ダムの型式や堤高、総貯水容量などの基本情報を写真とともに紹介する「ダムカード」がファンの間で人気となっている。急流河川が多く、県内各地にダムのある富山。県では2014年から7ダムのダムカードを配布してきたが、今春13ダムのカードを作成し、順次配布を開始。これで県管理の20ダムがすべて揃う。県内ダムめぐりで水の王国とやまを実感しよう。

●ダムの基本情報や周辺の観光情報を掲載

　山峡に満々と水を湛える巨大な構造物、ダム。治水や利水などさまざまな役割を担い、人の暮らしを守っている頼もしい存在だ。自然美と人工美のハーモニー、ダイナミックな景観などに魅了され、近年、ダムめぐりを楽しむファンも増えている。

　ダムカードとは、まず国土交通省と独立行政法人水資源機構が、ダムのことをよく知ってもらおうと、管理するダムを中心に2007年から配布が始めたカード。いまでは全国の都道府県や発電事業者が管理するダムでも配られている。カードの大きさやデザイン、掲載する情報項目は全国統一で、表面はダムの写真、裏面はダムの所在地や河川名、型式、ゲート、堤高・堤頂長、総貯水容量、管理者などの基本情報、技術的な特徴(こだわり情報)、ダム周辺の観光情報(ランダム情報)を掲載している。カードの大きさはタテ6.3cm、横8.8cmの名刺サイズほど。

　富山県には北アルプス・立山連峰からの雪解け水を集めて流れる急流の河川が多く、県では水害防止や発電などを目的にダムを設けてきた。そのダムの魅力を発信しようと、県では2014年から上市川ダム、上市川第二ダム、和田川ダム、白岩川ダム、子撫川ダム、室牧ダム、境川ダムの計7つのダムのカードを作成し、管理事務所で配布してきた。

●個性的なダムいろいろ、新緑の季節、観光に

　新たに作成したのは、県土木部管理の角川ダム、朝日小川ダム、布施川ダム、城端ダム、大谷ダム、利賀川ダム、久婦須川ダム、舟川ダム、熊野川ダムの9つのダム、県農林水産部管理の刀利ダム、臼中ダム、五位ダム、湯谷川ダムの4つの計13ダムのダムカード。それでは、いくつか紹介しよう。

　角川水系角川に設けられた角川ダム(魚津市)は、県営ダムで唯一の治水専用ダム。堤高58.5ｍ、堤頂長180.0ｍ、総貯水容量155万㎥。岩石を積み上げたロックフィルダムで、表面の白い張石は早月川産の石を採用している。

　小川水系小川にある朝日小川ダム(朝日町)は、重力式コンクリートダム。洪水調節のほか、発電用の利水容量を持つ多目的ダム。堤高84.0ｍ、堤頂長260.0ｍ、総貯水容量528万㎥。ダム下流には5～8月頃にハーブの花や香りを楽しむことができるハーバルバレーおがわがある。

　神通川水系井田川支川久婦須川に設けられた久婦須川ダム(富山市)は、重力式コンクリートダム。堤高95.0ｍ、堤頂長253.0ｍ、総貯水容量1,000万㎥。ダムのある富山市八尾町は日本有数の化石の産地で、ダム下流の八尾化石資料館「海韻館(かいいんかん)」には数多くの化石が展示されている。

　小矢部川水系山田川にある城端ダム(南砺市)は、重力式コンクリートダム。洪水調節のほか、豪雪地帯における冬季の克雪対策のため、全国で初めて消流雪用水の供給を目的として建設された。堤高59.0ｍ、堤頂長216.5ｍ、総貯水容量300万㎥。ダムの高欄には「城端むぎや祭」のレリーフが使われている。

　小矢部川にある刀利ダム(南砺市)は、ドーム型アーチ式コンクリートダムと重力式コンクリートダムを組み合わせた複合ダム。小矢部川流域の洪水と干ばつ被害の解消を目的に、国と県企業局の共同事業で造成。発電にも利用されている。堤高101.0ｍ、堤頂長229.4ｍ、総貯水容量3,140万㎥。

　なお、ダムカードは各ダムを訪問すると一人に一枚、無料でもらえる。ただし、都合により配布できないこともあるので、事前に各ダムの管理事務所に問合せてから訪問を。各管理事務所の連絡先はhttp://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1503/kj00014172.htmlを参照。郵送などでの配布は行っていない。

　富山県河川課では、「年間800枚ほどのカードを配る人気のダムもあります。新緑や初夏の季節、ぜひ県内各地のダムをめぐり、特徴や役割を知ってほしい」と話している。