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2008年 4月 9日 [ トピックス ]

No.347-2:キクザクラの新品種と判明!「ヒミクヅロキクザクラ」と命名


 桜前線が日本列島を北上中。富山県内のサクラの名所からも満開を伝える便りが届くなか、氷見市上久津呂(かみくづろ)にある「上久津呂のツバキ・キクザクラ」が世界で1本しかない新品種だったというニュースが飛び込んできた。樹高約12m、幹回り約2m、樹齢約200年の古木。氷見市と富山県中央植物園では、今年度から接ぎ木や挿し木などで後継樹育成に取り組む。


●手まりのような可愛らしい花

 桜前線が日本列島を北上中。富山県内のサクラの名所からも満開を伝える便りが届くなか、氷見市上久津呂(かみくづろ)にある「上久津呂のツバキ・キクザクラ」が世界で1本しかない新品種だったというニュースが飛び込んできた。

 八幡宮の旧社地にあるこのサクラは、樹高約12m、幹回り約2m、樹齢約200年の古木。サクラの幹がツバキの幹を下部で取り囲むように伸びた「合体木」で、昔から土地の人々によって神木として崇められてきた。氷見市指定の天然記念物、県の「富山さくらの名所」にもなっている。

 花は色むらのないピンク色。一つの花は直径約4cmと大きめで、110〜160枚の花弁をつける。中央部が盛り上がり、手まりのような可愛らしい姿が印象的だ。100枚以上の花弁をつけるなどの特徴から「キクザクラ」のグループとされてきたが、これまで学術的に品種が特定されていなかった。そこで、平成18年に富山県中央植物園の大原隆明主任が調査を開始。「ライコウジキクザクラ」、「ケンロクエンキクザクラ」など、キクザクラと確認されている25品種と比較するため、国立遺伝学研究所、日本花の会結城農場など、国内7つの施設でサンプリング調査を実施。花や葉、がくなどを詳細に比較した結果、どの品種にもあてはまらない新品種と判明した。氷見市と県中央植物園で協議し、「ヒミクヅロキクザクラ」と品種名を付けた。ちなみにキクザクラは、均整のとれた手まりのような美しい花を咲かすことから、サクラの中の究極の園芸品種と呼ばれている。

●ゴールデンウイーク頃に開花する遅咲き

 ヒミクヅロキクザクラは遅咲きで、開花はゴールデンウイーク頃。平成17年には5月10日頃に開花した記録もある。葉が開花前に出るため、ピンクの花と緑の葉の美しいコントラストを楽しむことができる。葉の縁はのこぎりの歯のような形状で、ぎざぎざの先が細い糸のように伸びるのも特徴だ。これは野生種のオオシマザクラにもみられる特徴で、ヒミクヅロキクザクラの誕生にオオシマザクラが関与しているのではないかと大原主任はみている。

 ヒミクヅロキクザクラは能越自動車の建設ルート上にあったことから、伐採の危機もあったが、氷見市や地元の要望で道路の設計が変更され、残された経緯がある。氷見市と県中央植物園は、今年度から接ぎ木や挿し木などで後継樹育成に取り組む。

 県中央植物園では、4月29日(祝・火)13:30〜15:30に「桜の新品種、氷見久津呂菊桜」と題して、同園において講演会を開催する (参加申込み不要)。また、園内のサンライトホールでは、30日(水)までヒミクヅロキクザクラのパネル展示が行われているので、興味のある方はぜひ来園を。なお、県中央植物園のサクラのコレクションは全国有数の規模で、園内にはコシノヒガンザクラ、ソメイヨシノなど、約100品種が栽培されている。

 県中央植物園の大原主任は、「理由ははっきりとしないが、キクザクラ25品種のうち、半分ほどが北陸を発祥としている。なかでも能登地方に多く分布しており、26番目の品種となるヒミクヅロキクザクラの場所も能登に近い。北陸・能登の気候・風土がキクザクラの生育に合っているのかもしれない。ヒミクヅロキクザクラは江戸時代の園芸文化を今に伝える生き証人であり、文化遺産ともいえる。花が手まりのような形で色も濃いため、観賞価値もとても高い。大切に守りながら、未来へ受け継いでいかなくてはならない」と話している。




問い合わせ
●富山県中央植物園
TEL.076-466-4187
FAX.076-465-5923
http://www.bgtym.org/

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