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2007年 3月 7日 [ トピックス ]
No.290-1:冬咲き性のサクラの新品種、県東部で発見!
サクラといえば、春に咲くイメージがあるが、このほど富山県東部で冬咲き性のサクラ(園芸品種)の新しい品種が発見された。一重咲きで、蕚筒(がくとう)下部が膨らまずに細長く、無毛である点などが特徴。
樹齢は数十年~100年近くで県東部地域の独自の品種である可能性が高い。
●フユザクラに類似した品種
サクラといえば、春に咲くイメージがあるが、品種によっては厳冬期に咲くものや、秋と春に咲くものなどがある。これら冬咲き性のサクラの園芸品種としては、これまでにフユザクラ、シキザクラ、ジュウガツザクラ、フダンザクラ、コブクザクラ、アーコレードなど8品種が国内で報告されているが、このほど富山県東部で新しい品種が発見された。3月3日(土)に東京都内で開かれた日本櫻学会(日本さくらの会主催)で富山県中央植物園の大原隆明主任が発表した。
発見したのは、サクラの保存活動などを行っている「とやまさくら守の会(小原耕造会長)」のメンバーの武田宏さんと八木秀治さん。2006年2月に県東部の上市町(2カ所)と黒部市(1カ所)でこれまでに報告されていた冬咲き性のサクラとは外見上で異なる印象を受けるサクラを見つけた。そのサクラは一重咲きで、蕚筒下部が膨らまずに細長く、無毛である点、蕚片に明らかな鋸歯がない点などが特徴だった。一重咲きという点では、フユザクラ、シキザクラ、フダンザクラと共通していたが、蕚筒が無毛である点でシキザクラと、蕚片の形状においてフダンザクラと明らかに異なり、フユザクラに類似していた。
県中央植物園に報告後、大原主任も加わり、4月に花、6月~8月に葉を採集し、形態調査を実施。また、県中央植物園と県林業試験場で栽培されているフユザクラについてもサンプリングと形態調査を行った結果、両者の間で蕚筒、蕚片、花弁の幅と形状、葉の裏面の色、葉縁の鋸歯の深さや形状に明らかな違いがあることが判明。既知の冬咲き性品種のいずれとも異なる未報告の品種だと判断されたという。
●サクラでは珍しい、4枚の花びら
新品種の樹高は大きいもので約5m、幹の太さは約20cm。10月下旬に花を咲かせ、11月中・下旬に開花のピークを迎えた後、冬季もちらちら咲き続け、ふたたび春に満開を迎える。花の盛りの頃は花びらが純白だが、終わりに近づくにつれてピンク色になるという。
サクラの花弁数は基本形が5枚だが、新品種では4枚の花が高い頻度で現れており、これはフユザクラの特徴に類似している。また、葉の裏面が白色を帯びることや、葉縁の鋸歯がやや内向きで低いことはヤマザクラと共通していることから、フユザクラとヤマザクラの交雑により生じたものがクローン増殖された可能性があるという。分類学上の扱いや品種名については今後検討される予定だ。
とやまさくら守の会の最近の調査では、先述の上市町の2カ所、黒部市の1カ所のほか、上市町1カ所、立山町4カ所、魚津市1カ所、黒部市1ヶ所でも新品種が確認されている。このほか、富山市科学文化センターの標本庫には、滑川市、舟橋村で1950年代に採集された標本があることがわかっている
県中央植物園の大原主任は「県西部ではこの品種を発見することはできず、県東部地域の独自の品種である可能性が高い。植栽されてから数十年のものが多かったが、ある個人宅では83歳の家人が子どもの頃には庭にあったと話してくれたことから、100年近くに達すると推定できるものもある。それぞれのサクラは秋や冬に咲く珍しい品種として、家族や地域の人たちに愛され、大切に守られてきたようだ」と話している。
問い合わせ
●富山県中央植物園
TEL.076-466-4187
FAX.076-465-5923
http://www.bgtym.org/