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2015年 11月 11日 [ トピックス ]
No.731:近畿大学・富山実験場、富山湾の海水でクロマグロの飼育・研究をスタート!
●富山湾の清浄な海水が200tの陸上水槽に
クロマグロはマグロ類のなかの王様で、“海のダイヤ”とも称される。大きいものでは全長約3m、体重約500kgまで成長する。乱獲による資源の枯渇が懸念されるなか、近畿大学水産研究所では1970年にクロマグロの完全養殖に向けて研究に着手。それまでよく知られていなかった生態の解明に挑戦し、32年後の2002年にようやく完全養殖の夢を実現した。クロマグロの漁獲制限が社会問題化した2006年以降、研究所の成果がとりわけ注目され、2013年に「近大マグロ」などを提供する養殖魚専門料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」を大阪と東京に出店し、人気を集めている。
クロマグロの完全養殖は、これまで近畿大学水産研究所の大島実験場(和歌山県串本町)と奄美実験場(鹿児島県瀬戸内町)の海の生簀で主に行われてきた。富山実験場での飼育・研究は、陸上水槽でのデータ採取を進め、近大マグロの需要拡大に対応するのが目的という。同実験場では、富山湾の表層水と水深100mから汲み上げた清浄な海水や、水産研究所の施設の中で最大の陸上水槽(容量200t:直径10m、深さ3m)を使って研究できることが大きな利点だ。
7月24日、奄美実験場から約60万粒の受精卵が富山実験場に運び込まれた。翌日、水温24度に保たれた30t容量の5つの水槽の中で卵がふ化し、8月末には体長5cmほどに成長。稚魚7,000匹ほどを養殖用の種苗として出荷した。9月8日、約1,000匹の稚魚を200tの大型水槽へ移し、10月末現在、約350匹が体長約25cm、体重350gほどの若魚に成長している。
クロマグロはデリケートな魚。光や音に刺激されて勢いよく泳ぎ出し、従来の海上の生簀では網に激突して死ぬこともある。富山実験場の陸上水槽では他の地域の海上の生簀にくらべて環境が安定しており、想定よりも生存率が高いという効果が出ている。今後、冬に向けて海水温が下がっていくため、加温するかどうかを検討し、データを蓄積していく考えだ。富山実験場の陸上水槽でのクロマグロの飼育・研究は緒についたばかり。今後の研究成果に期待したい。
●富山湾の深層水を使ってマアナゴやサクラマスを養殖
富山実験場では、マアナゴやサクラマス、ヒラメなどの養殖研究にも取り組んでいる。過去の研究では、トラフグのオスの発生率を8割以上にする養殖技術を確立した。
マアナゴとサクラマスの研究について紹介しよう。マアナゴは、最も一般的に食用にされているアナゴだが、生態に不明な点が多い。近畿大学水産研究所は2004年から、天然資源に頼らない完全養殖を目指し、白浜実験場(和歌山県白浜町)で養殖研究を開始。2008年、稚魚になる前の“ノレソレ”と呼ばれる状態から成魚に育てることに成功した。しかし、太平洋側は夏場の海水温が29度以上と高く、マアナゴがほとんど死んでしまうため、2010年、夏期でも低温の海水が利用できる富山湾に面した富山実験場に拠点を移して研究を進めた。2012年に試験出荷を開始し、現在では年間10,000匹前後の成魚を出荷するまでになった。「身は癖がなく、脂がのって美味しい」と評判だ。現段階では天然産稚魚から成魚への養殖だが、成魚を親魚に育てて採卵し種苗生産する完全養殖に向けて研究が続けられている。
富山の名産といえば、「ますの寿し」を思い浮かべる人も多いだろう。古くからその原材料として使われているのがサクラマス。現在は漁獲量が激減し、サクラマスを使った「ますの寿し」はほとんどみかけなくなった。富山実験場では2011年11月からこのサクラマスの試験養殖を開始し、出荷サイズの体重1.5kgに達したことで翌年5月から出荷を始めた。その後、射水市や隣接する堀岡養殖漁業協同組合、富山県水産研究所、地元の大門漁協と協力する形で完全養殖技術の開発を続けている。養殖サクラマスの身は繊細で上品な味わい。脂ののりもいいのが特徴だ。2014年秋から富山大学附属病院の病院食にマアナゴとともに定期的に提供されている。
富山育ちのブランドともいえる“近大マアナゴ”と“近大サクラマス”。出荷のタイミングが合えば、「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」の大阪店と銀座店で味わえる。今後、地元射水市をはじめ、高岡市、富山市など県内の飲食店等への提供を順次開始する予定だ。
近畿大学水産研究所富山実験場では、「富山湾の清浄な海水が養殖魚の研究に役立っています。水産資源の枯渇が世界規模で懸念されるなか、富山育ちの新しいブランドとして養殖魚を定着させ、地域貢献していきたい」と話している。
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●近畿大学水産研究所富山実験場
TEL.0766-86-2111
FAX.0766-86-2772
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