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2019年 4月 24日 [ イベント ]
No.904:高志の国文学館、新元号「令和」記念コーナー設置
●「令和」の出典について紹介
記念コーナーでは、新元号「令和」の出典となった『万葉集』巻五「梅花の歌三十二首」の序文の箇所「初春令月、気淑風和…」(初春の令月にして、気淑く風和ぎ…)<現代語訳:新春の好き月、空気は美しく風はやわらかに…>を解説している。この歌群は、天平2年(730年)1月、家持の父、旅人が大宰府で主催した「梅花の宴」で詠まれた。「令和」の直接の由来となった部分には、「春をむかえたすばらしい月で、天気もよく、おだやかな風がふいている」と、なごやかでうるわしい初春を迎えた喜びが表れている。記念コーナーでは、高志の国文学館の中西進館長の著書や書家の青柳志郎氏の書なども展示している。
●前期・後期合わせて27点の絵画
「大伴家持生誕1300年記念企画展 家持発見-響き合う詩歌と絵画」では、家持の歌をモチーフにした日本画、洋画27点(奈良県立万葉文化館所蔵19点、高志の国文学館所蔵8点)を展示している。家持の歌と現代を代表する日本画家、洋画家の作品をコラボレーションさせた。第1章「自然を見つめるー風土と花鳥」、第2章「心を見つめるー恋と悲しみ」、第3章「時代を見つめるー乱世と平和」の3章立てで、歌に込められた家持の心の動きに沿って、絵画を紹介するユニークな企画展だ。
国守として越中に赴任した家持は、都とは異なる自然風土にふれ、驚きや親しみ、望郷の念などさまざまな心情を歌にしている。第1章「自然を見つめるー風土と花鳥」では、自然に触発された家持の歌をモチーフにした絵画作品を展示。藤森兼明氏の「紅にほふ少女らし」(2012年)は、家持の歌「雄神川紅にほふ少女らし葦附採ると瀬に立たすらし」(現代語訳:雄神川に紅色が照り映えている。少女たちが葦付を採るとて浅瀬に立っているらしい) (『万葉集』巻十七・4021番)をモチーフに描かれた。家持は紅の裳を通じて、宮中に仕える女性のイメージを重ねた。絵の中央には紅の衣裳を着た一人の少女が立っている。さらに、藤森氏は色彩としての紅色に「少女から女性に移りゆく薫り」を掛けたという。
家持は、最愛の女性への想いを表現した歌など、多くの恋の歌を残している。第2章「心を見つめるー恋と悲しみ」では、恋や悲しみの歌をモチーフにした絵画作品を展示している。森田りえ子氏の「撫子(なでしこ」(1999年)は、家持の歌「石竹花(なでしこ)が花見るごとに少女らが笑まひのにほひ思ほゆるかも」(現代語訳:石竹花の花を見るたびに、少女の笑顔の美しさが思われるよ) (『万葉集』巻十八・4114番)がモチーフ。作者は歌から「三美神」(ギリシャ神話に登場する美と優雅の三人の女神たち)を連想したという。中央の女性が身につけている裳(巻スカート)に、家持が愛したナデシコの花が描かれていることから、家持にとって特別な女性であった坂上大嬢であることが連想される。
家持は名門氏族の嫡流としての誇りを胸に、治世の繁栄と安定を祈った。第3章「時代を見つめるー乱世と平和」では、家持の祈りが感じられる歌をモチーフにしている。上村松篁氏の「春愁」(1998年)は、家持の歌「うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りしおもへば」(現代語訳:うららかに照っている春の日に、雲雀が飛びかけり、心は悲しいことよ。ひとり物を思うと) (『万葉集』巻十九・4292番)をモチーフにした作品。明るい春の風景の裏側にひそむかすかな悲しみが、余白の中に込められているようだ。
●「三十六人歌合」初展示
会場では、新収蔵資料「三十六人歌合」も展示している。三十六歌仙(平安中期の歌人・藤原公任編「三十六人撰」に選ばれた歌人36人)の姿絵に和歌を書き添えた色絵を貼り合わせ、1冊の画帖に仕立てたものだ。同資料の制作は17世紀から18世紀頃とみられ、「三十六歌仙」の一人である家持の姿絵に、家持自身の歌「春のゝにあさるきゝすのつまこひにをのかありかをひとにしれつゝ」(現代語訳:春の野に餌をあさる雉(きじ)は妻を恋いて鳴いては自分の居場所を知られてしまって)(『万葉集』巻八・1446番)が添えられている。
高志の国文学館では、「家持の歌のこころを叙情性豊かに表現した絵画との対話を通じて、あらためて家持の歌の魅力を感じることができるでしょう。絵画を入り口に、家持の歌の世界に想いを馳せてみませんか」と話している。
- 問合せ
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●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://koshibun.jp/