トピックス

アーカイブ

2000年 3月 10日 [ トピックス ]

No.058-1:さまざまな芸術感性のぶつかり合い、「舞台創造工房」


■さまざまな芸術感性のぶつかり合い、「舞台創造工房」
 「何かメッセージを伝えたい、とは思っていません。7人の若い女の子が集まって、それぞれ持っているものをぶつけ合い、そこから何が生まれるのかを見てみたい。私たち自身が未知数だし、この先どうなっていくのかわからない。だからおもしろいんです」。
 彼女たちの喋る言葉はとても自然だ。いい具合に肩の力が抜けている。毎週月曜の夜、県民小劇場オルビスの「舞台創造工房」で7人の若手芸術家が集まり、ひとつの自由な舞台空間を創っている。この「舞台創造工房」は、県内の若手芸術家が主体となって活動できるよう支援すること、表現する場を提供することを目的に、昨年10月にオルビスがスタートさせたもの。稲垣元子さん(仏画)、片岡純子さん(アロマセラピー)、嵯峨紫祥さん(日舞)、中山衣代さん(筝曲)、中川文可さん(モダンバレエ)、西田未知留さん(声楽)、柳原幸子さん(造形)のさまざまなジャンルから集まってきた7人が今年度のメンバーだ。

■「萌(もえ)---新しい息吹がオルビスから生まれる」
現在、メンバーの7人は3月の初公演に向けて舞台制作に取り組んでいる。舞台のテーマは「萌」。7人の女性アーティストの感性がよりそい、溶け合い、時には揺さぶり合いながら一つの小宇宙を創り出す。そこはまるで、胎児が子宮の中で守られているような、強く優しく生命力に満ち溢れた空間だ。その未知なる
 世界は彼女たちの姿そのもので、これから新しい世界に萌え出でようとする「のちの鼓動」である。舞踊と音楽が絡み、時に対立し、あらゆる感情を表現する。光と絵が既存の概念を越えた自由空間を生み出し、香りが五感に働きかけ、その印象を強く見るものに残す。全体のなかで自分をどう生かし、お互いどう響き合うか。即興的な要素も多くあり、5ヵ月間試行錯誤を重ね、最近ようやく全体像が少しずつ見えてきたという。

■一人ひとりが演出家
 ところで、この「萌」の舞台には、全体を統括し引っ張っていく「演出家」の存在はない。出演者が自分たちの判断で、思ったままに自らの思いを表現することが出来るようにあえて演出家は置かない、というオルビス側のスタンスだ。「評論家の評価を得ることをめざして『舞台芸術』に固執するあまり、演出の工夫に制限や足かせができてしまってはいいものはできない。彼女たちが、彼女たちのために創る空間であってほしい」とオルビスの笹谷努さんは話す。
 当初は、初対面同士で、どのようにして創作を進めていくかという戸惑いもあった。しかし、表現することイコール自分を見せることだと知っている彼女達は、それぞれが自分の分野で表現することで手探りながらもゆっくりとお互いを理解し合ってきた。「今まで知らなかった世界の人と友達になれたことが一番の収穫」とみんな口を揃えて言う。とても印象的だった言葉がある。「踊りが好きとか、きらいとかなんて考えたことがない。もう自分そのものになっているから、踊りと自分とを切り離して考えることをしないんです」。自分らしくやっていくためにはやらずにはいられない、だからこうしているだけ---。表現する向うには必ず自分自身が見えるという。苦しくても目をそらさない。いつかなりたい自分に出会えるまで、彼女たちはこれからも表現しつづけていく。
舞台公演は3月16日(木)17日(金)、入場料2,000円。

■市民が舞台を支える
 文化ホールで演じられる舞台は、創る側と演じる側がはっきり分かれていることが多い。「舞台創造工房」は、それが一体となり舞台を創り上げていくという点で大変興味深い取り組みである。芸術家をはじめ市民がマイホール意識をもち、うまく活用していくことがこれからの文化ホールに望まれる。
 3月の公演が終わると「舞台創造工房」は、来年に向けて新たな創造へと走り出す。さまざまなジャンルが交わり創作するこの実験舞台は、これからも舞台芸術の新たな可能性・創造性を追い求め、趣向の凝らしたステージが展開されることになっており、新鮮な感動を与えつづけていくことになりそうだ。

問い合わせ
●県民小劇場オルビス(富山駅前マリエ7階)
TEL 076-445-4531

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