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2014年 3月 12日 [ トピックス ]
No.648-2:富山湾産の若いマコンブ、本格養殖
●特産化へ第一歩、鮮やかな緑、フレッシュな味わい
富山県民は昆布が大好き。昆布巻かまぼこ、昆布のおにぎり、ニシンの昆布巻、昆布〆などと、昆布を使った食文化を育んできた。国の家計調査を見ても、全国の県庁所在地の中で富山市の1世帯当たりの昆布の年間消費量と年間支出額は53年連続で全国1位だ。しかし、食べているのは、北海道産ばかり。富山湾は夏場に海水温が高く、春になると雪解け水で塩分濃度が下がるため、マコンブ、ラウスコンブなど寒海性コンブ類が自生できないためだ。
富山湾で昆布が養殖できないか――県水産研究所は2010年度から射水沖約500mの区画漁業権内で養殖試験を開始。海洋深層水で育てたマコンブ、ガゴメコンブ、リシリコンブ、オニコンブの4種の種苗を付けた長さ8mの養成ロープを50本ほど垂らし、生育状況を観察した。その結果、4種の中でもマコンブとガゴメコンブがよく成長し、海水温が下がり、雪解け水の影響を受けにくい11月末~翌3月初旬が養殖に適しているのがわかった。
1シーズン約3カ月で収穫された富山湾産の若いマコンブは、長さ1.5m~2m、幅約10cm。北海道産は2年ほどで長さ約6m、幅20~40cmにもなり、その大きさの違いは歴然としているが、若いマコンブだけに薄くて柔らかく、生で食べられるのが特徴。磯の香りや風味もフレッシュで、サラダや和え物、しゃぶしゃぶなどに適している。
これからシーズンを迎えるホタルイカの和え物や、冬のブリと一緒にしゃぶしゃぶというのもオツな食べ方。湯に通すと、茶色からパッと鮮やかな緑色になるなど色の変化を視覚的に楽しめるのも魅力。このほか、お米と一緒に炊き込んだ昆布飯、サケやニシンの昆布巻、昆布を包んだ卵焼きといった料理もおすすめだ。
●新たな富山ブランドへ
機能性評価を担当した県食品研究所が調べた結果、機能性成分の含有をみると、富山湾産の生のマコンブには、発がん予防や肥満予防効果が期待されるフコキサンチンが10mg/100g含まれている。湯通ししてから冷凍しても、フコキサンチンが2割ほど減少するだけ。市販の乾燥マコンブにはほとんど含まれないことから、その機能性成分も注目したい点だ。
共同で試験研究を行った富山県農林水産総合技術センター・企画管理部 企画情報課の松村航主任研究員(当時水産研究所)と食品研究所の加藤肇一副主幹研究員は「フコキサンチンやフコイダン(抗高血圧作用、抗がん作用で注目されている機能性成分)などの成分は、北海道産のマコンブと遜色ないことを確認している。若いマコンブのフレッシュな味を知ってほしい。地元新湊地区をはじめ、富山、高岡などの料理店、スーパーへの供給が始まっている。食品メーカーなどへの販路開拓にも取り組んでいる。研究開発で終わりではなく、漁業者をサポートし、新たな富山ブランドとして育てていきたい」と話している。
また、県水産研究所と食品研究所では、今年度からモズクの仲間の「クロモ」(褐藻ナガマツモ目ナガマツモ科)の養殖技術・保存技術の開発にも取り組んでいる。クロモは全国に分布し、富山湾でも自生している海藻。ヌルヌルとした食感と、コリコリとした歯ざわりが特徴で、珍味として人気。その美味しさから「坊主ごろし」の異名もあるほどだ。高価格で流通しているが、養殖技術が確立されていないため本格的な養殖は全国でも行われていない。松村主任研究員は、「水産研究所で勤務していた当時、「海の森づくり技術開発研究」において、クロモの成長に必要な要因を明らかにした。また、射水市海老江沖の潜堤上にクロモの種苗を付けたロープを張り、日本で初めてクロモの海中育成にも成功しており、養殖につながる基礎知見を得ている。周りの潜堤上にもたくさんのクロモが発生しており、周辺海域への増殖の可能性もあるのではないか」と話している。
食品研究所が、富山湾で採取したクロモの機能性成分の分析を行った結果、フコキサンチンや遊離アミノ酸(うまみ成分のグルタミン酸や肝機能を改善する働きをもつアラニン、疲労回復効果のあるアスパラギン酸など)の含量がモズクよりも多いことがわかった。富山湾の新たな特産になる可能性を秘めた海藻として、注目が高まっている。
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- 問い合わせ
- ●富山県農林水産総合技術センター・企画管理部 企画情報課
TEL.076-429-2112
FAX.076-429-2701
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