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2016年 1月 27日 [ イベント ]

No.741:清張ファン必見!ミステリー文学でたどる北陸・富山

 高志の国文学館(富山市舟橋南町)の企画展「松本清張を魅惑した北陸―ミステリー文学でたどる―」が開幕した<会期:3月7日(月)まで>。松本清張を中心に北陸・富山を舞台にしたミステリー作品を取り上げ、物語の構成に活かされた風土とその魅力に迫る。北陸・富山の情緒漂う鉛色の空、舞い落ちる雪を見ながら、清張が描いた主人公の心情に想いを馳せてみては……。

●清張の5作品をクローズアップ

 企画展会場に入ると、松本清張の写真をはじめ、万年筆、眼鏡などの愛用品が迎えてくれる――。

 現代小説、歴史・時代小説、推理小説、ノンフィクション、古代史研究、現代史研究と、幅広い作家活動で昭和という時代を駆け抜けた松本清張(1909―1992)。日本のミステリー文学は、昭和30年代に発表された清張の作品によって大きく展開したといわれる。それまでの探偵小説が東京周辺を舞台にしていたのに対し、清張は作品の舞台と背景に日本各地を取り上げ、その景観や風物を細かく描写することで、地方を詩情豊かに表している。北陸も作品の舞台あるいは物語の展開における関連地として取り上げられた。


▲第Ⅰ部『疑惑』のコーナーほか

 第Ⅰ部は、清張が北陸を描いた作品をたどる。『万葉集』の歌に導かれ、翡翠を追い求めた学生が行方不明となることから始まる『万葉翡翠』、北アルプスを舞台に、もつれあう情念と殺意を描き、“山岳ミステリー”と呼ばれるジャンルの先駆けとなった『遭難』(連載小説『黒い画集』第一話)や、社会派ミステリー作家としての清張のひとつの到達点を示す傑作と評される『ゼロの焦点』、保険金殺人の嫌疑を争う法廷ミステリーであり、マスコミの先入観による糾弾を批判した社会派小説でもある『疑惑』などの5作品をクローズアップし、作品の解説やあらすじの紹介とともに、直筆原稿や書籍、映画の台本などを展示している。

 『疑惑』のコーナーでは、初出となった「昇る足音」<『オール讀物』(1982年2月号)掲載、のちに「疑惑」と改題>の原稿を展示。「十月の初めであった。北陸の秋は早くくるが、紅葉までにはまだ間がある。越中と信濃とを分ける立山連峰のいちばん高い山の頂上は夏でもスキーができるくらいだが、その雪が広がっているのをT市から見えた。T市は県庁の所在地である。――」の書き出しで始まる。北陸、立山連峰、雪の文字が印象的だ。


▲『ゼロの焦点』のコーナー

 『ゼロの焦点』は戦後日本の混乱期を必死に生き抜いた過去を背負う人間の悲劇と弱さを描き出した長編ミステリー。北陸がミステリーの舞台として注目されるきっかけともなった。昭和36年(1961)と平成21年(2009)に映画化されており、展示コーナーでは、小説の紹介パネルをはじめ、野村芳太郎監督が使用した映画台本や絵コンテ、映画パネル、ポスターなども展示。見ていると、能登半島の冬の空のイメージが浮かび、日本海の波の音が聞こえてくるようだ。清張は、陰鬱や哀愁漂う北陸の自然、風土のなかにロマン性を見出し、特異な事件や犯罪の動機の舞台に選んだとされる。

●富山県ゆかりのミステリー小説MAPを展示


▲富山県ゆかりのミステリー小説MAP

 第Ⅱ部では、富山県ゆかりのミステリー小説の本がずらりと並ぶ。森村誠一『人間の証明』など63作品を県内のマップとともに紹介している。

 三方を山に囲まれた富山。新田次郎『チンネの裁き』、森村誠一『密閉山脈』など、“密室”ともいえる山を舞台にした“山岳ミステリー”のジャンルの作品も多い。

 また、哀調を帯びた胡弓の音色や坂の町が作者の想像力をかき立てるのだろうか。西村京太郎『風の殺意・おわら風の盆』、内田康夫『風の盆幻想』など、おわら風の盆で全国に知られる富山市八尾町を舞台にした作品も目を引く。清張以降、北陸・富山は西村京太郎や内田康夫を代表とする“トラベル・ミステリー”の宝庫となったことが分かる。

●関連イベント、参加者募集!

 関連イベント(参加無料)にもぜひ参加してほしい。文学講座「文学としての松本清張」は1月30日(土)14:00~15:30、富山大学准教授で日本の近代以降の文学に造詣が深い小谷瑛輔氏を迎えて開催。DVD映画上映会も楽しみだ。「ゼロの焦点」(松竹、1961年、監督:野村芳太郎、出演:久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子)は2月11日(木・祝)、「疑惑」(松竹、1982年、監督:野村芳太郎、出演:桃井かおり、岩下志麻)が2月28日(日)、いずれも14:00~、101研修室にて上映。「コトノハ」―アナウンサーによる朗読会では、2月7日(日)に「疑惑」、2月20日(土)に「万葉翡翠」をライブラリーコーナーにて朗読。担当者によるギャラリートーク(展示解説)は1月30日(土)、2月11日(木・祝)、20日(土)、28日(日)、3月5日(土)各回13:00~14:00に開催。文学講座のみ事前に申し込みが必要。電話もしくはFAXにて氏名、電話番号を伝える。

 高志の国文学館では、「企画展をきっかけにぜひ小説を読んでほしい。北陸新幹線の開業で首都圏と近くなった北陸・富山が注目されている。ミステリー文学の舞台として、ますます作家の創作意欲をそそるに違いない。富山の地に、名探偵や名刑事が訪れることを期待している」と話している。

問合せ
●高志の国文学館
TEL.076-431-5492
FAX.076-431-5490
http://www.koshibun.jp/

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