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2007年 2月 21日 [ トピックス ]
No.288-1:「日本の道百選」の八尾・諏訪町本通りに豆腐店、復活!
「日本の道百選」に選定されている八尾・諏訪町本通りに、八尾出身で横浜市からUターンした夫婦が県産大豆を使った豆腐店を開業した。「生搾」という江戸時代からの製法で、添加物を一切使わないことも自慢だ。
●漆喰の壁に木格子の映える伝統的町屋に暖簾が下がる
石畳のゆるやかな坂が続く諏訪町本通り(富山市八尾町)。「日本の道百選」に選定されている、この情調ある通りに、「長江屋豆富店」と染め抜かれた古風な暖簾が風に翻っている−−。八尾出身で横浜市からUターンしてきた長枝春一さん(55)と妻の美千子さん(49)がこのほど開いた豆腐店だ。築110年の伝統的町屋を改装し、奥行きの長いスペースを豆腐づくりにあてている。富山市八尾町の旧町部には昔は何軒も豆腐店があったが、時代の流れで姿を消していった。長枝さん夫妻の店は街並に久々に復活した豆腐店というわけで、地域の人たちから大きな期待が寄せられている。
長枝さん夫妻の豆腐づくりは「生搾(なましぼり)」という江戸時代からの製法。「生搾」は、大豆をすった後にすぐに漉してしぼり、ここから得られた豆乳を煮て、天然にがりだけを加えて豆腐をつくるというもの。素材にもこだわり、大豆は県産大豆100%、豆腐を固めるために用いるにがりは能登半島・珠洲にある奥能登塩田村産の天然にがりを使用。消泡剤などの合成添加物を一切使わないことも自慢だ。
一般的に豆腐づくりには、「煮しぼり」という製法もある。すった大豆を水とともに煮た後にしぼって豆乳をつくるものだが、長枝さん夫妻は昔ながらの「生搾」にこだわり、大豆のうまみを引き出す。実際に豆乳を飲ませてもらったが、大豆の青臭さがなく、雑味のないすっきりとした味わいと、上品な香りが印象的だ。そして、この口あたりのよい豆乳からつくられた木綿豆腐は、ほどよい歯ごたえとふわっと感が入り交じった食感。大豆の持つ深い味わいも感じられる。
●とにかく八尾に住みたいという気持ちからすべてが始まった
豆腐は、木綿豆腐、厚揚げ、汲み豆腐の3種類で、豆乳、おからも単品で販売されている。厚揚げは、薪で煎った菜種から一滴一滴手間暇かけて搾った香ばしい菜種油で揚げる。汲み豆腐は、絹ごしになる前の淡雪のような豆腐で、デザート感覚で食べられるのが魅力だ。
「絹ごし豆腐も試作中で納得いくものができたら出したい」と豆腐づくりに意欲を燃やす長枝春一さんだが、実は八尾で暮らすために豆腐店を起業したという。八尾の旧町部の上新町で生まれた春一さんは、小学校6年まで八尾で暮らし、その後、親の仕事の関係で東京へ。米国のカリフォルニア大学を卒業後、日本の大手砥石メーカーなどでサラリーマン生活を送った。八尾へ移り住むことを考えるようになったきっかけは、大阪府出身の美千子さんが八尾の豊かな自然や、おわらなどの伝統文化、八尾の棟梁が建てた伝統建築に魅かれたからだという。
「仕事のことは考えず、まずは八尾に住みたいという気持ちが先行し、2年ほど前に八尾の住宅団地に土地を購入してその棟梁に自宅を建ててもらったんです」と春一さん。実際にUターンするとなると、心配は仕事のこと。八尾で地域や人に溶け込んでできる仕事はないかと思いをめぐらしていたところ、偶然に見たのが会津の山の中で開店した豆腐店を紹介するテレビ番組。会津まで出かけ、そのおいしい豆腐に魅了されるうち、八尾でも手づくりの豆腐ができないかと決心。独学で豆腐づくりの研究に励み、昨年8月に会社を早期退職して横浜から八尾に完全に移り住んだ。
「地元の皆さんに喜んでもらえる豆腐、愛される店にしたい」と目を輝かせる春一さんと美千子さん。美千子さんは、おわらの三味線にも挑戦中で、今年のおわらデビューも期待されている。
問い合わせ
●長江屋豆富店
TEL&FAX.076-454-7372