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2011年 5月 18日 [ トピックス ]
No.506-1:世界初、女王蜂成長の謎を解明!
富山県立大学工学部生物工学科の鎌倉昌樹講師(農学博士)は、ミツバチの幼虫を女王蜂に成長させるタンパク質「ロイヤラクチン」を世界で初めて発見し、その作用メカニズムを突き止めた。研究成果をまとめた論文「Royalactin induces queen differentiation in honeybees」が、英国科学雑誌『ネイチャー』の4月24日号・電子版に掲載されている。
●ローヤルゼリーに含まれる「ロイヤラクチン」を発見
富山県立大学工学部生物工学科の鎌倉昌樹講師(農学博士)は、ミツバチの幼虫を女王蜂に成長させるタンパク質「ロイヤラクチン」を世界で初めて発見し、その作用メカニズムも突き止めた。研究成果をまとめた論文「Royalactin induces queen differentiation in honeybees」(和文タイトル:「ミツバチの女王蜂分化を誘導する因子ロイヤラクチンの発見」)が、英国科学雑誌『Nature』(ネイチャー)の4月24日号・電子版に掲載されている。
ミツバチは女王蜂と働き蜂からなる階級社会(カースト)を形成しており、産卵するのは女王蜂だけ。女王蜂は、すべて雌である働き蜂と同じ遺伝子を持ちながら、働き蜂に比べて、体の大きさが約1.5倍、寿命は約20倍あり、1日に約2,000個を産卵する。幼虫のあいだに働き蜂が分泌するローヤルゼリーを摂取した個体のみが女王蜂になることは知られてきたが、ローヤルゼリーのどの成分が作用するのかこれまで謎だった。
鎌倉講師は、新鮮なローヤルゼリーと40℃で30日間保存したローヤルゼリーのそれぞれの成分を比較し、含まれるタンパク質の量が異なることを突き止めた。幼虫に与える実験で、タンパク質「ロイヤラクチン」だけが、細胞を増加させるために働くタンパク質「上皮増殖因子受容体」を介して、女王蜂に成長させることを明らかにした。
さらに、多数の変異体が存在するショウジョウバエに「ロイヤラクチン」を投与したところ、体長や産卵数が約2倍に増え、寿命が長くなることも確認。「ロイヤラクチン」がミツバチだけでなく、種を超えてハエにまで作用し、体長や寿命などに変化をもたらすことを解明した。
●今後、蜂群崩壊症候群の解明へ
ミツバチのカースト分化はハチの生態の根幹をなす現象であり、女王蜂成長のメカニズムが明らかになったことで、ミツバチを安定供給するための飼育法の開発や、ミツバチが突然いなくなる「蜂群崩壊症候群」の解明につながることが期待できるという。今後、愛知県の養蜂家と連携し、研究室で成長させた女王蜂が働き蜂のいる巣箱で本来の役割を果たせるか実験する。
鎌倉講師は、京都大学大学院農学研究科食品工学専攻修士課程を修了後、民間の研究所などを経て、平成15年に富山県立大学工学部助手に。民間の研究所でローヤルゼリーの研究開発に携わり、県立大学着任後にミツバチの研究に取り組んだ。専門は、発生生物学、神経化学、生化学、細胞生物学。「ミツバチのカースト分化誘導機構の解明」、「Royal jelly由来新規肝細胞増殖因子様タンパク質royalactinの生物学的機能の解析」、「脳内生理活性物質代謝異常の解析と脳機能改善食品の開発」などを研究課題としている。
鎌倉講師は「ロイヤラクチンは、同じ遺伝子型をもつ個体を、体長、寿命などまったく異なる表現型をもつ個体へと誘導する画期的な因子。生物は遺伝子で決まるようにいわれるが、その後の生育環境で生態が変化することを示せた。今後、女王蜂と働き蜂の脳の構造の違いや、違いが生まれる理由について探り、蜂群崩壊症候群などを解明していきたい」と話している。
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