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2011年 11月 16日 [ トピックス ]
No.532-2:氷見市立博物館、「地域回想法」で高齢者に笑顔
全国でも高齢者の人口比率が高く、急速に高齢化が進む富山県。高齢者がいきいきと健やかに過ごせるように、氷見市立博物館は今年度から市内の介護施設と連携し、「地域回想法」という取り組みを進めている。昔の生活用具や農具などの民俗資料を見て触れることで、高齢者に昔の記憶を呼び起こしてもらい、脳を活性化させる心理・社会的アプローチ。富山県内の博物館では初の試み。
●昔の民具に触れて、脳を活性化
全国でも高齢者の人口比率が高く、急速に高齢化が進む富山県。高齢者がいきいきと健やかに過ごせるように、氷見市立博物館は今年度から市内の介護施設と連携し、「地域回想法」という取組みを進めている。昔の生活用具や農具などの民俗資料を見て触れることで、高齢者に昔の記憶を呼び起こしてもらい、脳を活性化させる心理・社会的アプローチ。認知症の改善や予防にも効果があるとされている。富山県内の博物館では初の試み。
「地域回想法」とは、文字通り、地域で行う「回想法」だ。「回想法」は1960年代、米国の精神科医が高齢者の脳を活性化させるために提唱した援助方法。日本では、北名古屋市歴史民俗資料館が2002年度から「思い出ふれあい(回想法)事業」に取り組み、介護や医療関係者との協働で、地域の社会資源を活用し、人の絆を育み、ネットワークを広げながら、高齢者の介護予防を支援する「地域回想法」という概念を設定した。
氷見市立博物館は1982年の開館以来、氷見を中心とする歴史・考古資料、民俗資料の調査研究と収集・保存、公開に努めてきた。これまでの取組みを一歩進め、市民から寄贈された資料を活用しようと、近年、「地域回想法」に着目し、普及に取り組んできた。今年度は、事前に申請のあった介護施設の利用者・職員の入館料免除、介護施設で「地域回想法」を実践するため、昭和30~40年頃に氷見で使われた民具<おひつ(飯籠)、アルマイトの弁当箱、ワラジ、フカグツ、湯たんぽ、藤箕(ふじみ)など>を集めた「思い出箱」の貸し出し、昔の民具についての施設職員向けの研修の3つに取り組んでいる。これまでに施設利用者・職員の入館は7件、民具貸し出し5件、介護職員研修を1回行った。
●“博物館”と“福祉”という分野の協働
氷見市立博物館の「つくる―氷見の農家のくらし」コーナーには、明治中期に氷見で建てられ、100年ほど居住した茅葺き屋根の民家(農家)が移築再現されている。ニワ(土間)、オイ(広間・茶の間)、カッテ(台所)、ナンド(寝間)、デイ(前座敷)、ニョライサマ(仏間・奥座敷)が並び、明治期から昭和30年代頃まで使われた衣食住や生業に関する民具が展示されている。博物館を訪れた施設の利用者(高齢者)は、薄暗い照明に浮かび上がる民具に懐かしさを感じ、興味深げに見学しているという。
民具貸出先の介護施設からは、「普段、自分からはあまり話さない男性たちが、藤箕やソウケ(ザルの一種)を持って使い方を見せてくれた」、「失語症の女性がオシメを見て、“べんじょの……”と発言し驚いた」、「稲わらの効果が思ったよりあり、自ら縄を編む姿が見られた」、「普段は発語が少ない女性に炭火アイロンを見せると、手にとり、蓋を開けて、“ここに炭を入れる”と答えた」、「今の人は何でも手に入り、買うことができるが、昔は物も少なかったため工夫して使った。昔の人の知恵は素晴らしかったという利用者がいらした」などと感想が寄せられている。
若い世代の介護職員は昔の道具について知らないことも多く、高齢者から教えてもらう機会にもなっている。施設では、介護サービスを受ける、世話をするという関係だが、「地域回想法」の時間では高齢者と介護職員がともに楽しく過ごせる。人生の先輩として尊敬の念を持つことにもつながっているという。
富山県は、高齢者(65歳以上)の人口比率が高い。高齢化率は26.2%(2010年10月)と、全国平均(23.0%)を上回る速さで高齢化が進んでおり(総務省統計局「国勢調査」)、団塊の世代がすべて高齢者となる2015年には、10人に3人が高齢者と見込まれる。
氷見市立博物館では、「“博物館”と“福祉”という分野の協働で新たな可能性が生まれた。「地域回想法」はどこでもできる。県内各地の博物館に地域回想法の取り組みが広がり、高齢者が健康で心豊かに過ごすことにつながってほしい」と話している。
問い合わせ
●氷見市立博物館
TEL.0766-74-8231
FAX.0766-74-5520
http://www.city.himi.toyama.jp/~60510/