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2012年 4月 11日 [ イベント ]
No.552-2:企画展目白押し! 富山の美術館へ行こう!!
春の陽光に誘われて、富山の美術館巡りはいかが。富山県水墨美術館では、「平山郁夫展―大唐西域画への道―」がこのほど開幕<5月20日(日)まで>。富山県立近代美術館は、4月14日(土)~5月27日(日)、「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展」を開催する。アートに触れる春のひとときを!
●平山作品73点を展示
春の陽光に誘われて、富山の美術館巡りはいかが。富山県水墨美術館では「平山郁夫展―大唐西域画への道―」が開幕した<5月20日(日)まで>。平成21年(2009)に亡くなった日本画家、平山郁夫の画業を回顧するもので、300点を超える平山作品を所蔵する佐川美術館(滋賀県)の協力により、「大唐西域画」、「シルクロードシリーズ」、「アンコールワットシリーズ」などから代表作72点と、黒部市宇奈月のセレネ美術館所蔵「黒部ダム」合わせて73点を展示する。
平山郁夫は昭和5年(1930)、広島県瀬戸田町(現・尾道市瀬戸田町)に生まれた。旧制中学3年生のときに原子爆弾の爆心地から3kmのところで被爆。15歳での被爆体験とその後の後遺症によって、「一枚でも多く、平和を祈る作品を描かなければならない」という心根に至る。昭和34年(1959)、中国・唐代の僧、玄奘三蔵が砂漠を旅してオアシスに出会う幻想的な画面を描いた「仏教伝来」を転機に、仏教を題材にした作品を手掛けていく。シルクロードへ、150回余りに及ぶ取材の旅を敢行し、風景としての歴史画ともいうべき独自の画境を切り拓いていった。
本展は、「仏教生誕の地インド・カンボジア」、「東西交流の地~西アジア・中央アジア・中国~」、「仏教・文化の精華~日本・韓国~」、「大唐西域画~玄奘三蔵、求道の軌跡~」の4章立てで作品を構成。平山郁夫の集大成ともいうべき「大唐西域画」へ至る道のりを紹介する。
「大唐西域画」は、奈良・薬師寺の玄奘三蔵院に納められた「大唐西域壁画」(縦2.2m×横49m)を約1/4の大きさの50号に縮小したもので、7場面13画面からなる。仏教の真理を求めて、中国・長安からインド・ナーランダまで旅した玄奘三蔵の足跡を描いている。朝の「明けゆく長安大雁塔 中国」から始まり、夕方の「デカン高原の夕べ インド」、夜の「ナーランダの月 インド」というように、1日の時空間のなかに凝縮した作品群は圧巻だ。
「明けゆく長安大雁塔 中国」は、出国という国禁を犯してまで、インドへ求法の旅に出ようとする玄奘三蔵の決意を表現すべく、燦然と輝く朝焼けのなか、鳥が門出を祝うように塔の周りを舞っている姿が描かれている。「西方淨土須弥山」は、世界最高峰のエベレストを神仏が住む崇高な山“須弥山”に見立てた作品で、青色の空に向かって屹立する山々が印象的だ。「デカン高原の夕べ インド」はデカン高原のオーランガバードの石窟から台地を眺めた作品。荒涼とした大地といまにも陽が沈みそうな夕暮れの様子が圧倒的なスケールで描かれている。4月21日(土)、5月5日(土・祝)は14:00から、担当学芸員が解説会を行う。
富山県水墨美術館では、「平山郁夫氏のシルクロードへの旅は、玄奘三蔵の苦難の旅の追体験であり、玄奘三蔵に自らを重ね合わせていた。そして、奈良・薬師寺の玄奘三蔵院大唐西域壁画殿の堂内を飾る大唐西域画に結実させた。仏教やシルクロードを主題に、平和への祈りを込めた平山作品を鑑賞ください」と話している。
●おなじみの「湖畔」がやってくる
富山県立近代美術館では、「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展」が4月14日(土)に開幕する。明治・大正の日本洋画界の中心的存在として活躍し、“近代日本洋画の父”と仰がれた黒田清輝(1866~1924)。黒田作品の国内最大のコレクションを誇る東京国立博物館の所蔵品から、「湖畔」や「智・感・情」など約160点を展示する。5月27日(日)まで。
黒田清輝は明治17年(1884)、法律を学ぶためにフランスに留学したが、絵画に興味を抱き、フランス人画家ラファエル・コランに師事し、西洋の絵画技法を本格的に学んだ。26年(1893)に帰国し、明るい色彩による外光表現をもたらした。29年(1896)に美術団体「白馬会」を結成し、新設された東京美術学校で指導にあたり、多くの後進を育成。絵画制作のかたわら、帝国美術院長、貴族院議員を務めるなど、美術行政家としても活躍した。
本展は、東京国立博物館と東京文化財研究所との共催により開催するもので、フランス留学時代の初期から晩年までの油彩画・素描のほか、画帖や日記、書簡、写真など貴重な資料も展示する。
作品をいくつか紹介しよう。箱根の芦ノ湖と山々を背景に涼をとる女性を描いた「湖畔」は、黒田の代表作の1つ。教科書や切手などでもおなじみで、近代日本の「美しい女性像」のイメージとして親しまれている。「智・感・情」は異なったポーズをとる裸婦像3点からなり、人体による寓意表現を試みた作品。萌え出でた緑のなかに背を向けて立つ少女を描いた「赤髪の少女」は滞仏中に制作されたもので、印象派的な要素が強い。「花野」は師であるコランの作風に近い作品。明治40年(1905)から制作が始まったが、未完に終わった。
会期中のイベントも楽しみだ。4月22日(日)14:00~の「記念講演会」では、“黒田清輝―美術で社会を変える試み”をテーマに、東京文化財研究所企画情報部副部長の山梨絵美子氏が、黒田清輝の生涯と作品の魅力について語る。5月12日(土)14:00~には、“黒田清輝と林忠正”をテーマに、作家の木々康子氏が、富山県高岡市出身の美術商、林忠正と黒田清輝の交流について講演する。木々氏は林忠正の義孫。黒田清輝に絵の道をすすめた一人は林忠正とされており、講演でどんな話が聞けるか期待も高まる。
会期中、美術館のエントランスに等身大の「湖畔」を設置。作品の一部になって、記念撮影もできる。また、黒田作品のぬり絵も登場。自分流の黒田作品を完成させてみたい。
富山県立近代美術館では、「近代日本洋画をリードし続けた巨匠、黒田清輝の画業の全貌を紹介します。4月14日(土)、28日(土)、5月3日(木・祝)、26日(土)14:00から当館学芸員によるギャラリー・トークも行います。ぜひ展覧会をご堪能ください」と話している。
問い合わせ
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.jp/branches/3042/3042.htm