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2016年 6月 22日 [ トピックス ]
No.761:美の世界を富山市中心部で探究!刀剣にガラスアートを巡る旅へ
●森記念秋水美術館オープン…刀剣の産地・越中国ゆかりの名刀を鑑賞
甲冑をイメージさせる鎧張りのような黒の壁面が印象的な「森記念秋水(しゅうすい)美術館」(富山市千石町)。“曇りの無い研ぎ澄まされた刀剣”を意味する言葉「秋水」が示すように、平安時代中期から現代までの約200振りの日本刀を収蔵する全国でも珍しい美術館だ。富山市の製薬会社、リードケミカル(株)<森政雄社長>が“静謐と豪奢-日本刀をめぐる美の世界”をキャッチフレーズに建設、開館。重要文化財や重要美術品を含む刀剣をはじめ、横山大観、川合玉堂ら日本の近代美術史を代表する画家の作品、日本と中国の陶器、書などのコレクションを広く公開する。刀剣のコレクションは時代やテーマごとに3カ月サイクルで展示品を入れ替える予定だ。
同美術館によると、富山県(越中国)は、鎌倉末期の名工・正宗(まさむね)の兄弟子と伝えられる「則重(のりしげ)」(富山・五福で作刀)、正宗・粟田口吉光(あわたぐちよしみつ)と並んで天下三作に数えられる名工「郷義弘(ごうのよしひろ)」(魚津・松倉で作刀)を輩出した地。鎌倉末期頃に奈良から現高岡市福岡町に移って作刀した刀工集団「宇多(うた)派」も活躍するなど、刀剣づくりが盛んだった。
9月4日(日)まで開催の「所蔵名品刀展―秋水の美」では、そんな富山ゆかりの名工の手による名刀を含む31点を展示している。重要刀剣に指定されている短刀「則重」(鎌倉時代末期 越中国)は、身幅が尋常で、内反り。板目に杢が交じった地肌も特徴。重要刀剣の刀「伝江 (―郷義弘)」(鎌倉時代末期~南北朝時代 越中国)は地刃が明るく冴え渡っている。重要文化財の脇指「伝正宗」(鎌倉時代末期 相模国)は、刃文の濃淡が見事。重要文化財の刀「住東叡山忍岡辺長曾袮虎入道」(江戸時代前期 武蔵国)は「虎徹(こてつ)」の名で知られ、冴え渡る焼刃と精緻で強い地がねが特徴だ。「村」の銘をつぶした短刀「村正(むらまさ)」(室町時代末期 伊勢国)の展示もある。妖刀として帯刀が禁止された歴史があり、素性を隠すためだったようだ。
照明を落とした静謐な空間に光を放つ日本刀は近寄りがたいほどの気を放っているようだ。刀剣の魅力はどこにあるのだろうか。同美術館学芸課長の山誠二郎さんは「日本刀は、武人の命を託すに値する実用性(折れず、曲がらず、切れる)と精神性(心)、芸術性(美)を兼ね備えた日本独自の美術工芸品」と力を込める。反りや、地がねに浮き上がる刃文、形のバランスなどが鑑賞のポイント。戦乱の世には、刀の姿は豪壮な姿になる一方、平穏な世になると、優美な趣を漂わせる刀が出てくる。「歴史と刀の形が連動している。形状から作られた時代を類推し、地がねの特徴から産地を特定していく楽しみがある」と言う。日本刀は単なる武器ではない。合戦では、まず弓矢や鉄砲、槍が中心となる。「最後のお守りみたいなものだったのではないか。日本刀のもつ芸術性、日本人の精神性を伝えていきたい」と話す。
開館記念特別展として「細川護煕の美と永青文庫の至宝」も開催中<前期:~7月24日(日)、後期:7月26日(火)~9月4日(日)>。細川元首相の手による陶器や墨書、墨画、油彩、細川家伝来の美術品や資料を収蔵する永青文庫の重要美術品などを展示している。
森記念秋水美術館の入館料は一般1,000円(企画展によって変動する場合がある)。芸術文化の振興や富山市中心部の賑わい創出、施設間の回遊性の促進などを目的に、近代美術館、水墨美術館、高志の国文学館の県立3館とギャルリー・ミレーで販売されている「4館常設展示セット観覧券」に同封の「観覧料割引券」を森記念秋水美術館の窓口で提示すると、800円に割引となる。
●富山市ガラス美術館へ!ガラスの透明感と造形美を心ゆくまで
