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2017年 12月 27日 [ 特産品 ]

No.838:越中福岡の菅笠、国の伝統的工芸品に

 高岡市福岡地域で主に生産されている「越中福岡の菅笠(すげがさ)」が平成29年11月30日、国の伝統的工芸品に指定された。当産地では、400年以上にわたって菅笠作りが受け継がれ、国内最大の生産地となっている。出荷量は年間3万蓋(がい/「枚」と同じ意味)に達し、全国シェアは約9割を占める。県内からの伝統的工芸品の指定は29年ぶりで、高岡銅器、井波彫刻、高岡漆器、庄川挽物木地、越中和紙に続き6品目。

●スゲの栽培から菅笠の仕上げまですべて手作業

 菅笠とは、スゲ(カヤツリグサ科カサスゲ)を使って縫った笠。一度は目にしたことがあるのではないだろうか。手づくりならではの素朴さと美しさ、温もりがある。今は市町村合併で高岡市福岡地域となった旧福岡町では、沼地に良質のスゲが自生していたことから室町時代に菅笠作りが始まったとされ、江戸時代前期には加賀藩の奨励を受けて生産が本格化。田んぼや畑での農作業が一段落した冬仕事として伝わり、最盛期の幕末には年間210万蓋が出荷された。農作業用の日よけ、雨よけとして、全国で昔ながらに使われている。角笠、富士笠を中心に、民謡踊りの花笠、イベント用の次郎長笠、一文字型などが知られており、ヘルメット笠や、近年では帽子型の愛らしい乙女笠など新製品も登場している。


▲高岡市福岡町加茂集会所での
「菅笠教養講座」の様子(左)
▲菅笠と原料のスゲ(中央)
▲製作中の大きな次郎長笠(右)

 菅笠のつくり方を紹介しよう。同地域では、原料となるスゲの栽培から笠骨作り、笠縫い、仕上げ、出荷までの全工程を集約的に行っているのが特徴。まず、9月下旬から10月上旬、小矢部川左岸の福岡地域に広がるスゲ田に苗が植え付けされ、翌年7月中旬に刈り取られる。約2mの背丈にまで成長したスゲは刈り取り後、雨に濡れないようにすぐに天日干しに。1週間ほどかけて白くなるまで脱色・乾燥させる。

 菅笠作りの一連の作業はすべて手作業だ。加工した雌竹を放射状(大半が円錐状)に巧みに組み立てる笠骨作りと、スゲを笠骨に丁寧に縫いつけていく笠縫いの作業を経て、一つの菅笠ができあがる。スゲを1本ずつ縫い付けていく作業は実に細やか。平成21年に「越中福岡の菅笠製作技術」として国の重要無形民俗文化財、25年には富山県伝統工芸品に指定されている。


▲笠骨にクモの巣状にスゲを巻く(左)
▲帽子風の乙女笠(手前)(中央)
▲富士笠や一文字型などが並ぶ(右)

 国の伝統的工芸品は、工芸品の中でも主として日常生活に提供され、その製造過程の主要部分が手工業的であること、伝統的な技術又は技法により製造されるものであることなどの要件に該当するもの。経済産業省が指定し、全国で230品目が指定されている。指定に向けては、今年3月、製造事業者らが「越中福岡の菅笠振興会」(会員数83名、※うち製造事業者数55名)を設立し、県を通じて申請していた。指定によって、「伝統マーク」を付けることや、認定された職人が「伝統工芸士」と名乗ることが可能になる。同振興会では今後、認定マークを付ける基準や伝統工芸士を認定する方法を検討する考えだ。

●後継者を育て、伝統の技を伝えたい

 菅笠作りには現在、80人ほどが関わっている。70代、80代が中心で、技を受け継ぐ後継者不足が悩みだ。後継者育成と菅笠作りの腕を磨くため、有志が年に数回、「菅笠教養講座」を開いている地域もある。菅笠作りに携わって60年ほどという女性は、「昔、福岡に嫁入りするときに、笠縫いの道具箱“笠ぼんこ”を持参してきた。それだけ菅笠作りが盛んだった。地域の工芸品、文化を絶やしてはいけない。若手に笠縫いの技を伝えていきたい」と、丁寧にスゲを縫い付けながら話す。


▲菅笠作りの道具箱“笠ぼんこ”

 越中福岡の菅笠振興会の高田哲会長は、「国の伝統的工芸品の指定は、単なる勲章ではない。産業として盛りたてるべきと、国のお墨付きを得たことになる。新商品開発や販路拡大など新しい挑戦のきっかけにしたい。伝統の技術の良い点を守りながら、時代や需要に合わせて進化させていきたい」と、今後を見つめる。

 菅笠は、福岡地域にある高岡市福岡庁舎展示コーナー、高岡市福岡歴史民俗資料館、高岡市福岡にぎわい交流館などで展示。高岡地域地場産業センター、さんちょんぴん蔵、SUGET(スゲット)などでは展示販売もされている。

問合せ
●越中福岡の菅笠振興会
TEL.090-2834-1125(SUGET(スゲット))
FAX.0766-64-2702

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