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2015年 10月 14日 [ イベント ]

No.727:世界から最先端のポスターが富山に!「第11回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2015」

 世界5大ポスター展の1つに数えられ、国内で唯一の国際ポスター公募展「第11回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2015(IPT2015)」。富山県立近代美術館で入選・受賞作品など378点を展示中!県内からは金賞を含む、計11点が入選した。11月23日(月・祝)までの会期中、富山市内のJR富山駅、中心商店街で開催されるポスター展など「ポスターの街・とやま」を含めた関連イベントも必見。創設より30周年を迎えた今回のIPTは北陸新幹線開業記念。芸術の秋、新幹線で富山へ。最新のポスターの魅力に触れてみよう。

●世界57の国と地域から応募


▲グランプリ/ラルフ・シュライフォーゲルさん
(スイス・オランダ)の
「ヴァインガルト・タイポグラフィー展」(左)
▲金賞/尾﨑美穂さん(日本)の
「70 years after the war」(中央)
▲金賞/ヴィエスワフ・ロソハさん
(ポーランド)の
「ロソハ もうひとつのエリア、
もうひとつのフォーマット」(右)


▲A部門の展示(左)
▲B②部門の展示(右)

 絵や文字、デザインにアイデアを凝らし、1枚の紙のなかでいろいろなメッセージを伝えるポスター。「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」は世界から最新のポスターを公募し、審査・選抜する国際公募展(主催:富山県立近代美術館)。1985年の創設以来、3年に1度のトリエンナーレ方式で開催し、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ(ポーランド)、ラハティ国際ポスタービエンナーレ(フィンランド)、ブルノ国際グラフィックデザインビエンナーレ(チェコ)、メキシコ国際ポスタービエンナーレ(メキシコ)と並ぶ世界5大ポスター展の1つと評されている。

 部門はAとBの2つがあり、A部門は2012年1月以降に制作され、実際に印刷発表されたポスター、B部門は未発表のオリジナル自主制作ポスター。今回から、従来どおりテーマ自由の未発表ポスターの募集をB②部門とし、新たに、IPT実行委員会が設定したテーマ「LIFE」に合わせたポスターを募集するB①部門を設けた。

 今回は、世界57の国と地域から総計3,845点の応募があった。このなかから審査の結果、まず、A部門211点、B①部門47点、B②部門93点の合計351点を入選作品に決定。次に入選作品の中から、最高賞となるグランプリ(1点)をはじめ、金賞(2点)、銀賞(3点)、銅賞(10点)の各賞を決定した。本展では、入選・受賞作品、審査員作品など378点を展示している。

 応募数は前回(2012年)よりも780点ほど減少したものの、応募のあった国・地域は57と過去最高を記録。IPTが国際的に広く認知されていることを示している。応募数の減少は、中東の政情不安や欧州の経済問題といった世界情勢などが影響しているのではないかと、県立近代美術館ではみている。

●富山のグラフィックデザイナー、金賞に

 入賞作品と入選作品をいくつか紹介しよう。グランプリに輝いたラルフ・シュライフォーゲルさん(スイス・オランダ)の「ヴァインガルト・タイポグラフィー展」は、タイポグラフィーの第一人者、ヴァインガルトさん(スイス)のチューリッヒでの個展を告知するポスター。ヴァインガルトさんの頭文字の「W」の黒と矢印の記号の白が印象的。モノクロのシンプルなデザインだが、グラデーションを効果的に用いてメッセージを発信する。人目で誰の展覧会かわかるなど、デザイン性の高さが評価された。

 金賞に選ばれた尾﨑美穂さん(日本)の「70 years after the war」は戦後70年をモチーフにしたモノクロ作品。黒の円の回りに戦没者に見立てたサクラの花びらをちりばめて日の丸をデザインした。戦争の犠牲者を追悼し、悲惨な歴史を忘れてはならないという意を込めた。尾﨑さんは、富山市在住のグラフィックデザイナー。IPTで県内デザイナーの入賞は初めてとなる。もう1つの金賞はヴィエスワフ・ロソハさん(ポーランド)の「ロソハ もうひとつのエリア、もうひとつのフォーマット」。横顔のシルエットを組み合わせたユニークな作品で、人の内面の複雑さが伝わってくるようだ。


