●勝井三雄の「光」と「色」の世界へ

　芸術の秋到来、富山では全国レベルの展覧会が次々に開催されている。まず富山県立近代美術館では、9月10日(金)から「視覚の領角勝井三雄デザイン展」がスタートした＜〜10月3日(日)。写真上＞。勝井三雄は、「花の万博EXPO'90」公式ポスターなどで知られるグラフィックデザイナー。今回は1950年代の初期作品から今日までの幅広い仕事のなかから、ポスターと本のデザインを中心に、かつてない規模で紹介される。CGを駆使して幻想的な世界を繰り広げる勝井の半世紀に渡る仕事の集大成となり、勝井の主要テーマとなっている「光」と「色」の表現はもちろん、創造性あふれる編集の世界も堪能できる。新作として、「水」をテーマに、山と川、海、そして大気を結ぶ水の循環システムなど、生命の源ともいうべき水のたゆまぬめぐりをインスタレーション作品で展開されているので、じっくりと鑑賞したい。
　また、10月9日(土)〜11月28日(日)には「日本画の精華----箱根・芦ノ湖成川(なるかわ)美術館所蔵名品展----」が開催。約4,000 点にもおよぶ現代日本画を収集する成川美術館のなかから選りすぐった39作家の66作品を展示するもので、山本丘人(きゅうじん)の「満月夜」、平山郁夫の「敦煌鳴沙(とんこうめいさ)」、杉山寧(やすし)の「羊」など、現代日本画の豊かな創造の精華が紹介される。


●新しい美の推進者だった4巨匠の代表作を一堂に

　富山県水墨美術館では、「院展を築いた4人の巨匠----大観　春草　観山　武山----」が9月26日(日)まで開催されている。日本画の近代化に大きく貢献し、今日もその一翼を担う美術団体「日本美術院」。この展覧会では、院展の四巨匠である横山大観(たいかん)、菱田春草(しゅんそう)、下村観山 (かんざん)、木村武山(ぶざん)の名品49点が展覧されており、その華々しい足跡にふれることができる。
　日本美術院は日本画の近代化に心血を注いだ岡倉天心によって、明治31年に設立された美術団体。天心に従った大観、春草、観山、武山は、新日本画運動の回生をはかるべく新しい日本画の創造に邁進した。特に大観と春草は、自分たちの生み出した新描法「朦朧体」の改良に努力。研鑽によって生まれた作品は、文部省美術展覧会などで高い評価を得て、近代日本画の歴史に残る名作となった。展覧会では、大観の「立山遠望」や「雨晴義経岩」といった富山ゆかりの作品をはじめ、春草の「鹿」、観山の「美人観桜」、武山の「十一面観音」など、巨匠の代表作や秀作をゆっくりと鑑賞したい。
　また、10月1日(金)〜11月7日(日)に開催される「髙山辰雄----墨色の世界展〜生きて在ることの哀しみと優しさと」も見逃せない。名実ともに日本画の第一人者として活躍を続ける髙山辰雄。展覧会では、墨色によって描かれた初期から今日までの代表作が展示される。山の作品の特色は、人間が存在することの危うさと、生きることへの意味を問い続けている点だ。「聖家族」シリーズなどの作品に表現された“生きて在ることの哀しみと優しさ”を感じてみたい。
　なお、富山県[立山博物館]では、10月2日(土)〜11月7日(日)に秋季特別企画展「チベットマンダラ展」が催される。インドに生まれ、ネパールあるいはシルクロードを経由してチベットに伝えられた「タンカ」(軸装仏画)を展示するもので、釈迦牟尼世尊絵伝など、神秘的な仏画にふれられる。なお、 10月16日(土)午後2時から富山県民小劇場(富山駅前：マリエ富山7階)で、講師に真鍋俊照(まなべしゅんしょう)四国大学教授(四国霊場4番札所大日寺住職）を迎えて、チベットマンダラについての講演会も開かれる。興味のある方はぜひ聴講いただきたい。
　なお、文中の「髙山辰雄展」のチケットを3名様にプレゼントします。電子メールに、郵便番号・住所・氏名・電話番号、記事を読んでのご感想をご記入のうえ、表題を「髙山辰雄展」と明記してkoho1@pref.toyama.lg.jpへお送りください。締切りは9月19日(日)。（発表は発送をもって代えさせていただきます。




問い合わせ
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.jp/branches/3042/3042.htm

●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm

●富山県[立山博物館]
TEL.076-481-1216
FAX.076-481-1144
http://www.pref.toyama.jp/branches/3043/3043.htm