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2012年 12月 12日 [ 特産品 ]
No.585-2:特産化へ期待!芳香強く、かさも大きな野生型エノキタケ、簡易栽培技術開発
富山県農林水産総合技術センター森林研究所(立山町吉峰)の高畠幸司副主幹研究員、上田産業(株)らの研究グループは、栽培袋を活用して「野生型エノキタケFv-1」を一般農家、家庭で気軽に栽培できる簡易栽培技術を開発した。野生型エノキタケの栽培は全国初の取組み。市販のものに比べて、かさが大きく、香りも強い。特産化への期待が高まっている。
●一般農家、家庭での殺菌、植付け、培養の工程を不要に
富山県農林水産総合技術センター森林研究所(立山町吉峰)の高畠幸司副主幹研究員、上田産業(株)らの研究グループは、栽培袋を活用した「野生型エノキタケFv-1」の簡易栽培技術(栽培キット)を開発した。野生型の栽培は全国初の取組み。市販のエノキタケは殺菌した菌床に菌を植え付けて培養するが、専用の設備が必要なため、一般農家が栽培に取り組むことが難しかった。新技術で手軽に育てられる野生型エノキタケに特産化への期待が高まっている。
エノキタケと聞くと、白くてモヤシのようなひょろっとした姿形を思い浮かべる人が多いだろう。市販のエノキタケは、殺菌した菌床に菌を植え付け、薄暗い部屋で約2カ月培養して栽培されるためだ。しかし、エノキタケは本来、茶色のかさ、茶から焦げ茶色の柄のキノコで、庭や野山でも見られる。
野生型エノキタケFv-1は、25年前に森林研究所のある立山町吉峰で採取された菌株。かさは直径3~4cm、柄は3~5mm、背丈は30cmほどと、市販の白いエノキタケに比べて大きく、香りも強い。応用キノコ学を専門とする高畠副主幹研究員は、平成20年から食品総合研究所(茨城県)の研究者らと、野生型を簡単に栽培する方法を探ってきた。
新技術では、専用の培養施設<上田産業(株)>で、野生型エノキタケFv-1の栽培袋に入った菌床を作り、栽培袋を利用してエノキタケを発生させるようにした。一般農家では、殺菌、植え付け、培養の工程が不要となり、発生させるだけである。室温10℃以下の環境で培養すると、野生型エノキタケFv-1が育つことが確認できた。
●野生型エノキタケを鍋・汁物や天ぷらに、
高畠副主幹研究員らは、菌床を透明な栽培袋に入れて育てることで、特別な培養施設がなくても農家の納屋の一角や保冷庫などで栽培できる技術を確立した。まず、直射日光の当たらない、気温20℃程度の場所に袋全体に菌糸が蔓延するまで置く。袋全体に菌糸が行きわたったら培養が完了する。袋上部を半開きにして直射日光を避け、軒下など気温10℃程度の場所に置く。10~14日間後にはキノコの赤ちゃん、さらに7~10日間後に小さなエノキタケが発生する。そして、7~10日間後にはエノキタケが成長し、かさが大きく開いたところで収穫となる。
栽培は秋冬の季節が適しており、農家としては農閑期の収入源として見込める。料理素材としては、鍋・汁物や天ぷら、ホイル焼き、炊き込みごはんなどにおすすめ。味がよく、かさの部分はナメコのようなぬめりと風味が楽しめる。素材の甘みが口のなかに広がるのも特徴だ。ポリフェノール含量が多いため、抗酸化作用、老化防止作用にも優れている。
高畠副主幹研究員は、「元々は、キノコなどを使って、非穀物系のバイオ燃料、エタノールを作ることができないか研究してきた。その成果もあがっている。非穀物系を使うことで穀物の価格上昇を抑えることができる。野生型エノキタケについては、簡易栽培技術の実証実験が町内の営農組合などで始まっており、これからの収穫が楽しみだ。グリーンパーク吉峰などでの販売も予定されている。富山の新たな特産品として育ってほしい。スギの間伐材を有効活用するため、広葉樹の代わりに菌床に使うことも検討している」と話している。
問い合わせ
●富山県農林水産総合技術センター森林研究所
TEL.076-483-1511
FAX.076-483-1512
http://www.fes.pref.toyama.jp