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2012年 5月 16日 [ トピックス ]
No.556-2:心も弾む、絶景探訪へ出かけよう!『とやまの名勝』刊行
富山県教育委員会は「とやま文化財百選」事業の第8弾として、「とやまの名勝百選」を選定し、ガイドブックを刊行した。“とやまの名勝”の特徴や見どころ、選定した111件について紹介している。HP(富山県デジタル文化財ミュージアム・企画展示室)からPDFファイルをダウンロードすることができるので見てみよう。
●「とやま文化財百選」事業の第8弾
身近な文化財を郷土の誇りとして後世に受け継いでいくため、富山県教育委員会は「とやま文化財百選」事業の第8弾として、「とやまの名勝百選」を選定し、ガイドブック(A5判・79頁・オールカラー)を刊行した。選定した111件の“とやまの名勝”の特徴や見どころを紹介している。
「とやま文化財百選」事業は、ふるさとの文化財の価値を再認識し、地域ぐるみで保存・活用していくきっかけづくりとなることを目的にした取り組み。これまで、「土蔵」、「獅子舞」、「祭り」、「年中行事」、「お城」、「近代歴史遺産」、「歴史的まちなみ」をテーマとして取り上げてきた。
“名勝”とは、優れた景観地のことであり、風致景観として人々に親しまれているものや、先人から歌や絵画の素材として引き継がれてきた自然や造営物、県民の生活や生業、風土によって形成され、富山県の歴史や文化を象徴するものを「とやまの名勝百選」として選定した。具体的には、(1)植物・動物の生息場所など、(2)峡谷や滝など、(3)公園・庭園など、(4)文学・芸術作品の景観など、(5)展望地点の5つに分類。ガイドブックでは、新川、富山、高岡、砺波のエリア別に“とやまの名勝”(所在地、分類、概要、見頃・ポイント、行き方、マップ)を写真とともに紹介している。
表紙の写真は「雨晴海岸とその眺望」。雨晴海岸は、源義経一行の奥州下向の際、岩陰で雨宿りしたという伝承からその名がある。富山湾越しに3,000m級の立山連峰の雄姿を遠望することができる県内屈指の眺望地点。奈良時代に越中国守として赴任した大伴家持もこの景観に感嘆し、秀歌を残している。
●「植物・動物の生息場所」、「峡谷や滝」の分類で名勝を見ていくと…
三方を北アルプスなどの急峻な山々に囲まれた富山県。山岳地帯の植物群落を代表するのが、「白馬連山高山植物帯(しろうまれんざんこうざんしょくぶつたい)」(朝日町大蓮華)。朝日岳から白馬岳にかけて、高山植物が群生し、夏には可憐に咲く花を見ることができる。「美女平とブナ坂」(立山町芦峅寺)にはスギとブナの原生林が広がり、巨木が生育している。散策路が整備されており、森林浴やバードウォッチングが楽しめる。「室堂平」(立山町芦峅寺)はライチョウの生息地で、チングルマなどの高山植物が咲き乱れる雲上の楽園。地獄谷は立山地獄として『今昔物語』、『善知鳥(うとう)』にも取り上げられている。
高山から一気に流れ下る急流河川が深くて自然豊かな峡谷をつくりあげたことも富山県の地形の特徴だ。峡谷を代表するのが、黒部川によって刻まれた「黒部峡谷」(黒部市宇奈月町黒部~立山町芦峅寺)。日本一深いV字峡で、断崖絶壁の谷底を流れる激流、新緑、紅葉などの峡谷美を誇る。弥陀ヶ原から溶岩台地を浸食して一気に流れ落ちる「称名滝」(立山町芦峅寺)は落差350mの日本一の大滝。雪解け水の多い春には右側にハンノキ滝が現れ、称名滝とともに荘厳なV字形を描く。
「県内の公園」の特徴は、里山の地形をそのまま利用したものが多いことだ。呉羽丘陵の南部に広がる「婦中ふるさと自然公園」(富山市婦中町)からは立山連峰と富山平野のパノラマが楽しめる。勅使塚(ちょくしづか)古墳や王塚古墳などの古墳が分布し、歴史の浪漫に触れることもできる。庭園では、「光久寺の茶庭」(氷見市飯久保)は、背後の山の樹林、丘陵地形と調和した落ち着いた回遊式の庭園。座敷と書院をつなぐ回廊が中庭に続き、清楚な空間を醸し出している。「善徳寺の庭園」(南砺市城端)は、枯山水の庭園が見事。マツやケヤキの古木と岩石が落ち着いた雰囲気を醸し出す。光久寺の茶庭、善徳寺の庭園ともに江戸時代の名庭師、駒造によって築庭されたと伝えられている。
「文学・芸術作品の景観」として、万葉集ゆかりの景観が挙げられる。「二上山とその眺望」(高岡市二上山)はその代表。大伴家持が歌に詠んだ名勝で、立山連峰、富山平野、富山湾、能登半島などが見渡せる展望地点としても親しまれている。「氣多神社周辺のカタクリ群生地」(高岡市伏木一宮)では、家持の歌にちなんだカタクリの花と柿(こけら)葺きの社殿が鎮座する神社の荘厳な雰囲気が楽しめる。「藤波神社の白藤と社叢」(氷見市下田子)は、境内のスギの巨木などにからみついた藤の景観が春の風物詩となっている。
立山連峰の荘厳な景観は、富山県を代表する景観だ。白砂に青松の海岸が約5kmに渡って延びる「古志の松原」(富山市岩瀬ほか)は立山連峰の眺望地点の1つ。また「呉羽山」(富山市安養坊)も“立山仰ぐ特等席”となっている。氷見市の「虻が島」、「阿尾の浦」、「唐島」と富山湾越しの立山連峰の景観も魅力。日本の代表的な散村景観として知られる砺波平野の展望地点として、砺波市夢の平、小矢部市稲葉山、閑乗寺公園、安居寺周辺、医王山が挙げられる。整然と並ぶ水田、カイニョと呼ばれる屋敷林に囲まれた農家など美しい散村景観を満喫しよう。
『とやまの名勝』は、市町村教育委員会、公立図書館、美術館、博物館などに配布。県のホームページ、富山県デジタル文化財ミュージアム・企画展示室からPDFファイルをダウンロードして見ることもできる。
富山県教育委員会生涯学習・文化財室では、「今回で、平成16年度から始まった『とやま文化財百選』シリーズは一旦終了します。ガイドブックの中でこれまでの取組を紹介しています。県内には、四季折々に美しい景観、優れた景観を見せる場所が数多くあります。現地を訪れ、富山の魅力に触れていただければ幸いです」と話している。
●問い合わせ
富山県教育委員会生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/