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1997年 12月 13日 [ トピックス ]
No.013-1:全国で初めて江戸時代の建築技法を使った建物が国宝に指定される。
富山県高岡市の曹洞宗の古刹・瑞龍寺の主要な建物三棟が、江戸期の建築技法を使った建造物としては全国で初めて国宝に指定された。建造物の国宝指定は30年ぶりであり、また、富山県で初めての国宝誕生となる。
国宝に決定したのは、瑞龍寺の伽藍を構成する山門、仏殿、法堂(ほっどう)の三棟。文化庁が重要文化財の歴史的価値を洗い直した結果、三棟が江戸時代を代表する寺院建築であるとの高い評価を受けたため。さらに、昭和60年から平成8年までの大修理によって、創建当時の伽藍様式が甦ったことや、修理の過程で江戸期の優れた建築技術が明らかになったことも、国宝指定の大きな要因となった。
瑞龍寺は、加賀藩二代藩主・前田利長の菩提寺として、三代藩主・利常が正保年間(1644〜1647)から20年かけて完成させたもの。総門、山門、仏殿、法堂が一直線に配列され、左右対象に禅堂、大庫裏(おおぐり)を置き、四周を300メートルの回廊で結んだ壮大な七堂伽藍建築で、前田家の財力と建築技術の総力を結集して造り上げたと伝えられる。
仏殿は近世寺社建築の最高傑作とされるもので、万治2年(1659)の創建。屋根には全国でも珍しい鉛瓦が使われているが、その総重量は47トンにも達する。また、建物を支える4本の母屋柱のうち2本を省略し、2本を壁面側に移して広い内部空間を実現した「減柱法」を用いているほか、優美な曲線を使ったエビ虹梁(こうりょう)、雲や牡丹の彫刻を施した複雑華麗な組物など、随所に高度な技術を見ることができる。
明暦3年(1657)に完成した法堂は規模が大きく、かつ前面に土間廊下と高廊下、その奥に6室を配置した方丈形式をもち、近世の曹洞宗寺院の姿を忠実に残している。しかもこれだけ建立年代の古いものは珍しく、歴史的、建築的にも高い価値がある。
また、山門は正保2年(1645)に建立されたが、火災で焼失して文政元年(1818)に建て直したもの。当時、世界的にも優れていた和算が建築にも応用されたと推定され、部材の寸法は小数点以下第4位の毛単位まで出して設計されるなど、江戸後期の寺社建築の技術水準の高さを示す代表的な建築物とされる。
瑞龍寺住職の四津谷道昭氏は、「国宝の指定を受け、改めて文化遺産を受け継いでいく責任を感じています。今後、全国からお参りに訪れる方も増えるのではないかと思います。そうすれば高岡の発展にもつながり、市民にも喜んでいただけるのではないでしょうか」と話している。瑞龍寺の国宝指定は高岡市の文化の振興だけではなく、観光発展などにも大きな影響を与えることだろう。
* 問い合わせ
●瑞龍寺
〒933 高岡市関本町35
TEL 0766-22-0179