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2011年 8月 31日 [ トピックス ]

No.521-1:心の世界、香りで体感 ミュージアムグッズ「香まんだら」


 富山県[立山博物館]の開館20周年を記念し、友の会が、立山信仰にちなんだ香りを込めたアロマボトル「香(かおり)まんだら」をミュージアムグッズとして開発した。立山曼荼羅に描かれた「浄土」、「地獄」、「布橋」、「おんばさま」の4種類の香りがある。特別企画展「綜覧 立山曼荼羅―こころをうつす 絵鏡―」、「布橋灌頂会」の話題も併せて紹介。


●「地獄」ってどんな香り?

 富山県[立山博物館](立山町芦峅寺)の開館20周年を記念し、友の会が、立山信仰にちなんだ香りを込めたアロマボトル「香(かおり)まんだら」をミュージアムグッズとして開発した。立山曼荼羅に描かれた「浄土」、「地獄」、「布橋」、「おんばさま」の4種類の香りがある。立山曼荼羅の世界、目に見えない心の世界を香りで表現した点がユニーク。インテリアフレグランス(芳香剤)として使用できる。

 「浄土」は雲上の花畑をイメージし、立山を代表する高山植物であるハクサンフウロの甘い香りに。「地獄」は浄土救済への入り口として、泥の中から現れるハスの花の香りにした。あの世とこの世の結界とされる「布橋」は垣根などに使われるクロモジの木、芦峅寺の女性神「おんばさま」は原点回帰の象徴であり、古来から祝祭と縁の深いタチバナの香りを採用。柑橘系の爽やかな香りが心をリフレッシュさせてくれる。

 立山博物館の「まんだら遊苑」を設計した建築家、六角鬼丈氏が、ボトルや箱のデザインを担当。立山や閻魔大王、おんばさまなどをイメージした趣のあるイラストがあしらわれており、大切な人へのプレゼントにもおすすめ。館内のミュージアムショップにて、4個セット(箱入り)で2,000円、浄土と地獄、浄土と布橋の2個セット(箱入り)で1,000円、各1個600円で販売。

 なお、友の会は立山博物館のサポーター組織で、100人ほどが所属し、催事の運営手伝いやガイドのほか、立山開山を物語にした紙芝居を子どもたちに披露するなどのボランティア活動を行っている。「香まんだら」の商品化にあたり、ラベル貼りや箱詰め作業なども担っている。

●何も映し出さない鏡「浄玻璃鏡」とは……

 立山博物館では、開館20周年記念特別企画展「綜覧 立山曼荼羅―こころをうつす 絵鏡―」が9月25日(日)まで開催されている。立山の山岳景観や阿弥陀三尊の来迎の様子、立山地獄、女人救済儀礼・布橋灌頂会の様子などを描いた立山曼荼羅は、立山への畏敬と畏怖の心を絵師が巧みに映し出し、立山曼荼羅に向かう人々の心を映す鏡の絵として機能した。企画展では、「心」と「鏡」をキーワードに、立山曼荼羅を人々の心を解きほぐし、その心の働きによって共感と自覚を生んだ絵画であることをわかりやすく紹介している。

 会場に入ると、閻魔大王の「浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)」(模型)が薄暗い空間に置かれている。“生前の悪事が映る”と聞くと、誰もがこれまでの人生を思わず振り返り、いろんな情景を想い浮かべてしまうだろう。霊山立山を開山した慈興上人の坐像(国重要文化財、芦峅寺雄山神社蔵)の前に立つと、その優しげな表情に心も癒される。上人の安らぎや苦しみなどの体験を感じとってほしい。このほか、立山曼荼羅(複製、大仙坊A本、佐伯家本)、「熊野観心十界」など、貴重な資料を鑑賞することができる。

 立山博物館の米原寛館長は「人の心の中には、善と悪がある。欲を否定することはできず、善と悪の心のバランスを取りながら皆生きている。立山曼荼羅で地獄のありさまを見せることは、心の善悪を自覚させるためのものだった。悪に気づく心が、善をつくる。そんな立山曼荼羅の世界、思想に触れていただきたい」と話している。

 9月24日(土)には、「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」が立山博物館で開かれる。布橋灌頂会は、女人禁制のため霊峰立山への登拝が許されなかった江戸時代、極楽往生を願う女性の救済のために営まれた儀式。布橋の下を流れる、うば堂川を三途の川に見立て、女性たちは白装束をまとい、目隠しをして布橋を渡り、うば堂内で念仏を唱え、再び布橋へ。無事に渡り切ると、死後に極楽浄土に至ることができると信じられていた。明治初期の廃仏毀釈によって儀式は廃れたが、“現代の癒しの行事”として平成8年の国民文化祭で復活し、17年、18年、21年度に開かれてきた。

 復活した布橋灌頂会では、白装束姿の女人衆が閻魔堂での儀式の後、目隠しした姿で布橋を渡り、うば堂にあたる遙望館へ。女人衆が暗闇で目隠しを解くと、室内の覆いが上がり、立山につながる別世界を目前に実感するという流れ。8月22日まで女人衆の参加者(70名)を募集したところ、県内外から倍以上の応募があり、癒しの行事への関心の高さをうかがわせた。

 秋風に誘われて、立山博物館へ。雅楽が流れる中で行われる、荘厳かつ華麗な橋渡り「布橋灌頂会」をぜひ見学してほしい。


▲「綜覧 立山曼荼羅―こころをうつす 絵鏡―」


●富山県[立山博物館]
TEL.076-481-1216
FAX.076-481-1144
http://www.pref.toyama.jp/branches/3043/3043.htm

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