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2010年 6月 23日 [ トピックス ]

No.460-2:富山からアジアへ、国境を越えて広がる「配置薬システム」


 富山発祥の「配置薬(置き薬)システム」がアジアで広がりをみせている。国際的な援助活動を行っている日本財団(東京)の支援によって、2004年にモンゴル、09年にタイ、ミャンマーで導入され、今年度は新たにベトナムなどで導入が計画されている。

▲モンゴル

●家庭でのセルフメディケーションに

 富山発祥の「配置薬(置き薬)システム」がアジアで広がりをみせている。国際的な援助活動を行っている日本財団(東京)の支援によって、2004年にモンゴル、09年にタイ、ミャンマーで導入され、今年度は新たにベトナムなどで導入が計画されている。

 江戸時代から300年余の伝統を誇る、富山の配置薬システムは、「先用後利」に特徴がある。これは、薬の入った薬箱を家庭に置いてもらい、次に訪問したときに使った分だけの薬の代金を回収し、薬を補充していく独特のシステムだ。04年、保健医療体制の充実を目指すモンゴル政府から相談を受けた日本財団がこのシステムに着目し、県内製薬メーカーや県モンゴル友好親善協会などの助言を受けてモンゴルで開始。07年8月には、WHO・日本財団共催の伝統医学国際会議(モンゴル・ウランバートル)で配置薬システムが紹介され、他のアジア諸国でも関心が高まった。この会議には、富山県から職員1名が出席し、配置薬システムをPRした。

 モンゴルでは、日本財団の助成により設立された「ワンセンブルウ・モンゴリア」(モンゴル政府公認公益法人)が配置薬システムを活用した「モンゴル伝統医療普及プロジェクト」を実施。ボルガン県、ドンドゴビ県など7県26郡1万5,000世帯(約7万5,000人)に、解熱薬、胃腸薬など12種類のモンゴル伝統医薬品を入れた薬箱を配布している。薬箱1キットには、体温計や包帯、脱脂綿、バンドエイド、消毒用アルコールなども入っており、価格は約10米ドル。地方病院の医師・保健師が遊牧民の居住地を訪問し、薬の配置、代金の回収にあたっており、代金回収率は93%(06〜08年平均)と高い。

 タイでは増大する医療費支出の抑制を目指し、昨年1月から「伝統医療置き薬事業」を実施。国内約1,400世帯に、20種類のタイ伝統薬の入った薬箱<価格1,000バーツ(約32米ドル)>を配布。国内のヘルスボランティア(約80万人登録)が薬の代金回収と補充を担う。現在、タイの名門大学・タマサート大学の協力で、置き薬システムの有効性の検証が進められており、6月末までにデータ分析・評価・報告書が作成される予定だ。

●ミャンマー独自にシステムをアレンジ

 昨年2月から「伝統薬置き薬事業」を試験導入しているのがミャンマー。配置薬システムを独自にアレンジし、各家庭ではなく、村落単位に、7種類の伝統医薬品の入った薬箱を配布。それを住民が共同利用しているのが特徴。2011年までに全14州の各500村、合計7,000村に薬箱を配布する計画だ。

 ラオスでは2000年からユニセフやJICAなどの支援により、ラオス全土の5,648村に西洋医薬品14〜33種類の入った応急薬箱を配布しており、日本財団では、この薬箱に9種類の伝統医薬品を組み込む、ラオス保健省のパイロットプロジェクト(2010年度予定)への支援を検討している。
 
 ベトナムでは、薬を入手しにくい山岳地帯や貧困地域に配置薬システムの導入(2010年度予定)を計画。伝統医薬品、配置薬システムの効果をはかるデータの採取、分析なども検討している。

 6月5日には、「富山配置薬の国際展開と今後の発展のためのシンポジウム」(主催:日本財団、富山県薬業連合会、後援:富山県)が富山市の高志会館で開かれ、モンゴル、タイ、ミャンマーの伝統医療関係者が配置薬システムを導入した背景や現在の利用状況などを発表した。モンゴルのワンセンブルウ・モンゴリア専門委員会のシャラウ・ボルド委員は「伝統医薬品と配置薬システムを組み合わせたことで、地方の遊牧民にも利用しやすい医療サービス体制ができた」、タイ保健省のDr.ブンチャイ・ソンブンソック総括監察官は「タイでの置き薬システムの有効性を検証するデータを分析中。いい結果が出て、隣国のカンボジアやラオスでもシステムが広まっていってほしい」、ミャンマー保健省・前伝統医療局長のティンニュン氏は「村落単位で薬箱1つの配布だが、村人の健康維持に役に立っている」と現状を話した。

 日本財団では「アジアでは、医療を満足に受けることができず、薬も十分にない貧困地域がある。必要なときに利用できる配置薬は安心のシステムだ。モンゴルから導入が始まったシステムは、アジアで拡大しつつある。定着させていきたい」と話している。富山県薬業連合会では「シンポジウム開催前にモンゴル医師研修団とタイ保健省伝統医療置き薬関係者が富山市内の製薬工場を見学したり、配置薬のベテラン販売員と家庭を訪問し、薬の補充や代金回収などを体験したりした。熱心に見聞きされている姿が印象的だった。富山で生まれ、300年余の伝統を誇る配置薬システムがアジアに広まるのはうれしいことだ。国内の配置薬業が再評価されるきっかけにもなれば」と話している。


▲ミャンマー


問い合わせ
「アジア諸国での配置薬システムの導入」について
●日本財団・国際協力グループ
TEL.03-6229-5157
FAX.03-6229-5180
http://www.nippon-foundation.or.jp/

「富山発祥の配置薬システム」について
●(社)富山県薬業連合会
TEL.076-432-2765
FAX.076-432-2767
http://www.toyama-kusuri.jp

●富山県厚生部くすり政策課
TEL.076-444-3236
FAX.076-444-3498
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1208

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