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2005年 1月 26日 [ トピックス ]

No.180-1:富山県木材試験場が大地震に強い木造住宅用の新制振技術を開発


●日本初の技術−床下の制振ダンパーとそれを用いた工法

 富山県木材試験場は、高岡短期大学、福井大学、秋田県立大学、原野製材株式会社と共同で、地震の震動を吸収し家屋の被害を低減する新しい木造住宅用の制振工法を開発した。現在、特許申請を準備中で、フィンランドにおける木材工学国際会議や日本建築学会で成果をそれぞれ発表し、注目をあびている。
 現在、住宅の一般的な地震対策は「耐震」、「免震」、「制振」の三つに分けられるが、効果やコストの面においてどれも一長一短がある。まず「耐震」は、筋交いなどの壁で建物を堅くして地震に耐えるような構造で、最も実績があり設計が容易。しかし、耐震性を高めると壁が多くなりすぎるというような問題点がある。「免震」は、建物の基礎に設けた免震部材で建物と地盤を絶縁し、地震と建物が一緒に揺れないようにするような構造。これは現在のところ安全性が最も高いと考えられるが、コストが非常に高いという問題点がある。もう一つの「制振」が、建物に設置したエネルギー吸収部材、いわゆるダンパーと呼ばれるもので地震エネルギーを吸収することにより、建物の揺れを抑えようという構造で、免震構造に比べると安価である。
 県では、このうち地震エネルギーを積極的に吸収する制振型技術がコストや性能の面で有利だと考え、研究を進めてきた。その結果、国内で初めて開発したのが、床下の部分において地震の震動を吸収する部品(制振ダンパー)とそれを用いた工法(上図参照)。この工法では、一般的な耐震木造住宅の下部に高床層を設置し、制振ダンパーを取り付ける。地震の際には、このダンパーで地震エネルギーを吸収し、上部に伝わる地震エネルギーを低減する構造。地震で床下のダンパーが破壊された場合も、住宅の床から上の構造は守られ、ダンパーを交換すれば住宅がそのまま利用できる。住宅の上部が破壊されないため、人身事故の防止にもつながる。地震と同じエネルギーを加えた実験でも、この工法の有効性が確認されている。


●安価で施工しやすく実用化に期待

 このダンパーは容易に交換できるので、地震に限らず保守管理や建物の再利用を行うことができる。施工も一般の大工や一般工務店で対応可能。コストの面でも大きな利点があり、県では、免震住宅だと通常300万円以上かかるとされる設備が、100万円以下と安価で整備できると見積もっている。
 なお、県では、住宅用とともに、規模の大きな建物用の制振技術の開発も行ってきた(下図2参照)。対象は柱とはりでできたような構造だが、この大規模建築物用のほうの制振ダンパーは、すでに特許申請を昨年出しており、もう実用段階に来ている。
 林業試験場では住宅用の制振ダンパーについて、「今後、実物大構造物の振動台実験などを続け、性能をさらに検証したうえで、コストの低減、施工性の向上などに取り組み、平成20年前後に実用化したい」と話している。今後の研究の成果に期待したい。




問い合わせ
●富山県木材試験場
TEL.0766-56-2815
FAX.0766-56-2816

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