▲銀賞/上西祐理さん(日本)の
「世界卓球2015」(左)
▲銅賞/ミヒャエル・クリェンビュールさん&
イワン・ヴァイスさん(スイス)の
「ロックヴォッヘ ロト ファブリク
チューリッヒ」(中央)
▲銅賞/リサ・ポメレンケさん&
シモン・ロトさん(ドイツ)の
「ジムルタンハレ2014(展覧会)」(右)

 銀賞に輝いた上西祐理さん(日本)の「世界卓球2015」は、青のベースにネットと白いボールで卓球の世界を端的に表現したポスター。銅賞を受賞したミヒャエル・クリェンビュールさん&イワン・ヴァイスさん(スイス)の「ロックヴォッヘ ロト ファブリク チューリッヒ」はロックミュージック・フェスティバルの告知ポスター。ロックのイベントならではの躍動感あふれるデザインとノイズを表現した網点が目を引く。リサ・ポメレンケさん&シモン・ロトさん(ドイツ)の「ジムルタンハレ2014(展覧会)」は、積まれたフライヤー(チラシ)に出展者の名前を記したデザインが印象的だ。

 入選作品のなかには富山に関係するものもあり、入場者の目を引いている。山本あゆみさん(日本・富山)の「横山大観展 (富山県水墨美術館)」は“大観”の文字をモチーフに、作品をレイアウトしたポスター。齋藤浩さん(日本)の「富山」は、山の文字をモチーフにした迫力のある絵が印象的。トンネルに入る北陸新幹線も描かれている。連なる山を抜けると、どんな世界が広がっているのかをイメージさせるポスターだ。

 会場では、すべての入選作品からお気に入りのポスターを選び、投票することができる<10月18日(日)まで>。応募者には抽選で、「近代美術館オリジナル 永井一正 ラウンドレイヤー」、「富山プロダクツ製品 能作KAGO」、「トヤマカード35(富山県名産品の選べるギフト)」などがプレゼントされるので、ぜひ参加を。

●富山市内各所や東京・渋谷ヒカリエでも関連展示


▲富山商工会議所ビルの
西面壁に掲示されている
「IPT2015 超特大ポスター」

 IPT2015の会期に合わせ、富山市内各所でIPT協賛イベント「ポスターの街・とやま」(主催:「ポスターの街・とやま」実行委員会、事務局:富山商工会議所産業振興部 TEL.076-423-1170)が開催されている。富山商工会議所ビルの西面壁にはタテ15m、ヨコ10mのIPT2015の超特大ポスターを掲示。デザインは、日本を代表するグラフィックデザイナー、永井一正氏。鋭い眼光とくちばしを持つ猛禽類だろうか。描かれたイラストに圧倒されてしまう。このほか、県立近代美術館所蔵のポスターをホテルや銀行などで展示。総曲輪通り・中央通りの中心商店街やJR富山駅などでもIPT2015の受賞作品などのポスターの掲示があるのでお楽しみに。詳細は、http://www.ccis-toyama.or.jp/toyama/poster/へアクセスを。

 東京でもIPT2015の入選作を鑑賞できる。10月24日(土)~11月8日(日)、渋谷ヒカリエ8階の8/CUBE1,2,3を会場に、IPT2015のPR展が開催される。今回の入賞作の一部と歴代の受賞作品から約30点を展示。渋谷ヒカリエでポスターを楽しんだあと、北陸新幹線に乗って富山へ。入選・受賞作品の全作品を鑑賞しよう。

 なお、県立近代美術館は2017年中の移転を目指し、現在、新館を富岩運河環水公園西地区に建設中だ。そのため、現在の建物でIPTが開催されるのは今回が最後となる。第11回は近代美術館のポスターの収集・展示活動のひとつの集大成といえる。この機会をお見逃しなく!

 富山県立近代美術館では「環境、平和、戦争、愛、言論の自由など、ポスターは時代を映す鏡。一方、インターネットの普及、印刷技術の向上により、世界でデザインの均質化が進むなか、ポスターデザインの根本を問う審査となった。デジタルサイネージが普及してきたが、紙の質感、サイズ、インクなどで多様な表現が可能なポスターの魅力は尽きません。」と話している。

問い合わせ
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.lg.jp/branches/3042/3042.htm

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