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2008年 4月 9日 [ トピックス ]
No.347-1:「生稲わらサイレージ」の技術開発に成功!
富山県農林水産総合技術センター・畜産研究所は、田んぼで刈り取ったばかりの生稲わらを乾燥させず、水分を含んだまま乳酸菌製剤を混ぜて発酵させる肉牛用の飼料「生稲わらサイレージ」の技術開発に成功した。
●生稲わらを活用し、肉牛用の飼料に
富山県農林水産総合技術センター・畜産研究所は、田んぼで刈り取ったばかりの生稲わらを乾燥させず、水分を含んだまま乳酸菌製剤を混ぜて発酵させる肉牛用の飼料「生稲わらサイレージ」の技術開発にこのほど成功した。
一般的に肉用肥育牛の飼料には、トウモロコシなど穀物主体の濃厚飼料が約80%、乾燥稲わらといった粗飼料が約20%使われている。稲わらは、霜降りの良質な牛肉に仕上げるためには欠かすことのできない飼料だが、稲刈り後に晴天が続かないと乾燥したものが回収できない点や、回収時の労働力不足などの理由から、肉用牛農家の稲わらの自給率は富山県では約17%(平成18年度)と低く、稲わらの代替品として牧草の茎などを海外から輸入しているのが現状だ。輸入に頼り過ぎると、飼料としての安全性などを懸念しなければならないことや、近年トウモロコシなどの穀物がバイオエタノールの材料として使われはじめたために穀物価格が上昇していることから、地域飼料資源などを活用した飼料自給率の向上が緊急の課題となっている。
そこで、畜産研究所では、天候の影響を受けにくい刈り取り直後の生稲わらを利用した「生稲わらサイレージ」の調製技術の開発に平成18年度から取り組んできた。サイレージとは、牧草などを密封し発酵させ、貯蔵した飼料のこと。畜産研究所では、コンバインから排出された生稲わらを牧草用機械で回収するとともに、乳酸発酵を促進させる乳酸菌製剤を添加しロール状にしてから、梱包用フィルムで密封する技術を開発。約13カ月と長期間安定した品質で貯蔵できる方法を確立した。
●稲作県・富山の特徴を生かした肉牛の生産を
畜産研究所では、生後20カ月から26カ月の肥育後期の黒毛和牛に、生稲わらサイレージを与えたところ、乾燥稲わらに比べて1日あたりの飼料摂取量が増え、体重の増加量も多いというデータが得られている。また、肉質等級や格付け、枝肉(皮、内臓などを取り除いたあとの骨つきの肉)重量、脂肪交雑などについても乾燥稲わらを与えた場合と同等かそれ以上の成績となっている。
生稲わらに生米ぬかや配合飼料を混合して密封貯蔵し、発酵TMR(飼料)を調製する取り組みが行われていることも話題だ。この発酵TMRは、開封後の品温が変化しにくく、安定した品質で貯蔵できることや、乾燥稲わら・濃厚飼料を分離して与えるよりも肉牛の嗜好性が高まり、採食量も増加するといったデータも得られている。
畜産研究所で生稲わらサイレージの研究に携わってきた飼料環境課の金谷千津子主任研究員と酪農肉牛課の高平寧子主任研究員は、「稲わらを生のままサイレージ化できるので、安定供給が可能になる。乾燥させる必要がないので手間もかからず、飼料の低コスト化にも結びつく。稲作県・富山の特徴を生かした肉牛の生産、資源循環型の農業に貢献できるのではないか。今後は、肉の霜降りなどに影響を与えるβ−カロテン含量や発酵TMRを与えた牛の肉の脂肪酸組成(風味に関係する)などの研究を進め、生後14カ月〜19カ月の肥育中期から与えられる発酵TMRの調製技術の開発に取り組みたい」と話している。
問い合わせ
●富山県農林水産総合技術センター・畜産研究所
TEL.076-469-5921
FAX.076-469-5945
http://www.les.agri.pref.toyama.jp/