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2010年 2月 3日 [ トピックス ]

No.440-2:小水力発電で地球環境にやさしいクリーンエネルギーを


 世界有数の急流河川をもち、また年間を通して豊富な水量に恵まれた富山県は、特に水力発電の開発に先駆的に取り組んできた、クリーンエネルギーのパイオニア県。県内では、昨年12月に稼動した仁右ヱ門用水発電所(立山町)など、農業用水を利用した小水力発電施設の整備が進んでいる。

▲安川発電所(砺波市)

●2015年度末までに3〜4カ所の小水力発電施設を整備

 世界有数の急流河川をもち、また年間を通して豊富な水量に恵まれた富山県は、特に水力発電の開発に先駆的に取り組んできた、クリーンエネルギーのパイオニア県。地球温暖化防止に向けて、世界規模で水力や太陽光、風力、バイオマスなどで生み出されるクリーンエネルギーに関心が高まるなか、富山県ではこれらの新エネルギーを活用する動きを加速させている。県では2010年度の温室効果ガスの排出量を1990年度比で6%削減する計画。また、2010年度の新エネルギーの導入目標3%(石油など一次エネルギー総供給量に占める新エネルギーの割合)に向けて、公共施設や民間施設への導入促進、普及・啓発に取り組んでいる。

 千葉大学公共研究センターとNPO法人・環境エネルギー政策研究所が2008年3月現在のデータを基に調査した結果(『永続地帯2008年版報告書』)によると、富山県のクリーンエネルギーの自給率は16.76%で全国2位、小水力発電(※同報告書の調査は1 万kW以下が対象)の供給量も全国2位となっている。小水力発電とは、ダムなどの大規模な設備を使わず、身近な河川や農業用水の小さな落差で発電する方式で、最大出力は1,000kW以下。水の落差を利用するため、発電時の二酸化炭素排出量はゼロで、施設整備の際の二酸化炭素排出量も少ない。ダムなどの大型施設に比べると、短期間に低費用で設置できることや、太陽光発電といった他のクリーンエネルギーと比べると電力供給が安定しているなど、利点も多い。県内には、県、北陸電力、土地改良区などが運営する14カ所の小水力発電所がある。

 3,000m級の峰々から駆け降りてくる豊富な水、河川上流部で一括取水されて、縦横に張り巡らされた農業用水‥‥。県内では農業用水を利用した小水力発電施設の整備が進んでいる。1987年12月に全国に先駆けて運転を始めた安川発電所(砺波市)をはじめ、愛本新発電所(黒部市)、臼中発電所(南砺市)、示野発電所(砺波市)と県が整備し、土地改良区が管理している小水力発電所が4カ所ある。小水力発電によって得られた電力でゲートの開閉や農業用水利施設の管理に利用できるほか、発電施設と共用している水路などの維持管理費に充てることができるなど、大きなメリットがある。県では、2015年度末までに山田新田用水(南砺市)など3〜4カ所の小水力発電施設を整備する計画で、小水力発電の先進県として積極的な展開を図ることにしている。

●仁右ヱ門用水発電所稼動で年間約2,600tの二酸化炭素排出削減

 立山連峰を仰ぐ、田園地帯に建つ仁右ヱ門用水発電所(立山町東大森)は、常東用水土地改良区が管理する常東合口用水支線・仁右ヱ門用水路(常願寺川水系)の遊休落差を利用した発電所で、昨年12月に稼動。取水地点から毎秒2.4立方mの水を埋設管で1.4km下流まで導水。取水地点と発電地点の高低差24.48mを利用し、水車を回すことで最大出力460kWを発電する。年間供給電力量は約350万kWhで、一般家庭の約840軒分の消費量に相当。この分で石油火力発電の出力を抑えたとすると、ドラム缶約4,000本の原油使用を削減し、年間約2,600tの二酸化炭素の排出削減につながる。

 農業用水路を利用した県営の発電所としては全国2例目。発電した電力は北陸電力に売電する。電力会社に対して、その販売電力量の一定割合で小水力、風力、太陽光などの新エネルギーの導入を義務付けた「RPS法」(2003年4月施行)の施行後では全国で初めての小水力発電所となる。

●らせん水車発電機、産学連携で開発

 搬送設備・板金加工などを手掛ける(株)北陸精機(魚津市)が富山県立大学との産学連携で、小水力発電用のらせん水車発電機「パワーアルキメデス」を開発した話題も紹介しよう。同製品は農業用水の1〜5mの低落差を利用し、らせん水車を回すことで1〜10kWの発電を可能した。農業用ビニールハウスの照明や空調、低温貯蔵庫の電源利用のほか、一般家庭用電源、電気自動車の充電などの用途も将来的に見込まれる。設置する用水によって落差や水量が異なるため、さまざまな条件下で稼働させながら、発注者と発電容量などを決めることにしている。
 
 らせん水車は、シャフトに取り付けたらせん状の羽根が水を受けて回転する仕組み。もともと大正時代に砺波市の鍛冶職人が考案したもので、脱穀作業や藁加工作業など農作業の動力源として全国に普及したが、戦後、モーターなどの登場にとって姿を消した。北陸精機では2005年から県立大学と共同研究に取り組み、5年をかけて実用化にこぎつけた。同社では、「富山をクリーンエネルギーの先進地にしたいと開発に取り組んできた。中山間地の農業振興に役立てたい」と話している。


▲仁右ヱ門用水発電所


問い合わせ
「新エネルギー」の導入について
●富山県商工労働部商工企画課 新産業科学技術班
TEL.076-444-3245
FAX.076-444-4401
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1301/

「永続地帯2008年版報告書」について
●千葉大学公共研究センター(倉阪研究室)、NPO法人・環境エネルギー政策研究所
http://sustainable-zone.org
E-mail contact@sustainable-zone.org

「農業用水を利用した小水力発電」について
●富山県農林水産部耕地課
TEL.076-444-3377
FAX.076-444-3437
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1602/

「仁右ヱ門用水発電所」について
●富山県企業局電気課
TEL.076-444-2147
FAX.076-444-2155
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/7104/

「らせん水車発電機・パワーアルキメデス」について
●(株)北陸精機
TEL.0765-32-8231
FAX.0765-32-8963
http://www.s-hokuriku.com/company.html

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