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1997年 11月 19日 [ トピックス ]
No.012-1:北陸最古の木製農具が、ほぼ完全な形で出土!
富山県下村の下加茂遺跡からこのほど、弥生時代中期のものとみられる木製農具や祭祀用具など約200点が出土した。
発見されたのは、稲モミの脱穀に使った長さ55センチの竪杵(たてぎね)、水田を耕す鋤(すき)、米を貯蔵したと考えられる高床倉庫のはしごなどである。これらの出土品は、北陸地方では最も古いもので、弥生時代中期初頭(約2,200年前)のものと判明。富山平野での稲作開始時期は、これまで弥生時代後期が定説とされてきたが、さらに300年ほどさかのぼることが分かった。
また、木製農具が出土した近くで、伐採された丸太材や半加工の木製品が集中的に発見されており、付近に住居跡がないことから、貯木場や木製品加工場の遺構ではないかとみられている。このような弥生時代の遺跡は、全国にも例がなくきわめて珍しい遺跡である。
貯木場とみられる跡からは、弥生時代中期に水田地帯の河川で使用したと推定される丸太舟の一部が出土した。舟は側面から底面にかけて約2m、全体の5分の1程度で、近くでは水をかく櫂(かい)も同時に発見されている。発掘にあたっている県埋蔵文化財センターでは、日常的な交通手段として使われていたものとされるが、稲作文化を広める役割を果たしていた可能性もあるとしている。
ほかに米、ヒョウタン、ヒシ、ドングリ類の植物の遺物、機織り道具なども見つかっている。通常、木製品や植物は腐りやすく発掘調査で発見されることは少ないが、同地域は標高が0.4メートルと低く、地下水位が高いために水漬けの状態で保存されてきたのが幸いしたという。
同センターの久々忠義主任は、「富山平野でも弥生時代中期初頭から稲作が行われていたことが分かった。稲作が伝わった経路や当時の農作業の実態を知るうえで、貴重な資料になる」と話している。
また遺跡付近からは、鎌倉・南北朝時代の屋敷跡や、江戸時代に道路工事用に掘った採土穴群などの遺構も見つかっている。数々の貴重な発見があった下加茂遺跡は、今後平成10年まで発掘調査を続けてその全容を明らかにすることにしている。
* 問い合わせ
●富山県埋蔵文化財センター
〒930-01 富山市茶屋町206-3
TEL 0764-34-2814