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2009年 3月 18日 [ トピックス ]
No.395-2:全国初、種子から無花粉スギを大量生産する技術確立
日本人の“国民病”ともいえる花粉症。花粉を飛ばさないスギの研究開発に取り組んでいる富山県森林研究所(旧林業試験場)は、無花粉スギを種子から大量に生産する技術を全国に先駆けて確立した。平成21年から種子を採取し、26年までに合計2万本の苗木を出荷する計画だ。
●花粉症減少への期待高まる
日本人の“国民病”ともいえる花粉症。花粉を飛ばさないスギの研究開発に取り組んでいる富山県森林研究所(旧林業試験場)は、無花粉スギを種子から大量に生産する技術を全国に先駆けて確立した。平成21年から種子を採取し、24年から26年までに合計2万本の苗木を生産・出荷する計画だ。
平成4年、職員が花粉飛散調査のため富山市内の神社を訪れた際に、境内で1本の無花粉スギを全国で初めて発見。その後の研究によって無花粉になる原因が劣性遺伝子にあることを解明した。このスギは、雄花の中で花粉の基となる細胞(花粉母細胞)を作ることはできるが、遺伝子の突然変異によって花粉の表面に殻ができず、花粉粒同士が融合し肥大していき、最後にはまったく花粉がなくなってしまうという性質を持っていた。
同研究所は、平成12年に全国に呼び掛けて、成長、形質ともに優れた「精英樹」と呼ばれる良質なスギの花粉330品種を集め、そのうちの4品種が無花粉の劣性遺伝子を持つことを突き止めた。そして、富山市内で発見された無花粉スギ(母樹)と、4品種の1つで劣性遺伝子を持つ富山県の精英樹(小原13号)を人工交配。9年かけて、成長が良く、雪害に強い1個体を選抜し、「優良無花粉スギF1」を作り出した。そして、このF1を母樹とし、同じ北陸の気候風土に育ち、劣性遺伝子を持つ精英樹(珠洲2号) の花粉を人工交配し、約50%の確率で「新優良無花粉スギ」を種子から生産する技術を確立した。
●平成26年までに無花粉スギ2万本生産
平成21、22年には、母樹となる「優良無花粉スギF1」の雌花に袋がけし、精英樹(珠洲2号)の花粉を受粉させ、それぞれの年の秋に種子を収穫する。翌年春から育苗し、2年生苗に人為的に着花させて、無花粉スギを選抜。その後、1年育成し、3年生の苗を各5,000本ずつ出荷する。23年には、外部からの花粉の侵入を防ぐため、ビニールハウスを使った採種園で「優良無花粉スギF1」と精英樹(珠洲2号)を混植し効率的に交配させ、種子を採取して育苗。3年苗を一気に1万本出荷する計画だ。
こうした県の取り組みとともに、民間スギ苗生産者へ技術移転を進める。苗の生産が拡大し、全国に新優良無花粉スギが普及すれば、花粉症の減少につながることも期待できる。
なお、富山市内で発見された無花粉スギ(母樹)の自然交配で得た苗を選抜・育成した品種「はるよこい」は平成19年に全国第1号の無花粉スギとして品種登録されている。研究所では、挿し木による「はるよこい」のクローン苗育成や、今回のような無花粉スギ(母樹)と精英樹(小原13号)との人工交配による「優良無花粉スギF1」に精英樹(珠洲2号)を人工交配することによる「新優良無花粉スギ」の開発など、遺伝的に優れた新しい無花粉スギの研究に同時に取り組んできた。
富山県農林水産部森林政策課では「無花粉スギの増殖方法はこれまで挿し木が中心で、苗木の生育に時間がかかった。種子からだと苗木が大量に生産できる。無花粉スギの普及に弾みがつくものと期待している」と話している。
問い合わせ
●富山県農林水産部森林政策課
TEL.076-444-3389
FAX.076-444-4428
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1603/