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2011年 1月 12日 [ トピックス ]
No.489-2:家持のことならこの一冊!『万葉集をつくった大伴家持 大事典』
奈良時代、越中国守として、5年間(746~751)越中で過ごした万葉歌人・大伴家持。『万葉集』の編纂者と考えられ、越中でも数多くの歌を詠んだ家持の生涯や歌、ゆかりの地などを網羅した『万葉集をつくった大伴家持 大事典』(小野寛編:笠間書院)が刊行された。「大伴家持Q&A」、「総説―家持歌の到達点」など6章からなり、研究書として、また読み物としても手に取れる一冊だ。
●入門者にもわかりやすい「大伴家持Q&A」
奈良時代、越中国守として、5年間(746~751)越中で過ごした万葉歌人・大伴家持。『万葉集』の編纂者と考えられ、越中でも数多くの歌を詠んだ家持の生涯や歌、ゆかりの地などを網羅した『万葉集をつくった大伴家持 大事典』(小野寛編:笠間書院)が刊行された。駒澤大学名誉教授で、高岡市万葉歴史館・館長の小野寛さんと大学時代の教え子らが10年近くかけて完成させた。四六判、852頁(5,040円)にもなる大著で、家持に関する事典は初めてという。
冒頭の「大伴家持Q&A」では、“生まれ年はいつか”、“お母さんは誰か”、“『万葉集』の編纂にどうかかわったか”など、家持の人物像を知るための情報をわかりやすくまとめているのが特徴。“越中に着任したのはいつか”では、越中守の任命が『続日本紀』に天平18年(746)6月21日とあることや、官人の休暇規定、奈良から越中国までの行程、29歳の初めての地方任務にはやる家持の気持ちなどから判断し、7月10日ごろに都を発ち、20日ごろに着任と、推理を展開しており、読む者を推理小説さながらに万葉の世界へと誘ってくれる。
「総説―家持歌の到達点」では、“歌人家持の誕生”、“越中守赴任”、“二上山の賦”、“越中秀吟”などについて取り上げた。「女郎花咲きたる野辺を行きめぐり君を思ひ出たもとほり来ぬ」、「ぬばたまの夜は更けぬらし玉くしげ二上山に月傾きぬ」、「もののふの八十娘子らが汲みまがふ寺井の上のかたかごの花」など、数々の歌に焦点を当てながら、家持の歌の世界、美の世界を紹介している。
万葉集全4,536首のうち、家持の歌は473首(越中時代に223首)と最も多い。大事典では、473首すべてを収載。歌番号順や、巡行、遊覧、宴席など作られた場・状況ごとにも分類している。作品にみられる「ほととぎす」や「うぐひす(鶯)」、「あしつき」、「つまま」、「かたかご」など動物・植物、「朝影」「雪」、「雲」など天象・気象についての解説もあり、歌の理解もより深まる。動物・植物の項では細密な挿画も楽しめる。最終章では、全句索引が設けられており、歌の検索に便利だ。全作品を句ごとに切りはなし、所在の歌番号と、その句が歌の何句目であるかを示し、その句の訳文と原文も添えている。
このほか、家持の足跡を辿れるよう、ゆかりの地図や全国各地に建つ歌碑356基を掲載。家持の年譜・家系図、一族、友人など周辺人物144人も紹介している。
小野寛館長は「家持を知ることは、万葉集成立の謎の解明に近づくことである。家持がこれまでどのように研究されてきたのか、古代から現代までの研究史も辿った。大事典は、研究者が万葉集や家持を調べる際に活用できる。また、一般の人は読み物としても楽しめる。ぜひ手に取ってほしい」と話している。
●高岡市万葉歴史館の企画展「越中国と万葉集」へ
奈良時代、越中国の国府が置かれていた高岡市伏木に建つ高岡市万葉歴史館。現在開催中の第6回企画展「越中国と万葉集」についても触れてみよう。同展示では、前田家ゆかりの『桂本万葉集』、『金沢本万葉集』をはじめ、加賀藩の越中万葉研究などについて、パネルや展示品によって紹介している。
『万葉集』は奈良時代末ごろに編纂されたと推定されているが、その原本は失われ、現在では、平安時代中期以降に書写された「古写本」からその姿を確かめるほかない。『万葉集』の現存最古の写本である『桂本万葉集』は前田家によって伝えられたもので、これをおさめる桐箱のふたの内側には、「芳春院(初代藩主利家の妻)」が長年秘蔵していたことが記されている。その後、三代藩主利常の娘・富が桂宮家二代の智忠親王のもとに輿入れしたときに、婚礼調度の一つとして持参。明治14年に明治天皇に献上され、現在は宮内庁蔵となっているという。解説パネルを読むと、写本の流転に歴史の浪漫を感じずにはいられない。
高岡市万葉歴史館では、「桂本万葉集のような完全な写本は数少ない。なぜなら、美術品として床の間に飾る掛軸や習字の手本などにするために切り取られたからだ。当館でも切り取られた“断簡”の複製品を所蔵している。館内や企画展の解説を常時行っているので、気軽に声をかけてほしい。『万葉集をつくった大伴家持 大事典』は全国の書店、万葉歴史館で販売中」と話している。
問い合わせ
●高岡市万葉歴史館
TEL.0766-44-5511
FAX.0766-44-7335
http://www.manreki.com