トピックス

アーカイブ

2011年 9月 14日 [ トピックス ]

No.523-1:復原された豪農の館「富山県民会館分館 内山邸」


 富山県民会館分館内山邸(国登録有形文化財)の修復工事がほぼ終了し、創建当時の姿によみがえった。江戸期の典型的な豪農屋敷の遺構をとどめた邸宅・庭園は歴史的・文化的な価値が高く、見どころもいっぱいだ。修復工事概成記念事業「内山邸所蔵 文人墨客展Ⅱ~内山家の文人逸峰と外川が遺したもの~」を開催中<10月2日(日)まで>。

▲「アズマダチ」の主屋

●三角の妻面に美しい碁盤の目、アズマダチ

 富山市宮尾にある富山県民会館分館内山邸(国登録有形文化財)の修復工事がほぼ終了し、創建当時の姿によみがえった。修復工事概成記念事業「内山邸所蔵 文人墨客展Ⅱ~内山家の文人逸峰と外川が遺したもの~」、「内山邸修復工事概成展示」などを開催中<10月2日(日)まで>。

 内山家は、大永・享禄(1521~1531)の頃、内山昌峰が宮尾の地を新田開発してから約450年続いた家柄で、藩政時代には農村を監督する十村役を務めた。約3,700坪の広大な敷地に、主屋や土蔵、茶室など延べ約400坪の建物が並び、広大な庭園とともに深遠な趣を漂わせている。建物の大部分が幕末の慶応4年(1868)から明治期に建築され、銘木をふんだんに用いたアズマダチの主屋など、江戸期の典型的な豪農屋敷の遺構をとどめている。

 昭和52年に内山家から県に譲渡され、53年に県民会館分館として開館。平成10年には、邸内の建物14棟すべてが国登録有形文化財に登録された。主屋とともに、土蔵や作業所など農家の暮らしに必要な機能を残しているのが大きな特徴で、現存する江戸期の農家では県内随一の規模を誇る。特に主屋は数寄屋風の造りとなっており、近代和風建築の先駆けとして歴史的な価値が大きい。開墾や農民生活、風俗文化などに関する文献や生活用品等の歴史的資料を数多く所蔵している点も特徴だ。

 建築後140年近くが経過し、傷みが目立つようになったため、平成17年から大規模な修復工事が行われてきた。17~19年度の第1期は、損傷・劣化が著しかった主屋の「桜香の間」の修復や、もみ倉・にわとり小屋の解体修理、20~23年度の第2期には、主屋の西側妻壁の復原、土蔵・にわ(作業小屋)の修復、表門の解体修理などが実施された。

 主屋正面の西側妻壁(三角面)では、修復によって、白壁に垂直の束(つか)と水平の貫(ぬき)でつくる碁盤の目が美しくよみがえった。砺波平野の散居村などでも見られる伝統的な建築様式「アズマダチ」で、気品漂う佇まいが印象的。主屋の月見台は四辺形で、ぬれ縁からさらに4尺外へ軒庇が延びており、富士形の巨石などを配置した回遊式庭園を見渡すことができる。

 かつて米や夜具などを納めたと伝えられる上・中・下の蔵、味噌蔵の土蔵は、背面腰の鼠漆喰仕上げが美しく、白漆喰とのコントラストも目を引く。子どもたちが参加して壁塗り体験学習も行われた、もみ倉は、漆喰の壁と背面腰の下見板の組み合わせが秀逸だ。

●内山家の所蔵品や欄間職人の仕事部屋を拝見

 修復工事概成記念事業「内山邸所蔵 文人墨客展Ⅱ~内山家の文人逸峰と外川が遺したもの~」<会場:大広間、奥座敷>では、歌人、詩人として名を馳せた内山家7代当主・逸峰(1701~1780)と12代当主・松世<号:外川>(1864~1945)の和歌と句、交流のあった文人の書籍、掛け軸、屏風など、内山家に伝わる所蔵品が展示される。県立図書館に保管されている逸峰の紀行文の特別展示もあるのでぜひ見学を。9月18日(日)13:00~13:30には、富山県歌人連盟の米田憲三会長を講師に迎え、解説会が開かれる。

 「内山邸修復工事概成展示」<土蔵(上の蔵)、もみ倉>では、これまでの修復工事の様子を写真などで紹介。9月18日(日)13:30~14:30には、修復に携わった職藝学院(富山市)の上野幸夫教授による解説会が開かれる。なお、県では、文化財の伝統的技法の伝承を図ることを目的に、同学院の学生に実習の場を提供している。

 「内山家欄間職人の仕事部屋復元展」<にわ(作業小屋)横仕事部屋>では、内山外川の代に主屋の座敷、書院の間などの欄間を手掛けた“稲垣才次郎”の技に触れられる。第2期の修復工事では、同学院の指導・助言により、才次郎の仕事部屋が復元された。今回は、学生らによる欄間の組子(模型)や道具類(ノミ、カンナ)なども展示。現代に受け継がれている職人の技を見ることができる。

 このほか、農村の文化遺産ともいえる農機具類約40点が、にわ(作業小屋)で展示される。使われなくなって100年を経過する農機具も多い。農機具を通して、大地を相手に働く農民の姿をイメージしたい。

 富山県生活環境文化部文化振興課では、「復原された豪農の館・内山邸へぜひいらしてください。“慶応4年”、“内山年彦”(11代当主)などの文字が記された主屋の創建当初の棟札など、貴重な資料をご覧いただけます」と話している。


▲主屋の創建当初の棟札


問い合わせ
●富山県生活環境文化部文化振興課
TEL.076-444-3454
FAX.076-444-4438
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1718/

●富山県民会館分館 内山邸
TEL&FAX.076-432-4567
http://www.kenminkaikan.com/uchiyama/uchiyamaindex.htm

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