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2013年 5月 15日 [ トピックス ]

No.606-1:未来を切り拓く力、世界に郷土の魅力を発信できる力を――「高校生のためのふるさと富山」発刊

富山県教育委員会は、「高校生のためのふるさと富山―高等学校郷土史・日本史学習補助教材」を作成した。第一部では、富山における旧石器文化の始まりや大伴家持の赴任、富山売薬の発展、分県運動など古代から戦前までの富山の歴史について必修科目の「世界史」と関連付けて紹介。第二部では、農地改革やイタイイタイ病、北陸新幹線の整備など戦後から現代までの歴史、富山の伝統・文化を「現代社会」と関連付けて紹介している。

●完成版、県立高等学校1年生に配布


▲表紙に北前船の絵をレイアウトした
「高校生のためのふるさと富山」

 ふるさとの歴史や文化に対する理解を深め、国際社会で自らの未来を切り拓く力を身につけよう――。県教育委員会では、高校生が富山や日本の歴史、文化を学ぶ機会を充実させるため、2010年度から郷土史・日本史学習を試行してきた。今年度からの本格実施に合わせ、これまで試行的に活用してきた補助教材を一部修正、加筆。必修科目の「世界史」、「現代社会」などの授業のなかで、郷土の歴史や文化、日本の近現代史と関連付けて学び、総合的な理解を深めることができるように内容をブラッシュアップさせてきた。

 「高校生のためのふるさと富山」の表紙には、海風を帆に受け、疾走する“北前船の絵”(旧森家所蔵の北前船の掛図)、裏表紙には、大陸から日本海や日本列島、その中心に位置する富山を捉えた“逆さ地図”(環日本海・東アジア諸国図)。人の営みを多様な角度から見つめ、富山から見える世界、日本という視点を身に付けることの大切さを象徴している。

 第一部では、富山の歴史を原始・古代から近世までのあゆみ、明治維新以降に進められた近代化のあゆみに大きく分けて紹介。富山の自然環境と越中の人々の生活との関わり、急流河川と対峙し、治水・利水へと踏み出した人々のねばり強さや勤勉さといった気質、近代化を進めた富山が日本に与えた影響などについて学ぶことができる。

 富山県は今年5月9日(木)に置県130年を迎えた。「自由民権運動と富山県の独立」の記述では、民権意識の高まりとともに、地方から国家の在り方を変革する運動に強い影響力をもった海内果、稲垣示や、石川県から政治的独立を目指す分県運動と富山県の独立に尽力した米澤紋三郎らをクローズアップしている。このほか、越中国守として赴任した大伴家持や、倶利伽羅合戦で勝利し京都へ進軍した木曽義仲、越中を統一した戦国武将・佐々成政、富山売薬の発展の礎を築いた2代富山藩主・前田正甫らを紹介。先人の偉業に触れることで、高校生が自分自身の在り方、生き方について考えるきっかけになるだろう。

 第二部では、環境に配慮した立山黒部アルペンルート、日本の四大公害病の一つ、イタイイタイ病の歴史と教訓を後世に伝える取組み、富山市中心市街地の空洞化や高齢社会に対応するためのコンパクトなまちづくりなど、先駆的な事例を取り上げている。敗戦後の復興から高度経済成長を経て、急激な国際化に見舞われている日本、富山の歴史を振り返り、未来を見つめることの大切さを訴えている。

 また、国際貢献に関する未来志向の活動や、世界の人々に影響を与えた富山ゆかりの人物、伝統芸能、食文化などを紹介。富山県民としての自覚と誇りをもち、富山の良さや魅力を多くの人々に発信することを提起している。

●囲みのコラムでタイムリーな話題も紹介


▲北陸新幹線の整備などを紹介した
「陸・海・空の交流基盤の整備充実」の頁

 コラムでは、特筆すべき歴史上の出来事や注目の人物、施設などをクローズアップ。「大伴家持の越中国守時代」の項目に関連して、昨夏開館した“高志の国文学館”、「富山売薬」の項目に関連して、“10代富山藩主前田利保が行った薬草研究”、「北前船の活躍」の項目に関連して、“昆布が好きな富山県人”、「環境先端県をめざして」の項目に関連して、“弥陀ヶ原・大日平のラムサール条約登録”と“立山で「日本初の氷河」”、「陸・海・空の交流基盤の整備充実」の項目に関連して、“新湊大橋”、「越中式定置網」の項目に関連して、“全国へ発信!キトキト富山(ブリしゃぶ)”など、適所にタイムリーな内容を盛り込んだことも編集上のポイントとして挙げられる。

 巻末資料では、富山県地図や大伴家持が越中で詠んだ歌、『万葉集』にうたわれた越中の地名、江戸時代の町と街道、昭和初期の富山県内鉄道路線略図、市町村合併の概要、とやまの年中行事百選一覧、関係施設、関係年表、索引などを掲載しており、富山の歴史、文化に端的に触れられる。

 「高校生のためのふるさと富山」はA4サイズ、148頁、カラー。10,000部を作成し、本年度に県立高等学校に入学した1年生と授業を担当する教員、市町村教育委員会、公立図書館、高志の国文学館などに配布。

 富山県教育委員会県立学校課では、「高校生に郷土史・日本史の学習内容を「世界史」や「現代社会」等に関連させて学ばせるのは、全国に先駆けた取組みです。ふるさとの歴史や特色について理解を深めることは、新たな視点で世界と自分自身を見つめ直すことにつながります。“身近な歴史に興味をもつきっかけになった”、“実際に歴史スポットを訪れた”といった生徒の声が届いています。県内の公立図書館、高志の国文学館で閲覧できます。一般の方も富山の歴史を振り返り、文化に触れてみませんか」と話している。

問い合わせ
●富山県教育委員会県立学校課
TEL.076-444-3450
FAX.076-444-4437
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3003/

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