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2012年 11月 14日 [ 特産品 ]

No.581-2:富山育ちのアナゴ出荷、世界初の完全養殖を目指す

近畿大学水産研究所富山実験場(射水市海竜町)は、富山湾の水深100mから汲み上げた低温で清浄な海水を使って、稚魚からマアナゴを養殖し、富山県内向けに出荷を始めた。マアナゴは最も一般的に食用にされているアナゴで、日本人に馴染み深い。“富山湾の宝石”と呼ばれるシロエビの殻を餌として与え、美味しさを高める研究も本格化。来春からは親魚から採卵を始め、人工ふ化させて、世界初のアナゴの完全養殖を目指す。

▲給餌の様子

●富山湾の低温で清浄な海水を使用

 富山湾に面した陸上養殖施設の円形水槽にマアナゴが泳ぐ―。近畿大学水産研究所富山実験場(射水市海竜町)は、富山湾の水深100mから汲み上げた低温で清浄な海水を使って、稚魚からマアナゴを養殖し、富山県内向けに出荷を始めた。マアナゴは最も一般的に食用にされているアナゴで、日本人に馴染み深い。“富山湾の宝石”と呼ばれるシロエビの殻を餌として与え、美味しさを高める研究も本格化。来春からは親魚から採卵を始め、人工ふ化させて、世界初のアナゴの完全養殖(天然資源に頼らない養殖サイクル)を目指す。

 マアナゴの生態には謎が多く、完全養殖の技術は確立されていない。天然産稚魚からの養殖技術も確立されていないため、食用は大部分が天然もので賄われている。その天然ものの漁獲高も近年激減している状況だ。近畿大学水産研究所は2004年から、天然資源に頼らない完全養殖を目指し、和歌山県白浜町にある白浜実験場で養殖研究を開始。2008年、稚魚になる前の“ノレソレ”と呼ばれる状態(体長8~10cm)から成魚に育てることに初めて成功した。

 太平洋側は夏場の海水温が28度ほどと高いため、2010年には、夏でも20度前後でより生育に適した低温の海水がある富山湾に面した富山実験場に拠点を移して研究を進めてきた。富山実験場の30t円形水槽5面(陸上養殖)を使用し、夏に水温20度前後、冬は12度以上に維持された海水を用い、主にウナギ用の市販配合飼料を与えて飼育してきた。

●シロエビの殻を使って特産化へ

 出荷を始めたのは、今年3月末に瀬戸内海で漁獲された天然産稚魚(平均体長27cm、平均体重26g)約6,500匹のうち、体長45cm・体重150g以上に達した約3,000匹。実験場に隣接する堀岡養殖漁業協同組合を通じて県内の飲食店などに順次出荷する。試験出荷として、9月に射水、富山市内の飲食店に約80匹を出荷し好評を得た。射水市の「新湊きっときと市場」では、鮮魚店で白焼き、みりん干しなどで販売されており、話題になっているという。

 富山実験場では、富山湾で漁獲されたシロエビの剥き身加工時に出る殻を餌に添加する研究を進めており、美味と風味を備えたマアナゴを富山ブランドの地場産品として育てていきたい考えだ。

 来春からは、養殖で育った成魚のうち300~400匹を親魚にして採卵や人工ふ化の研究に本格的に取り組み、次の世代を生み出していく完全養殖を目指す。ただし、完全養殖には早くても5~6年かかる見通しだ。

 近畿大学水産研究所は1965年に世界で初めてヒラメの人工ふ化による種苗生産を実現し、2002年にはクロマグロの完全養殖に成功。富山実験場ではトラフグのオスの発生率を8割以上にする養殖技術を確立している。

 近畿大学水産研究所の村田修教授は、「清浄で低温の富山湾の海水を飼育に使用したからこそマアナゴの養殖に成功できた。今後、完全養殖に向けて研究を加速させていきたい。身は癖がなく、あっさりとしていて美味しい。富山育ちの新しいブランドとして定着させたい」と話している。


▲円形水槽▲マアナゴ
問い合わせ
●近畿大学水産研究所富山実験場
TEL.0766-86-2111
FAX.0766-86-2772
http://www.flku.jp/

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