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2008年 8月 13日 [ トピックス ]

No.365-1:夢の青いチューリップ誕生へ、大きく前進!


 富山県農林水産総合技術センター農業研究所の農業バイオセンターは、青いチューリップの開発に向け、細胞を青色にする分子メカニズムを解明した。今年6月に特許申請しており、球根の培養細胞に遺伝子を組み込み、青いチューリップの開花を目指す。

▲昭和55年に富山県が育成した品種「紫水晶」は、花底部に青色をもつ。この花の青色化遺伝子を特定した。

●青色化遺伝子を特定

 富山県農林水産総合技術センター農業研究所の農業バイオセンターは、青いチューリップの開発に向け、細胞を青色にする分子メカニズムを解明した。今年6月に特許申請しており、球根の培養細胞に遺伝子を組み込み、青いチューリップの開花を目指す。

 世界中で約2,000品種が栽培されているチューリップ。赤、白、黄、紫など花色は多彩だが、青いチューリップは存在しない。近年、“青いバラとカーネーション”が企業で開発され話題となったが、厳密には青紫色で、真の青色には至っていないのが現状だ。

 農業バイオセンターの荘司和明副主幹研究員らの研究チームは、花弁(花びら)全体は紫色だが、花底部に青色をもつ品種「紫水晶」(昭和55年富山県育成品種:農林12号)に着目し、平成16年から研究を進めてきた。

 まず、花弁の紫色と花底部の青色は同一の色素であることが判明。その後の研究で、同一色素だが、鉄イオンと結びつくことで花底部の青色が作り出されることを突き止めた。そして、数万個の遺伝子を解析した結果、2つの青色化遺伝子を特定。紫色花弁の1つの細胞にこの2つの遺伝子を組み込んだところ、細胞全体がマリンブルーに、1つの遺伝子だとスカイブルーになることを実証した。これらの遺伝子が花弁全体で作用すれば、青い花弁をもつチューリップになる可能性がある。

●新たな富山ブランドの開発に向けて

 現在、球根の培養細胞に遺伝子を組み込み、細胞を選抜し、小球根を育てる組み換え体作出技術の開発に取り組んでいる。その後、遺伝子を組み込んだ球根を屋内で太らせていく計画だ。ただ、チューリップは培養効率が低く、培養法の改善など、開花促進技術の開発も進めなければならない。遺伝子の組み込みから球根を太らせ、開花するまでには少なくとも4〜5年かかり、開花して初めて花弁全体が青色かどうかがわかる。

 農業バイオセンターの新田朗所長と荘司副主幹研究員は「これまでの研究によって青色化遺伝子を特定し、紫色花弁細胞へこの遺伝子を入れると青色になることを実証した。青いチューリップの実現に向けて、大きく前進したといえる。新たな富山ブランドとして、地域農業振興のみならず、観光振興にも役立てられるよう、誕生に向けて研究を進めていきたい。青いチューリップが北陸新幹線の開業に間に合うよう、そして多くの観光客の皆さんを出迎えできるよう、頑張りたい」と話している。

 なお、農業バイオセンターでは、この他にも、先端技術を活かし、機能性に富んだ新形質米の開発、水稲・チューリップに関する有用遺伝子の単離などの課題に取り組んでいる。


▲「紫水晶」の花弁は紫色


問い合わせ
●富山県農林水産総合技術センター農業研究所・農業バイオセンター
TEL.076-429-2111
FAX.076-429-2701
http://www.pref.toyama.jp/branches/1661/nouken/noukentop080401.html

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