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2022年 2月 16日 [ トピックス ]

No.1032:花粉ゼロのスギ「立山 森の輝き」で、森林資源の循環利用を促進!

スギ花粉のシーズンが到来しようとしている。富山県農林水産総合技術センター森林研究所によると、今年の飛散量は平年並み、飛散開始日は2月25日頃と予想されるとのこと。今回は、県が進める、全く花粉を飛散しない優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の生産について紹介する。

●今年の飛散開始日や飛散量を予想


▲コンテナ苗による
「立山 森の輝き」の生産


▲雄花がついた枝の比較

優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の話に入る前に、富山県農林水産総合技術センター森林研究所が行っているスギ花粉に関する3つの予報を紹介しよう。その3つとは、飛散開始日、シーズン中の飛散量、翌日の飛散量である。

まずは、飛散開始日。2月10日の時点では、2月25日頃と予想されている。予報の方法は、スギの開花予想をするというもの。スギは、冬の寒冷な気温を経験した後、日平均気温の合計、すなわち積算気温がある値を超えると開花する。積算温度とは、例えば1日の平均気温が5℃の場合、10日で50℃、20日で100℃というふうに温度を足していくことをいう。ただ、実際の気温は年によって変わるため、過去の平均気温と照らし合わせて、予測を立てている。今年は1月20日から積算温度を計測し始め、105℃に達したら開花すると考えられている。

2つ目の予報は、シーズン中の飛散量だ。今年は平年並みと予想されている。飛散量の予想で重要となるのが、雄花の着花量だ。前年の秋に「スギの木に花粉を飛ばす雄花がどれだけついているか」を観測し、その着花量を基準にして、翌春の飛散量が推定されている。研究員が、実際に双眼鏡で見て雄花の数を数え、係数化している。そうした苦労があって初めて、飛散量が推定されているのだ。

そして、3つ目は、翌日の飛散量の予報。ニュースで見たことがある人も多いのではないだろうか。翌日に雨が降ったりすると、飛散量は減る。シーズン中の飛散量を導き出す計算式に、降水量や日照時間などの気象因子を加えて補正することで予測している。過去のデータを振り返ると、予報が的中していることが多いため、お出かけ前の参考にしてほしい。

●SDGsの切り札、優良無花粉スギ「立山 森の輝き」


▲「立山 森の輝き」の種子を大量生産(左)
▲花粉銃における受粉作業(右)

どうしたらスギ林からの花粉飛散量を減らせるのか。そんな課題に一筋の光がさしたのは、平成4年。研究員が富山市内で花粉を作らないスギを偶然発見したのを機に、優良無花粉スギ「立山 森の輝き」は生まれた。※これまでの経緯が気になる方は、こちらもぜひチェックしてほしい↓
「優良無花粉スギ「立山 森の輝き」、県外初出荷」(https://www.toyama-brand.jp/TJN/?tid=104206)
「全国初の「優良無花粉スギ」、愛称募集」(https://www.toyama-brand.jp/TJN/?tid=103298)

「立山 森の輝き」は、全く花粉を出さないことが最大の特徴。林業用として無花粉スギを量産しているのは、全国でも富山県ぐらいである。県では、平成24年から「立山 森の輝き」の量産を始め、植栽をスタートした。令和2年度からは民間が参入して生産量が倍増。昨年までに県内に128ヘクタールを植栽した。

現在植えているのは、「再造林」だ。再造林とは、大きく育ったスギを伐採・収穫して終わりではなく、また新たなスギを植え育てて、資源として使い、循環利用を促すというものだ。これこそが、県が推し進めている「森林資源の循環利用」である。
最終的に建築材などに使われる林業用品種には、優れた成長量や強度が欠かせない。「立山 森の輝き」には、林業用品種の基準を満たす優れた遺伝子が受け継がれているため、循環利用に最適な品種といえよう。

県森林政策課は、「森林の所有者や生産者の方々は、花粉症の原因にならないスギを植えることができます。彼らが胸を張って「スギを育てている」と言えることも、森林資源の循環利用のために無花粉スギがもたらす大きな効果のひとつといえるのではないでしょうか」と思いを話す。

●50年後を見据えて、さし木苗生産へ


▲「さし木生産に向けた優良木の選抜林

最初の発見から生産まで、20年。品種開発の道のりは長い。しかも、スギは、苗になるまで約2〜3年はかかる。そのため、今の需要に応えて生産しても、数年後に引き取ってもらえない可能性もあれば、数年後に要望通りの生産量が満たせない可能性もある。

こうした生産現場の実情を踏まえたうえで、県は「令和8年度までに460ヘクタール」の植栽を目指している。安定生産に向け、さまざまな課題に取り組んでいるが、その課題のひとつとして、生産者が生産過程で行う「花粉検定」にかかる手間がある。現在、生産者はすべての雄花を棒で叩いて花粉の有無を確認し、出なかったものだけを「立山 森の輝き」として出荷している。

森林政策課は、「花粉検定は手間や労力を費やすため、将来的には「さし木による苗づくり」への移行を考えています。親となる木の枝先を切って土に挿すと、親の優良かつ無花粉な遺伝が引き継がれるため、検定が不要になるのです。今は、さし木生産に向けて、採穂林を造成中です。令和8年度からさし木による生産が可能になる計画を立てています。順調に進めば、生産者の作業が楽になったり、価格が安くなったりと、生産の不安定さが解消されて、増産しやすくなります。また、県外からの引き合いにも対応しやすくなりますね」と話している。

スギは50年以上育てて初めて伐採できる。課題に向き合いながら、遠い未来に向かって確実に歩を進める県の取り組みに期待したい。

問合せ
●富山県農林水産部森林政策課
TEL.076-444-3389
FAX.076-444-4428


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