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1999年 3月 10日 [ トピックス ]
No.033-2:水墨画を中心に展示する美術館がオープン
【美術館の概要】
近代水墨画の流れを紹介する全国的にもユニークな美術館、富山県水墨美術館が4月29日(祝)にオープンした。水墨画を中心に展示し、茶室や日本庭園などを備えた寄せ棟造り平屋建ての美術館。
作品は横山大観や前田青邨(せいそん)など、近代の代表的な作家の水墨画を展示。また、日本画壇で最も注目されている富山県出身の下保昭(かほあきら)画伯の展示室も設けている。
館内には白壁をスクリーンとした映像ホールが設けられており、美術館としては最大級の200インチハイビジョンを使って水墨画の魅力を放映する。また、数寄屋造りの本格的な茶室「墨光庵(ぼっこうあん)」ではお茶を味わうことができる。
【近代水墨画の流れを展示】
“近代水墨画の系譜”をテーマに、竹内栖鳳(せいほう)の初期の力作の1つ「雪中孤鹿 雨中曳牛」(せっちゅうころく うちゅうえいぎゅう)、横山大観の「木立に白鷺(しらさぎ)」、新発見された菱田春草の「竹林」など、近代の代表的な作家約25名の水墨画を展示している。また、染織や陶芸など日本の美を広く紹介する企画展も随時開催する。
【日本情緒を満喫】
水墨美術館は、寄せ棟造りの和風建築。各展示室を結ぶ廊下は100m以上もあり、廊下のガラス越しには雄大な立山連峰を望むことができる。また、館の敷地内には本格的数寄屋建築の茶室「墨光庵(ぼっこうあん)」がある。
日本の美術品は、雨や雪を防ぐためにひさしを長くした家屋の中で発達してきた。薄暗い室内で光を放つ金屏風、ろうそくの明かりの下で輝く蒔絵箱などは、ほのかな光の中でこそ、その魅力を見せてくれる。水墨美術館では、展示室の照明は暗く押さえ、ろうそくの暖かい光を再現することができるように工夫されている。また、床の間がある下保昭作品室では、傍らの障子から差し込む光が巧みに演出されている。
【茶室「墨光庵」】
墨光庵は、日本の数奇屋建築の第一人者であった中村外二棟梁(小矢部市出身、明治39年〜平成9年)が最晩年に手がけた本格的数奇屋建築の茶室。
立礼席(りゅうれいせき)と八畳の和室からなり、周囲は四季折々の自然の風情が楽しめる日本庭園となっている。立礼席は、茶室建築には珍しく、障子窓の下部にガラスを用いるなど新しい感覚が加味されている。ここではお菓子と一服のお茶(有料)が楽しめる。
八畳の和室の床柱には、正面に杢目(もくめ)が均等に出ている赤松、立礼席の床柱には荒木の栗の原木が自然に近い状態で使用されている。
【館内施設紹介】
■常設展示「近代水墨画の系譜」作品紹介
常設展示で掲載している代表的な水墨画を紹介する。
富岡鉄斎「普陀落迦山(ふだらかさん)」:普陀落迦山とは、中国の東の海にある観音浄土のこと。通常の画家には見られない、見る者の胸に鋭く切り込んでくるような気迫満ちた激しい墨線は、鉄斎の作風の特色をよく表現している。
横山大観「雨後之山」:大観73歳の作品。雨後に立ちこめた雲煙も鮮やかに、凛とした山を雄大で気品あふれるものに描いている。画面右の鳥影が広い空間を見事に演出している。
菱田春草(しゅんそう)「竹林」:長く美術界でその存在が知られていなかった作品で、近年遺族が春草の作として新たに確認した貴重な作品。
平福百穂(ひらふくひゃくすい)「晩山残照」(ばんざんざんしょう):残照で赤く染まった晩秋の高原風景をシャープな墨線で表現した作品。
前田青邨「風神雷神」:豪快に描かれることの多い画題であるが、淡墨の滲み(にじみ)や余白によって、白描風の簡潔かつ軽妙な趣の作品。
■常設展示「下保昭作品室」
現在、日本の画壇で最も注目されている本県出身の日本画家、下保昭(かほあきら)の水墨作品を展示する。畳敷きのスペースに床の間が備えてあり、傍らの障子から差し込むやわらかな光の中で作品が鑑賞できる。
■映像ホール
オリジナルのハイビジョン映像「水墨画への誘(いざな)い」と「近代水墨画の創造」(上映時間各20分)を上映する。ナレーションは俳優の山崎努氏。
* 「水墨画の誘い」:雪舟を中心に長谷川等伯や富岡鉄斎らの作品約45点を収め、中国から日本に渡来した水墨画が日本独自の文化として育っていく、室町時代から江戸末期までの過程を紹介している。
* 「近代水墨画の創造」:水墨美術館の中心となる明治以降の水墨画の系譜をたどるもので、横山大観、入江波光、加山又造、下保昭らの代表作約20点が収録されている。
お問い合わせ
●富山県水墨美術館
〒930-0887 富山市五福777番地14-8
TEL 0764-31-3719
* 開館/9:30〜17:00(入室は16:30まで)
* 休館/月曜、祝日の翌日(月曜祝日の場合は開館)、年末年始
* 入館/無料(常設展示は一般200円、企画展示は別料金)
* 駐車場/95台(無料)
富山県水墨美術館 平成11年度企画展スケジュール
□横山大観展
会期:平成11年 4月29日(木)〜5月30日(日)
内容:近代日本画の巨匠横山大観の代表作品を展示し、水墨画の魅力を紹介します。
□「染--郷土の染色作家・松原定吉、般若侑弘、水野博」展
会期:平成11年 6月4日(金)〜7月4日(日)
内容:本県出身の染色作家の業績を回顧し、「染」が生み出す美の世界を紹介します。
□土門 拳展
会期:平成11年 7月10日(土)〜8月22日(日)
内容:日本の美を鋭く捉えた写真家土門拳の「古寺巡礼」シリーズから約80点紹介します。
□近代陶芸の巨匠 河井寛次郎の世界
会期:平成11年 9月4日(土)〜10月7日(木)
内容:近代陶芸界の巨匠河井寛次郎の業績を展望し、個性豊かな世界を紹介します。
□「日本のわざと美」展
会期:平成11年 10月23日(土)〜11月23日(火)
内容:重要無形文化財保持者(人間国宝)約150名の優れた「わざ」と「美」を紹介します。
□ 下保 昭展
会期:平成12年 2月22日(水)〜3月31日(金)
内容:現代の水墨画を追及する画家下保昭の近作「日本の美」シリーズを紹介します。