錦の衣をまとった山々の絶景シーズン到来。立山黒部アルペンルートや黒部峡谷、称名滝、神通峡、五箇山など、富山の紅葉スポットをクローズアップ。山から平野まで標高差のある富山は紅葉のシーンを長く楽しめるところ。自然の息吹を感じながら散策、トレッキング、ドライブに出掛けよう。

●すっかり秋めいてきた富山、紅葉前線移動中

　朝夕の冷え込みが感じられる季節。秋の深まりとともに、樹木の葉も色づき、美しさを増している。高いところから低いところへと紅葉前線が移動中。富山は高山帯から平野部まで標高差が約3,000ｍもあるため、時期をずらしながら、長く紅葉を楽しめる。ゆっくり愛でながら心を紅色に染めてみてはいかがだろう。

　世界有数の山岳観光ルート、立山黒部アルペンルートでは、弥陀ヶ原(1,930ｍ)の下方、弘法周辺（1,630ｍ）で、ナナカマドの葉が赤、ダケカンバやミネカエデが黄に色づき、見ごろを迎えている。弘法から下方、大観台(1,470ｍ)までの沿線でも色づきが始まっている。弥陀ヶ原では色あせており、昨年に比べてやや早いペースで紅葉シーズンが下りてきているようだ。

　立山の東側、黒部平(1,828ｍ)でも色あせはじめ、今は黒部ダム湖畔(1,470ｍ)が見ごろ。ダケカンバの黄葉が美しい。黒部ダムの観光放水は10月15日(土)までとなっており、紅葉と放水の共演をぜひ写真に収めてみたい。

　タテヤマスギやブナの巨木が茂る美女平(977ｍ)、日本一の落差(350ｍ)を誇る称名滝の周辺ではヤマモミジなどが色づき始めており、例年10月下旬から11月上旬にかけて見ごろを迎える。水煙を上げながら流れ落ちる滝と紅葉の景観を楽しみにしたい。

　北アルプス・薬師岳の麓、標高1,000ｍに広がる有峰湖周辺では、色づき始めたところ。例年10月中旬から下旬にかけて、ミズナラやブナなどが見ごろを迎える。湖面に映る秋色を探しに湖畔を散策するのもいいだろう。

　愛らしいトロッコ電車で日本一深いV字峡を探勝する黒部峡谷鉄道の沿線では、例年10月下旬に終点の欅平周辺、11月上旬に鐘釣周辺、中旬に宇奈月周辺が見ごろを迎える。欅平周辺では、コミネカエデ、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、ナナカマド、ヤマウルシなどの紅葉、イタヤカエデ、ブナ、ウダイカンバなどの黄葉が美しい。深い谷を流れる黒部川と紅葉、黄葉のコラボレーションはまさに絵になる風景だ。

●山から里、街が色づき、心を染める

　神通峡の紅葉の見ごろは例年10月下旬から11月中旬。荒々しい岩肌を見せる片路峡などが紅葉に染まる。神通川沿いの紅葉ドライブで立ち寄りたいのが、寺家公園。京都・嵐山を模して造られたもので、秋にはカエデが色づき、趣ある景観を見せてくれる。

　荒々しい景観を見せる神通峡とは逆に女性的な穏やかな美しさを誇る庄川峡。ゆったりとした流れに映る山々の紅葉も特筆すべき景観といえる。見ごろは例年10月下旬から11月上旬。小牧ダムから大牧まで遊覧船が就航しており、船に揺られながら全山を覆う紅葉、黄葉をゆっくり観賞したい。

　紅葉の山々と茅葺き・三角屋根の合掌造りのツーショットも心に深く刻まれる景観だ。世界遺産の五箇山相倉合掌造り集落、菅沼合掌造り集落と周辺の山々の紅葉の見ごろは例年10月下旬から11月初旬。日本人の原風景、民話の世界が眼前に広がる。

　水音と紅葉といえば、稲葉山宮島峡県定公園に点在する一の滝、二の滝、鼓ヶ滝などの滝の景観と紅葉のシーンも必見。流れ落ちる優美な滝の音に心を癒しながら、秋めく季節を感じるとしよう。

　標高274ｍの二上山＜高岡市＞の紅葉も見事だ。見ごろは例年11月中旬から下旬にかけて。二上山は万葉歌人・大伴家持が歌に詠んだことでも知られ、家持像や万葉の歌碑も建立されている。紅葉スポットと万葉の故地をめぐってみよう。

　山から街へ、街中にもおすすめの紅葉スポットがある。高岡古城公園は例年11月中旬から下旬が見ごろ。同公園は、総面積の約3分の1が水濠で「水濠公園」として親しまれている。江戸時代初めの築城当時の土塁や濠などがそのままの姿で残されており、水濠と落葉広葉樹の紅葉のシーンはまさに歴史浪漫を感じさせてくれる。噴水の水音に耳を澄ませながら、心ゆくまで紅葉を愛でてみたい。