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1997年 10月 2日 [ トピックス ]

No.011-1:縄文時代の定説を覆す遺物が大量に出土!


 富山県小矢部市の桜町遺跡から、縄文中期(約4,000年前)の謎を解明する貴重な遺物が次々に発掘されている。
 今回の調査では、高床式建物の柱や壁などが総数50点以上も発掘されている。なかでも直径50センチ、長さ3.4メートルの大型の高床建物柱は、柱上部に彫刻が施されていることから祭祀用の建物とみられている。中型の高床建物の中央柱や隅柱も見つかり、いずれも貫穴やほぞ穴が施され、倉庫として使ったものと考えられている。また、建物の横架(よこがけ)材に施された渡腮仕口(わたりあごしぐち)も大きな発見だ。これは木組みを堅牢にするために、木と木の接合部に凹凸加工をしたもの。わが国では従来、法隆寺で使われたものが最古とされてきたが、その定説を覆し、使用年代がいっきょに縄文時代までさかのぼることになった。
 この他、壁材として網代(あじろ)壁も出土。これは20センチ間隔に並べた栗の木の棒に桧の薄板を編み込んだもので、現在の土壁の原形とされる。
 建造物の地上部分がこれほど多数出土したのは全国でも初めてで、これにより縄文時代に高床式建物が存在していたことを初めて実証することになった。これまで各地の古代遺跡で出土している建造物の部材は、ほとんどが地中に埋もれた基礎部分で、その建築構造も推測の域を出なかった。今回の発見で実資料によってその全容が初めて具体的に明らかになった。
 また、水辺の遺構も数多く発掘され、小川に沿って木材を敷並べてくいを打ち込んだ木組みが当時のまま出てきた。これはトチなど木の実のアクを抜くための「水さらし場」か作業用の「足場」「木道」ではないかとみられている。小川跡からは山菜のコゴミ、クルミ、縄、ザル、漆塗りの木製容器、土器類など、膨大な数の遺物が発掘されている。特にコゴミは腐りやすいことから、これまで実物が出土することはありえないと考えられていたが、今回全国で初めて、しかもほぼ完全な形で出土したことから、当時の食生活を知るうえでの貴重な資料になるといえる。
 古代史の定説を覆す新発見が続く桜町遺跡の発掘は、調査対象1万6千平方キロメートルの5%が終了したに過ぎない。遺跡は地下水が豊富なため有機物の保存状態が非常によいことや、地層が縄文草創期から晩期までの1万年にまたがっていることなどから、今後の発掘にも大いに期待が持てる。調査に当たっている小矢部市教育委員会でも、「この先、どのようなものが出てくるか全く想像もつかない」と話している。

* 問い合わせ
●小矢部市教員委員会文化財係
〒932 小矢部市本町1-1
TEL 0766-67-1760

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