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2005年 2月 16日 [ トピックス ]
No.183-1:さあ電離層探査へ再び!−富山県立大学、アラスカ大の学生ロケットプログラムに参加
●ロケットに搭載した中波帯電波受信機で電離層の研究に挑む
富山県立大学工学部電磁波工学研究室が、2002年に続き、米国・アラスカ大学フェアバンクス校主催の「学生ロケットプログラム」に参加する。観測用ロケットは、2月27日(日)にアラスカ大学のポーカフラット発射場からNASA(米国航空宇宙局)によって打ち上げられる予定。県立大学による自作の中波帯電波受信機を小型ロケットに搭載し、電離層の位置や地上からの電波が反射される仕組みなどを調べる。(※ただし、打上げが精密機器のトラブルなどで延期されることもある)。
この「学生ロケットプログラム」は、テーマ選定や観測機器・ロケット基本計器の設計・製作、ロケットの構造体の製作、地上検定試験・データ解析など、打ち上げ業務以外のすべてを学生で行う教育研究プログラム。宇宙理工学の知識と技術の習得、宇宙科学者の養成を目的として実施されている。富山県立大学は 1998年より参加しており、2002年3月に同大の電波受信機などを積んだ観測用ロケットの打ち上げに成功している。
電離層とは、太陽からの紫外線やX線によって、大気の原子や分子が電子とイオンに分離し、プラズマ状態となっている層のこと。高度約60、70kmから数百kmにわたって地球を取り巻いており、電波を反射させる性質を持っている。これによって地上から発信された電波が遠方へ到達できるが、電離層の状態は一定ではなく、電離層の位置や電子密度の調査が今後の衛星通信やGPS、地上における長波・中波通信の安定的な運用などにとって重要なテーマとなっている。
●夢を乗せたロケット、大空へ
2002年のプログラムでは、高度89kmまで飛んだロケットで高度40〜90km圏内の電波を観測し、搭載した電波受信機でアラスカの民間ラジオ放送の中波電波などを受信した。収集したデータを調べると、地上から高度60kmまで聞こえていた電波(660kHz)が75kmくらいから急に弱くなり、 82〜83kmでまったく聞こえなくなった。このあたりの層では中波が吸収されるといわれてきたが、それが観測によって実証された形だ。
今回のプログラムでロケット(全長5,664mm・直径356mm)に搭載される観測装置は、中波帯電波受信機とループアンテナ、プリアンプで構成されている。ロケット先端部にループアンテナ2本をクロスさせることで前回よりも感度を上げ、電波の波形を高精度で観測できることが特長。飛翔中(最高点到達:高度約90km、打ち上げから約150秒)には、アラスカ・フェアバンクス市内で受信可能な257kHzの無線航行用ビーコンと660kHz・ 820kHzの民間ラジオ放送波について地上から電離層との間の伝搬特性を観測。そこから電子密度分布を検出することで、国際通信における電波障害の解明などにも取り組む。
県立大学工学部電磁波工学研究室の岡田敏美教授と石坂圭吾助手の指導のもと、観測装置を製作した電磁波研究室の海保穏宏(かいほやすひろ)さんは、「県立大学がロケットプログラムに参加していることを知り、愛知県内の工業大学を卒業して県立大学の大学院へ入りました。子どものころから憧れてきた宇宙の研究に関わることができて感無量です。打ち上げの振動や宇宙環境に耐えられるように受信機を製作しました。部品のはんだ付けなどで徹夜も続きましたが、いい思い出になりました。ロケット打ち上げが成功することを祈っています」と話す。海保さんは、今春、人工衛星の電源・アンテナなどを製造する企業に就職する。データの解析は電磁波工学研究室の後輩によって引き継がれ、電離層の解明に役立つことになる。海保さんや電磁波工学研究室の今後の活躍にも期待したい。
問い合わせ
●富山県立大学工学部電磁波工学研究室
TEL.0766-56-7500
FAX.0766-56-8027
E-mail:okada@rdw.pu-toyama.ac.jp
http://www2.rdw.pu-toyama.ac.jp/