開発センター」では、2014年度に「デジタルものづくりラボ」を設立し、最先端の金属3Dプリンタを導入した。新たな金属材料に対する造形技術の開発や3Dプリンタに特化した製品設計への対応、デジタル技術に対応した新たなものづくりプロセスの構築など、3Dプリント技術を核とした“デジタルものづくり技術”への取組みを加速させている。
デジタルものづくりラボの主要設備は、製品の3次元立体形状データを取得する「可搬レーザ3Dスキャナー」、X線透過画像をもとに、大きな金属試料の外観や内部構造の3次元形状を出力する「大型エックス線CT」、3次元のCADデータをもとに、アルミ合金、特殊鋼などの金属材料を用いて立体形状を造形する「金属3Dプリンタ」などの最新設備からなる。
金属3Dプリンタでは、3次元立体形状データをもとに金属材料粉末にレーザ光を照射し、1層ごとに溶解・固体化させ、順次積層することにより立体形状を製作することができる。切削や鋳造など従来の加工方法では製作が不可能とされる複雑な形状を有する金属部品や多品種少量品、試作品を迅速に製作でき、新製品の開発期間の短縮、製品の高付加価値化につながる技術として期待されている。
●惑星有人探査車などへの利用を想定
大気のない宇宙空間では太陽光の影響を強く受ける。たとえば、月面の温度は昼夜で摂氏120度からマイナス180度まで変化する。宇宙機内の搭載機器の温度を一定に保つには、熱を遮断したり、逃したり、蓄えたりする熱制御機器の開発が急務となっており、県産業技術研究開発センターとJAXA、(有)オービタルエンジニアリングは2016年度から共同研究を進めてきた。
金属3Dプリンタで製作された宇宙機器用熱制御デバイスは、アルミ合金製でタテ8cm、ヨコ10cm、厚さ2cmの直方体。内部には、熱を伝える「フィン」と呼ばれる細い棒が規則的に並んでおり、中空構造になっている。フィンを除く中空の空間に温度上昇を防ぐ蓄熱材(ワックス等)を入れて使用する。蓄熱材が固体から液体に変化するときに大量の熱を吸収する性質を利用して大発熱を伴う宇宙機器の温度上昇を抑制する。フィンの数を増やすことで表面積を広げ、さらに伝熱方向にそれらを配向させることで効率的に熱を吸収できるメカニズムだ。フィンはデバイスの内部構造としても機能し、軽さと強度を両立できる。
このデバイスは、蓄熱材が溶けて熱を吸収する由縁からSiSi(シィシィ:Structure-integrated Space ice (宇宙の氷))と名付けられた。SiSiは発熱を伴う宇宙機器に隣接するように設置され、発生した熱を一時的に蓄熱する。極めて厳しい熱設計が要求される惑星有人探査車や大気圏再突入機(サンプル回収カプセル)などへの搭載がターゲットだ。
アルミ合金の金属粉末にレーザを照射して造形する3Dプリンタを用いることで、軽量化と熱伝導性の両立を実現。容器の外側と内側を一体成形することで強度も高めた。既に関連特許を出願済み。今後、性能試験を実施し、早期の実用化を目指す。
SiSiは既に国内の宇宙機システムメーカーから引き合いがあり、性能試験の結果によって宇宙機への搭載の可能性が広がる。富山県の技術が宇宙で活躍する未来に期待も高まる。
●地場産業、伝統の技と3Dプリント技術との融合
最先端のデジタル技術と高岡銅器などの伝統産業を組み合わせた研究開発が、富山大学や県総合デザインセンター、県内デザイナーなど産学官連携で進んでいる。県産業技術研究開発センターは、高岡銅器で広く使われている銅・スズの合金(青銅)の粉末を使った金属3Dプリント技術を構築した。この技術を核として、鋳造では困難な薄い格子構造を幾何学的に配列した一輪挿しの花器や、板材に彫金や着色などの伝統的な技法で加飾した試作品など、3Dプリンタの特徴を活かした新たな設計思想や伝統的な匠の技の適用性について研究開発を進めてきた。伝統産業分野でも、デジタルものづくり技術を取り入れた製品開発の加速が期待される。
県産業技術研究開発センターの主任研究員・山本貴文氏は、「特殊な金属構造体を製作できる金属3Dプリンタの最大の魅力は、製品の高機能化を実現できることです。高岡銅器の伝統的な加工技術や、3次元的な構造設計(デザイン)、解析技術を組み合わせることでその価値を一層高めることができます。現在、県内の粉末製造会社と金属3Dプリンタに使用する新規材料の研究開発を行っており、県内産業の金属3Dプリンタに対するモチベーションも高まってきています。今後も、金属3Dプリンタの魅力を最大限に引き出す研究開発を継続し、その成果を県内産業に発信していきたい」と話している。
●第13回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2021、作品募集!
「世界ポスタートリエンナーレトヤマ(IPT)」(主催:富山県美術館)は世界からポスターデザインを公募し、審査・選抜する、国内で唯一の国際公募展。ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ(ポーランド)、ラハティ国際ポスタートリエンナーレ(フィンランド)、ブルノ国際グラフィックデザインビエンナーレ(チェコ)、メキシコ国際ポスタービエンナーレ(メキシコ)と並ぶ世界5大ポスター展の1つと評されている。
IPTは1985年の創設以来、3年に1度のトリエンナーレ方式で行われ、来年で13回目を迎える。富山県美術館に移転後、2回目の開催となる。前回(2018年)のIPTには、世界47の国と地域より、総計3,239点のポスターが寄せられた。
IPT2021では、これまでの紙媒体での応募によるA、B部門に加え、前回のIPTより新設した若手対象のデジタルデータでの応募部門を、「U30+Student部門」として、30歳以上の学生にも募集対象を広げた。
全部門共通の応募規定として、作品は応募者本人が制作したポスターで、2018年5月1日以降に制作されたものとする。A部門は、紙媒体のポスターが対象。テーマは特に定めない。クライアントワーク、自主制作など不問。B部門は、紙媒体のポスターが対象。テーマ[INVISIBLE]での自主制作。U30+Student部門は、30歳以下(1990年以降の生年)または、教育機関に在籍中の学生(学生は30歳以上の方も応募可能)。デジタルデータ(CD-R)での応募。テーマ[INVISIBLE]での自主制作。
●来年、富山県美術館で全入選・入賞作品を展示
国際的に活躍する内外のグラフィックデザイナーらを審査員に迎えて、入選・入賞作品を選出、展示する。審査は第一次審査及び第二次審査を行う。応募作品は富山県美術館が組織した第一次審査会により審査し、入選作品を決定。なお、第一次審査は、(A)(B)両部門が応募作品の現物にて、U30+Student部門はデータによる事前審査通過作品のB1サイズ出力にて行う。 第二次審査会により入選作品からA、B両部門合わせた入賞作品(グランプリ、金賞、銀賞、銅賞)、U30+Student部門の入賞作品(金賞、銀賞、銅賞)を決定する。
募集は12月10日(木)<必着>まで。募集要項の詳細などについては、富山県美術館のホームページ内IPT2021のページに掲載されているので確認を。
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「富山県産業技術研究開発センターの取組み」について
●富山県産業技術研究開発センターものづくり研究開発センター
TEL.0766-21-2121
FAX.0766-21-2402
http://www.itc.pref.toyama.jp/
「第13回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2021」について
●富山県美術館
TEL.076-431-2711
FAX.076-431-2712
https://tad-toyama.jp/