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2010年 11月 24日 [ トピックス ]
No.482-1:昆布消費量日本一の富山から! 富山湾で昆布の促成養殖実験スタート
1世帯当たりの昆布消費量が全国トップの富山。富山県農林水産総合技術センター・水産研究所は、富山湾の海洋深層水を利用し、冷水性コンブ類を陸上水槽内で通年生産できる技術を開発(平成21年2月特許取得)。11月下旬から射水沖の富山湾で促成養殖に取り組む。
●深層水を利用した陸上養殖の技術を確立
1世帯当たりの昆布消費量が全国トップの富山。富山県農林水産総合技術センター・水産研究所は、富山湾の海洋深層水を利用し、冷水性コンブ類を陸上水槽内で通年生産できる技術を開発。11月下旬から射水沖の富山湾で促成養殖に取り組む。
昆布〆や昆布巻き、昆布かまぼこなど、昆布の食文化が古くから根づいている富山だが、夏場に高温になる富山湾ではマコンブ、リシリコンブなど冷水性コンブ類は自生できず、消費される昆布のほとんどが北海道産だ。促成養殖で昆布が生産できれば、新たな食品、富山ブランドの開発へと可能性が広がる。
県水産研究所では、低温で海藻の生長に欠かせない窒素、リンなどの栄養源を豊富に含んでいる深層水に着目。冷水性コンブ類の養殖に適していると判断し、研究をスタートさせた。深層水をかけ流した陸上水槽で1~2カ月間、冷水性コンブ類の葉片を培養する方法によって、成熟体をつくる方法を確立し、平成21年2月に特許を取得した。マコンブを用いた屋外水槽での生長試験では、水温10℃で培養したものが最も生長し、葉の長さ3m以上、葉幅25cm以上、湿重量1kgを超えるほどになったものもあった。
この技術によって、いつの時期からでも種苗生産が可能になり、夏場の高温を避けた海中での養殖が始められる。通常天然のコンブは2年ほどの生育期間が必要だが、1年ほどの促成養殖が可能になるという。
●射水沖で種糸を垂らし、生育を調べる
富山湾での養殖実験は、射水沖(水深10mほど)にコンブ養殖施設を新たに設置して行われる。幹綱からマコンブ、リシリコンブ、オニコンブ、ガゴメコンブの4種類の種苗を付けた長さ5mの養成ロープを25~30本垂らし、生育状況を観察する。取り付けるコンブの種苗の大きさなどを変えながら、富山湾に適した養殖法を研究していく。
県水産研究所の松村航主任研究員は「たくさんの河川が流入している富山湾では塩分濃度の低下が心配だ。また冬場の高波にも気をつけなければならない。養殖実験を成功させ、将来、高品質・高機能な富山県産昆布が大量に生産できるようにしたい。昨年2月、水槽内の深層水で育てたマコンブとガゴメコンブを使って昆布巻きを試作・販売したところ、好評だった。高機能成分のフコイダンの含有量も市販の昆布と同等で、商品化にも期待が持てる」と話している。
松村さんは北海道大学でコンブをテーマにしたバイオ技術を研究後、県水産研究所に移り、深層水を利用したコンブの養殖技術の開発に取り組んできた。富山に来て、富山湾の豊かさに感動をおぼえたという。「富山湾の海底には、ホンダワラやテングサなどの藻場があり、森のように広がっている。稚魚、小魚が身を隠す場所、遊び場ともなり、富山湾の豊かな幸を育む源ともなっている」。松村さんは“海の森づくり”にも取り組んでおり、実際にスキューバーダイビングの装備で海中に潜り、魚津、滑川、海老江沖に藻場を造成する活動を行っているという。富山湾に魅せられ、昆布の養殖とともに、そんな活動を行う松村さんにエールを送りたい。
問い合わせ
●富山県農林水産総合技術センター 水産研究所
TEL.076-475-0036
FAX.076-475-8116
http://www.pref.toyama.jp/branches/1661/suisan/1690.htm