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2016年 12月 21日 [ トピックス ]
No.786:県内3つの行事、ユネスコ無形文化遺産登録!
●高岡御車山、動く美術工芸品
平成28年11月30日(日本時間12月1日)、第11回ユネスコ政府間委員会(期間・場所:11月28日~12月2日、エチオピア・アディスアベバ)で審議が行われ、登録が決まった。
富山県の登録数3件(秋田県、岐阜県、三重県も同数)は、愛知県の5件に次いで多い。政府間委員会決議文仮訳では、高岡御車山祭の御車山行事について、「市の中心の住民が山を組み立て、その周辺の地域に住む人々が山を曳き、囃子を担当する。責任は年齢に応じて変わり、年配の世代が経験の少ない世代や若者に向けて指導を行う」と行事の様子を紹介している。先人から大切に守り継いできた行事の文化的価値が世界に認められたわけだ。
県内の3つの行事を紹介しよう。「高岡御車山祭の御車山行事」は、加賀藩祖・前田利家が豊臣秀吉から拝領した御所車(ごしょぐるま)を、二代目当主で高岡開町の祖・利長が高岡の町民に与え、城下を曳き廻らせたのが始まりとされ、400年以上の歴史がある。毎年5月1日、金工・漆工・染織などの技術の粋を尽くした絢爛豪華な7基の山車(だし)が山町筋~関野神社を巡行する。山車は一番上の「鉾留(ほこどめ)」や花傘で飾られている。日本でも屈指の華やかさだ。通町の鉾留が鳥兜、御馬出町(おんまだしまち)は胡簗(やなぐい)に弓矢、守山町は五鈷鈴(ごこれい)、 木舟町は胡蝶、小馬出町(こんまだしまち)は太鼓に鶏、一番街通は釣鐘、二番町は桐葉である。高岡御車山祭の御車山行事は、国の重要有形民俗文化財と無形民俗文化財の両方に指定されている。国内で両方に指定されているのは、高岡御車山祭、京都祇園祭の山鉾行事、高山祭の屋台行事、秩父祭の屋台行事と神楽、日立風流物の5件しかない。
高岡御車山保存会の田井佳夫会長は、「世界に祭や御車山の価値を認めていただき、大変ありがたく思う。決議文を読むと、地域住民が力を合わせて守り伝えてきたことを評価くださったようだ。伝承に向けて決意を新たにしている。昨年春に開館した高岡御車山会館、5月1日の祭当日に訪れる人が大幅に増えている。今年の祭には、15万6,000人(前年比18.2%増)が訪れた。遺産登録で国内外から来県される方々がさらに増えるだろう。御車山の魅力を紹介していきたい。来年度の完成を目指し、『平成の御車山』を制作しており、仕上った車輪や人形を会館で展示している。近年、三重から愛知、岐阜、富山、能登半島へ至る広域観光ルート『昇龍道』が注目を集めており、行事が伝わる沿線各地と連携する方法もあるだろう」と話している。
●提灯のあかり、夜空をこがす
「魚津のたてもん行事」は、豊漁と航海の安全を祈って約300年前から始まったとされ、毎年8月第1金・土曜、魚津市・諏訪神社の祭礼として行われる。高さ約15mの帆柱型の心棒に90余りの提灯をつるし、長さ約10m、総重量約5tもあるそり台に立てた「たてもん」7基を威勢よく曳き回す。大型の三角形は、神前に供え物を山と積んだ形などをかたどったものとされ、神前に供え捧げたてまつるという言葉が変化し、「たてもん」と呼ばれるようになったと伝えられている。車輪のないそり台と、「たてもん」が倒れないように頂部から下がる6本の控え綱を6人で操る点が大きな特徴。たてもんが回転すると、控え綱の曳き手は回転速度に合わせながら走り、巧みにバランスを保つ。迫力あるシーンの連続だ。
魚津たてもん保存会の海苔洋二会長は、「5歳の頃から曳いてきた。たてもんは私の人生を映す鏡のようなものだ。車輪ではなく、そりが付いていて曳き回すのが大きな特徴。2001年から3年連続でハワイの文化交流イベント『ホノルルフェスティバル』に出演し、現地の人や観光客にたてもんの魅力を伝えた。いまも記憶に鮮やかに残っている。遺産登録を記念し、市では来年2月5日に新川文化ホール(魚津市)でシンポジウムや講演会を開催し、たてもんの魅力を発信する。祭りでは、1基のたてもんを曳くためには100人ほどが必要になる。少子化や世帯の減少で地元住民の曳き手が少なくなり、たてもん協力隊として、毎年、2日間で延べ300人のボランティアに協力してもらっている。とにかく伝統を継承することが大切だと思う」と力を込める。
