トピックス

アーカイブ

2009年 5月 27日 [ トピックス ]

No.405-2:戦国時代に思いを馳せて‥‥『とやまのお城』刊行


 「とやま文化財百選」事業(富山県教育委員会)の第五弾として、ガイドブック『とやまのお城』が刊行された。県内には約400カ所のお城が確認されており、その中から特徴的な108カ所を百選として選定。ガイドブックでは、富山のお城の特徴や見どころ、選定されたお城について紹介している。戦国武将人気、お城ブームのなか、ガイドブックを参考に県内のお城めぐりを楽しんでみてはいかが?

▲増山城

●地域の歴史的なシンボル「お城」をテーマに

 「とやま文化財百選」事業(富山県教育委員会)の第五弾として、ガイドブック『とやまのお城』(A5判・96頁・オールカラー)が刊行された。県内には約400カ所のお城が確認されており、その中から特徴的な108カ所を百選として選定。ガイドブックでは、富山のお城の特徴や見どころ、選定された城について紹介している。ここ最近の戦国武将人気、お城ブームのなか、ガイドブックを参考に県内のお城めぐりを楽しんでみてはいかがだろうか。

 「とやま文化財百選」事業は、身近な文化財を対象に、郷土の誇りとして後世に受け継いでいきたいものを選定することで、ふるさとの文化財の価値を再認識し、地域ぐるみで保存・活用していくきっかけづくりとなることを目的にした取り組み。これまで「土蔵」、「獅子舞」、「祭り」、「年中行事」をテーマとして取り上げてきた。
 
 県内のお城は、平地に築かれ、武士の屋敷など居住施設を中心とした「居館」、丘陵地などの険しい場所に築かれ、戦闘のための防御施設である「山城」、平地にあり、防御施設と居住施設を併せ持った「平城」に大別できる。全体的な特徴を挙げると、富山の城の3分の2が標高300m付近の丘陵や台地に立地する山城だ。これは、東、西、南の三方を山に囲まれた富山県の地形が要因とされている。また、加賀・能登との国境地帯である氷見市や高岡市、小矢部市の地域に多く分布していることも特徴。この地域は、南北朝時代から能登・加賀の勢力と戦いを繰り広げたところで、戦国時代末に佐々成政が越中を平定した後に、前田氏との戦いのために国境警備のお城が整備されたためだ。このほかの特徴として、寺院でありながら城の性格を持つものがある。砺波地方などでは本願寺を背景とする寺院勢力が力を有し、井波の瑞泉寺や高岡の勝興寺などでは堀や土塁が設けられるなど、寺院の城郭化が進んだという。

●歴史ロマンを肌で感じるひとときを

 県内のお城をいくつか紹介しよう。山城の代表例が、県西部の和田川右岸の丘陵に築かれた増山城(砺波市増山:山城)で、魚津の松倉城、高岡の守山城とともに「越中三大山城」といわれている。築城は、16世紀前半の神保長職(戦国武将)の時代。天正4年(1576)上杉謙信に攻略され、上杉氏の支城となったが、天正9年(1581)、織田方の手に落ち、佐々成政の支城となった。県内でも屈指の規模を誇る中世城郭として知られ、このほど国史跡に指定されることが決まった。
 
 森寺城(氷見市森寺:山城)は、戦国時代、能登との国境地帯に築かれた城。竪堀(斜面を急にするために掘った溝)などのほか、主郭周辺に設けられた石塁や石垣、櫓台といった遺構が注目され、特に石垣は中世のものでは県内唯一の本格的なもの。お城の性格をもつ寺院として挙げられるのが、土山御坊・御峰城(南砺市土山:山城)。加賀との国境に近い台地上に築かれ、勝興寺の前身である土山御坊が置かれた。頂部に二段の曲輪(斜面を削って平らにした平坦面。兵士が駐屯する建物や食糧・武器などを保管する倉庫などを設置)と、その下に帯曲輪などを備えている。
 
 富山市中心部に美しい姿を見せる富山城(富山市本丸地内:平城)は天文12年(1543)、神保長職が築城。天正10年(1582)佐々成政の居城となり、その後、前田利長の居城となるなど、戦国から江戸にかけて時代の趨勢を見つめてきた。平成14年度の発掘調査で、戦国時代後期の堀跡、鍛冶工房跡などが見つかっている。

 大河ドラマ「天地人」にさきごろ登場したのが、魚津城(魚津市本町:平城)。室町時代に新川郡守護代椎名氏が築城し、永禄12年(1569)、松倉城とともに上杉方の越中の拠点となったが、天正10年(1582)、織田方からの攻撃を受けて劣勢に。魚津城からの援軍要請に、上杉景勝、直江兼続率いる援軍が天神山城に布陣するものの、織田方の別働隊が春日山城に迫ったために、上杉軍は春日山城に引き上げ、魚津城は孤立無援となって落城。その後、佐々氏、前田氏の家臣が在城。現在、魚津市立大町小学校が建っている。

 富山県教育委員会生涯学習・文化財室では「県内各地のお城は、とやまの戦国時代のありさまをいきいきと語りかけてくれる大切な宝物といえます。ぜひ現地を訪れ、戦国の群雄が割拠した歴史ロマンを肌で感じてみてはいかがでしょうか」と話している。

 なお、ガイドブック『とやまのお城』は、県内の公立図書館で閲覧、富山県教育委員会生涯学習・文化財室のホームページからPDFファイルをダウンロードして見ることができる。ガイドブックに関するお問い合わせは、下記の問い合わせ先までご連絡ください。


▲森寺城


●問い合わせ
富山県教育委員会生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/kj00006672.html

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