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2019年 3月 13日 [ イベント ]

No.898:わたしはどこにいる?…富山県美術館でサイン(道標)の新たな魅力を知る

2019年3月9日(土)、「わたしはどこにいる? 道標(サイン)をめぐるアートとデザイン」展が富山県美術館で開幕した<5月19日(日)まで>。日本を代表するグラフィックデザイナーらによる案内標識などを展示するユニークな展覧会。春の陽光と爽やかな風のなか、サインに導かれて、さあ富山へ。

●人を目的地に導く目印に着目

 美術館や駅、空港など、あらゆる場所に存在し、人々を導いてくれる標識や案内板、ピクトグラム(絵文字)などのサイン=道標。本展では、この「サイン」に着目し、グラフィックデザイナーらによるサインデザインと、場所との関係性を追及した現代美術作品を紹介する。7人の作家による出品作品と関連資料を通して、人間がどのように場所や空間を理解し、伝えようとしてきたのか、その中でめぐらされる「わたしはどこにいる?」という問いに「アート」と「デザイン」の双方から迫る。

 会場は、4つのコーナーで構成されている。1.「しるしをつける Making Marks」では、ピクトグラム(絵文字)の先駆となったアイソタイプ、日本でピクトグラムが広まる契機となった前回の東京オリンピックや大阪万博のサインなどを紹介。先日、東京2020オリンピックのスポーツピクトグラムが発表されたところであり、比較してみるのも楽しい。また、ちょうどこの東京2020にも関わったグラフィックデザイナーの廣村正彰氏は、映像作品からピクトグラムと場所の関係性を提示する。すみだ水族館の映像作品では、三角形をパズルのように組み合わせ、クラゲやペンギンなどのピクトグラムを作り出している。


▲ガムテープを貼って作られた
富山オリジナルの案内板(佐藤修悦作)(左)
▲回路(秋山さやか作)(右)

 現代美術作家の秋山さやか氏は新作「回路」を展示。カラフルな糸やビーズが下がる空間に、富山市内で約2か月間滞在して集めたボタンや小物、長靴などを取り込んでいる。糸の網目は、台湾で見たガジュマルの木や、先住民の伝統的な編み仕事から着想を得たという。鑑賞者は糸を通して、秋山氏の「記憶の回路」をたどることができる。

●存在感を放つ案内板

 2.「わたしはどこにいる? Where am I?」では、富山県富山市(旧大山町)出身の現代美術作家、田村友一郎氏の作品が迎えてくれる。最晩年を立山国際ホテルで過ごした世界的バイオリニスト、シモン・ゴールドベルク氏が富山で作った眼鏡をテーマに「十戒」を制作。ゴールドベルク氏が過ごしたホテルのドアの再現や、愛用の眼鏡の展示が印象的だ。


▲佐藤修悦氏により作られた案内板(左)
▲東京都立つばさ総合高等学校
ウォールグラフィック
「Wisdom on Wall」(葛西薫作)(右)

 アートディレクターの葛西薫氏は東京都立つばさ総合高等学校のウォールグラフィック「Wisdom on Wall」を会場に再現。色を塗り分けた壁面に配したラテン語の格言など、空間全体からのメッセージが道標となっている。

 現代美術作家の康夏奈(こう かな)氏は、2018年秋の立山登山と取材に基づいて、「立山飛行体」と「立山発光体」を制作した。立山の風景をパーツとして組み合わせて描いたUFOの設計図がユニークだ。

 3.「開かれた空間とサイン Open Spaces and Signage」は、公共空間におけるサインの在り方を考えるコーナー。富山県美術館のサイン計画を担当したグラフィックデザイナー/アートディレクターの色部義昭氏は、東日本大震災からの復興計画の一環として建設された須賀川市民交流センターtetteと、千葉県・高滝湖の湖畔に建つ市原湖畔美術館のサインと映像を紹介している。シンプルで無駄のないサインデザインが印象的だ。

 JR新宿駅の工事現場で働く警備員、佐藤修悦氏の手による案内板もユニーク。廃材に色付きのガムテープを貼って作られたオリジナルの案内板が存在感を放っている。2007年頃より口コミやインターネット通じて、“修悦体”として話題になった。会場では、JR日暮里駅の改築工事時に制作された駅構内案内図をはじめ、本展に合わせて作られた富山駅周辺美術館マップなどの新作も壁面を飾る。

 4.「さあ、外へ Now Let’s Go Outside」では、美術館の外から館内各所に“出張”してきたサインを、マップ片手に探すことができる。家族連れでサインの魅力に触れてみよう。

 富山県美術館では、「3月16日(土)、23日(土)、4月6日(土)、20日(土)、5月11日(土)、19日(日)に、担当学芸員によるギャラリーツアーを企画しています。また、アーティストトークも予定しており、詳細は決定次第公式ウェブサイトなどで順次お知らせします。ぜひご参加ください」と話している。

 高校生以下は無料、大学生は一般観覧料の半額で本展を楽しむことができる。会期中にはちょうど10連休のゴールデンウィーク期間も到来。ご家族で富山への旅行を計画し、ぜひ訪れてほしい。


問合せ
●富山県美術館
TEL.076-431—2711
FAX.076-431—2712
https://tad-toyama.jp/

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