新国立競技場の設計を手掛ける世界的な建築家・隈研吾氏の作品で、富山市中心部のランドマークになっている複合施設「TOYAMAキラリ」(富山市西町)。外壁は御影石、ガラス、アルミの異素材を組み合わせた仕様で、建物自体がアート作品のようだ。内部には、県産材のルーバー(羽板)を活用した温もりのある空間が広がる。
2Fから6Fが展示空間となっており、6Fの常設展「グラス・アート・ガーデン」には、現代ガラス美術の巨匠、デイル・チフーリ氏(アメリカ)のスタジオによるインスタレーション(空間芸術)が展示されている。深緋(コキヒ)、瑠璃(ルリ)色、鬱金(ウコン)色という日本の伝統色をタイトルにした3色の「シャンデリア」に迎えられて奥へ進むと、リード(あし・よし)をモチーフにした作品「トヤマ・リーズ」が鎮座。県産の大きな木材とガラスでできたブルーのリードが存在感を放つ。天使や海の生物を連想させる約400個のガラスのパーツを天井一面に敷き詰めた「トヤマ・ペルシャン・シーリング」の下に立つと、まるで海底にいるかのよう。色鮮やかなガラスを通して生まれる幾筋もの光が白い壁に映える。「トヤマ・フロート・ボート」は、富山平野を流れる神通川の漁で使用されていた笹舟と、117個のフロート(浮玉)の組み合わせ。このうち95個はチフーリ・スタジオと富山ガラス工房、富山ガラス造形研究所が共同して富山で制作したものだ。薄暗い空間にリードやフロートなどの要素をもつ様々な形のパーツが並ぶ「トヤマ・ミルフィオリ」は、ミルフィオリ(イタリア語で千の花)の名称のとおり、ガラスでできた幻想的な花の世界。美しく輝くパーツがいまにも動き出しそうだ。
4Fの常設展示室では、コレクション展として、ガラス美術館所蔵の作品(400点)の中から作品を展示。年2回ほど展示替えしており、6月16日から新展示(17点)がスタートした。ジニー・ラフナー氏の「竜巻となるために」は、人間の内面に宿る創造力をガラスの「竜巻」で表現。生田丹代子氏の「Swing-40」は透明な板ガラスを幾重にも積み重ねた立体感のある作品。ヴァーツラフ・ツィグレル氏の「ブルーピラミッド」はブルーのカラーとピラミッドの形が神秘的な雰囲気を醸し出している。竹内傳治氏の「花器20B」は青と黄色の鮮やかな色彩に魅了される作品だ。
企画展もぜひ鑑賞してほしい。2F、3Fの展示室では、7月3日(日)まで「feeling in glass―感じとるかたち―」を開催。2002年から2011年にかけて富山市で開催された「現代ガラス大賞展」で受賞、入選したガラス作家(10人)に焦点をあて、現代の多様なガラス表現を展示している。7月16日(土)~9月25日(日)には、「イワタルリ BODY×硝子」と、「ベンジャミン・イードルス&キャシー・エリオット:Light Marks―光を辿(たど)る」の2本の企画展が予定されている。
富山市ガラス美術館では、「イワタルリ BODY×硝子」では、作家独自の彫刻的な造形感覚について展観。「ベンジャミン・イードルス&キャシー・エリオット:Light Marks―光を辿(たど)る」はオーストラリアで共同制作する2人の作家の日本初個展となる。それぞれの作品世界をぜひ会場で楽しんでほしい」と話している。
なお、常設展のコレクション展とグラス・アート・ガーデンの観覧料は一般200円。企画展「feeling in glass―感じとるかたち―」は一般700円(常設展も鑑賞可)。「4館常設展示セット観覧券」に同封の「観覧料割引券」を窓口で提示すると、常設展160円、企画展500円となる。
- 問合せ
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●森記念秋水美術館
TEL.076-425-5700
FAX.076-425-5710
http://www.mori-shusui-museum.jp/
●富山市ガラス美術館
TEL.076-461-3100
FAX.076-461-3310
http://www.toyama-glass-art-museum.jp/