特産品

アーカイブ

2004年 5月 12日 [ 特産品 ]

No.143-1:初夏の風物詩、イナダの天日干し


●陽の光と潮風でツヤが出るまで乾燥させた塩干物

 高級珍味として知られるイナダの天日干しが、新湊市港町の海岸沿いで最盛期を迎えている。「イナダ」は一般的には、出世魚であるブリの小さいものを言うが、ここでは春から夏に揚がる脂の少ないブリを半身にした塩干物のこと。2万円前後もする高級品だが、中元の贈答品として根強い人気がある。製造期間は4 月下旬から6月下旬までで、竹で編んだ簀の子の上にイナダがずらりと並んだ光景は、新湊の初夏の風物詩だ。
 富山の味覚といえば、冬場の脂ののった「寒鰤」が有名だが、イナダの製造には、九州方面で水揚げされた重さ8〜10kgのブリから厳選して使用される。この産卵後の脂の少ない時期の「夏鰤」がイナダづくりには最適となる。脂ののったブリでは、表面に脂が浮き出てしまい、完全に水分を出し切ることができないためだ。
 ブリを、まず頭部をつけたまま3枚におろして中骨を外し、塩ののりをよくするために表面に包丁で3本の筋を入れる。一晩薄塩をして、翌日に余分な塩を洗い流して乾燥を始める。1枚のブリを、晴天ならば天日干し、雨天だと機械乾燥を繰り返し、20〜30日ほどかけて完全に干し上げる。天日干しの場合、むらなく乾燥させるために1日に何度も表裏を返さなければならず、根気のいる作業が必要となる。


●野趣に富んだ旨味を堪能

 イナダの天日干しは、加賀藩三代藩主・前田利常の時代に、加賀から江戸に送るために塩干しをしたのが始まりとされ、夏場の保存食としても重宝されていた。新湊市では戦前から昭和にかけて、海岸部一帯で簀の子が広げられ製造されていたが、加工技術の難しさなどから今では2軒のみとなってしまった。1シーズンに1,000本ほどを生産する立野三郎商店の立野豊店主は、「水分を完全に出し切らねば、傷んでしまいます。天日干しには手間と時間がかかりますが、伝統の製法を守り続け、良い品物を出荷していきたいですね」と話す。
 食べ方として、薄く切ってそのまま味わうか、三杯酢にして味わう。歯でかむごとに、濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。潮の風味いっぱいのイナダで富山の夏を感じてみたい。

問い合わせ
●立野三郎商店(tateno-f@po3.canet.ne.jp)
TEL&FAX.0766-82-4653

コメント

その他の特産品

ページの先頭へもどる↑