●趣のある町並みに曳山と庵屋台
「城端神明宮祭の曳山行事」は、城端神明宮の春の例祭として毎年5月4日・5日に行われる。約300年の伝統を誇る優雅な祭で、獅子舞、神輿、剣鉾(けんぼこ)、傘鉾(かさぼこ)、庵屋台(いおりやたい)、6基の曳山が“越中の小京都”といわれる城端の趣のある町を練り歩く。京都祇園の一力茶屋などを模した精巧な庵屋台がそれぞれの曳山を先導。庵屋台の中では、笛、三味線、太鼓の音にのせて、庵唄が唄われる。6基の曳山は彫刻や飾り金具で装飾された漆塗りの豪華なもの。4日は宵祭で、各山宿で御神像を飾る。山宿に選ばれることは大変な名誉。畳などを新調して屏風が広げられる。5日に御神像を曳山の上に移して巡行する。
城端曳山祭保存会の大西正隆会長は、「絢爛豪華な曳山と庵屋台が一緒に巡行するのが曳山行事の特徴。江戸時代、城端絹織物で財をなした旦那衆が京都や江戸に出掛け、見聞してきた庵屋台や曳山のミニチュアをわざわざ作り、城端の町衆も楽しめるようにした。先人たちの心意気がいまも祭に息づいている。建造には、城端別院善徳寺の建築に携わった大工や塗師ら職人の技術があったからこそ実現できたのだと思う。庵唄は江戸時代に流行した江戸端唄の流れをくむ。“小京都”と呼ばれる城端の文化と粋な江戸の文化が融合し、独自の文化を開花させた。神事として伝統を守りながら、祭の魅力を磨き上げてきたというわけだ。先人たちが積み上げてきた深い精神性をいかに後世に伝えていくか。現代に生きる私たちの責務だと思う」と未来を見つめる。
●富山県の歴史と文化が育んだ曳山行事の魅力を
ユネスコ無形文化遺産登録について、富山県生涯学習・文化財室では、次のように話している。
「山・鉾・屋台行事」のユネスコ無形文化遺産への登録が決定したのは、日本時間の12月1日(木)の午前2時過ぎでした。保存会の皆さんは、当日は11月30日の午後3時頃から待機されて待ちに待った末の喜びの瞬間でした。
今回の登録は、平成21年(2009年)に既に登録されていた「京都祇園祭の山鉾行事」と「日立風流物」に31件の国指定文化財の曳山行事を追加し、計33件の行事を「山・鉾・屋台行事」としてグループ化して提案したもので、この中に富山県の「高岡御車山祭の御車山行事」、「魚津のたてもん行事」、「城端神明宮祭の曳山行事」の3件が含まれています。
今回、これら3件の行事がユネスコ無形文化遺産に登録されたことにより、富山県の歴史と文化が育んだ魅力的な伝統文化、曳山行事を国内外に向けて、大いに発信していくことができます。
富山県には世界文化遺産「五箇山の合掌造り集落」や国宝「瑞龍寺」をはじめとした多くの文化遺産があります。今後は、国内外の多くの方々に祭りをご覧いただくとともに、周辺に豊富にある富山県の文化財・文化遺産を周遊していただき、富山県の多彩な歴史文化の魅力を再発見していただけるものと思っております。
また、富山県には、これら3件のほかにも多くの曳山行事があります。季節毎に富山県にお越しになり、お祭りを体感なさってみてはいかがでしょうか。
- 問合せ
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●富山県教育委員会 生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/
「高岡御車山祭の御車山行事」について
●高岡市教育委員会 文化財課
TEL.0766-20-1453
FAX.0766-20-1667
http://www.city.takaoka.toyama.jp/
「魚津のたてもん行事」について
●魚津市教育委員会 生涯学習・スポーツ課
TEL.0765-23-1045
FAX.0765-23-1052
http://www.city.uozu.toyama.jp/
「城端神明宮祭の曳山行事」について
●南砺市ブランド戦略部 文化・世界遺産課
TEL.0763-23-2014
FAX.0763-62-2112
http://www.city.nanto.toyama.jp/