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2004年 2月 11日 [ トピックス ]
No.135-3:全国初、無花粉スギの発見と育成
●さわやかな春への願いを込めた「はるよこい」
富山県林業技術センター・林業試験場(立山町吉峰)によって育成された無花粉スギが「はるよこい」と命名され、県では品種登録を出願した。無花粉スギとは、その名のとおり、花粉をつくらず、花粉症の原因の一つとされる花粉をまったく飛ばさないスギ。1本の木に雄花と雌花はつくられるが、遺伝子の突然変異によって雄花の花粉表面に殻(ユ−ビッシュ体)ができないため、花粉同士が融合し膨らみ、最終的には壊れてしまう。花粉のもとになるものはできても、花粉になりきれずになくなってしまうという仕組みだ。
1992年、同試験場の研究員が、スギ花粉情報発信のための定点観測で訪れた富山市内の神社境内で花粉を飛散させないタテヤマスギを発見。電子顕微鏡で調べてみると花粉がまったくないことがわかった。同試験場では、このスギから採取した種子で苗木をつくり、無花粉のものや成長の優れたものをさらに選抜し、品種登録に必要な実証試験をこれまで行ってきた。
「はるよこい」の名称は、国内やアメリカ、オーストラリアから応募のあった3,327点の中から決まった。“花粉の飛ばない、さわやかな春がきてほしい”という願いが込められている。
●新年度から組織培養技術の研究に着手する計画
母樹は現在、同試験場で育成された1本しかなく、今後、挿し木による苗木の育成に乗り出し、2011年度をめどに緑化木用の苗木の供給を始める予定。新年度からは、バイオテクノロジーによるスギの組織培養技術の研究に着手する計画で、実用化に向けての研究の結果次第では供給開始が早まる見込みだ。計画では、「はるよこい」の枝から組織をとり、ビタミンやミネラルなどを配合した寒天に差して根が付くまで育てたあと、外気温や土などに慣らすため温室に置く。そして屋外で苗木として出荷できるまで育てる。組織培養技術の確立にはいくつかの課題があるが、全力で取り組みたい、と研究員は話す。
苗木、そして1本の木が育つには長い年月がかかるが、花粉症に悩む人にとって、まずは朗報といえそうだ。
問い合わせ
●富山県林業技術センター・林業試験場
TEL.076-483-1511