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2005年 6月 15日 [ トピックス ]
No.200-2:“「瀧口修造 夢の漂流物」展、「〜聖と俗の狭間で〜 村上華岳展」を鑑賞しよう
●瀧口修造の書斎へ、ようこそ! ミロ、デュシャン、日本の美術家との交流の結晶
「瀧口修造 夢の漂流物」展が、7月3日(日)まで富山県立近代美術館で開催されている。ヨーロッパで起こった芸術運動、シュルレアリスム(超現実主義)をいち早く日本に紹介した詩人で美術評論家の瀧口修造(明治36年〜昭和54年、富山市出身)。東京・新宿区西落合にあった自宅・書斎には、瀧口を慕って生前多くの美術家や音楽家、詩人らが訪れた。近代美術館には、芸術家から贈られたものや瀧口自身が気に入って収集したもの、共同で制作したオブジェなど、瀧口の書斎に残された美術品やオブジェなどが「瀧口修造コレクション」として収蔵されており、これまで調査・研究が進められてきた。
本展では、書斎に集まった国内外の美術品を中心に700点あまりを集めて展覧。瀧口のもとに漂着した不思議なコレクション「夢の漂流物」や、晩年にそれらから瀧口が夢想した「オブジェの店」などについて紹介されている。
会場には、瀧口がスペインのダリ邸を訪れたときに拾った石と貝、マルセル・デュシャンのサイン、金属の板を巻いて筆立てにした「かたつむりの筆立て」 (福田繁雄作)、電球の中に花が咲いた「電球」(岡崎和郎作)、缶詰から天使が現れる「天使の缶詰」(合田佐和子作)、瀧口が採集した穴だらけの石など、瀧口が拾った名もなきものや、著名な芸術家が贈ったものなどがずらりと並ぶ。ユーモア溢れる作品、摩訶不思議な世界に触れていると、想像力がかきたてられる。静かに眺めていると、人間の精神をいっさいの束縛から解放し、自由に羽ばたかせることを夢みた瀧口の思いや、彼を慕った人々の思いが伝わってくるようだ。
●神秘性と官能性を帯びた独特な画風が印象的
富山県水墨美術館では、「製作は密室の祈り」ということばを残し、芸術と宗教の融合を目指した日本画家、村上華岳(むらかみかがく)の回顧展「〜聖と俗の狭間で〜 村上華岳展」が7月3日(日)まで開催されている。
華岳は明治21年大阪に生まれ、京都市立美術工芸学校と京都市立絵画専門学校で円山四条派の流れを学び、浮世絵や南画、さらには西洋絵画を取り入れた新しい日本画を追求。大正7年、土田麦僊、小野竹喬、榊原紫峰、野長瀬晩花と国画創作協会を結成するが、画壇活動が画家の自由な創作を束縛するという考え方と、持病の喘息の悪化から大正15年に画壇を離れ、昭和2年に神戸に隠せい。以降、観世音像や六甲の山並、牡丹などを題材に、深い精神性を感じさせる独自の水墨画を手掛け、昭和14年に没した。
本展では、明治44年、当時学んでいた京都市立絵画専門学校のある吉田山から見た光景を西洋的遠近表現を用いて素直に描いた「二月乃頃」、目を閉じた舞妓を朱線で優美に描いた「二人舞妓」、霊性と官能性を併せ持った独特の観世音像に続いていく「裸婦図」の下図、飛翔する観音を描いた「雲中散華」、絶筆となった「牡丹」など代表作約150点のほか、書、素描、下図、書簡なども展示されており、華岳芸術の全貌が紹介されている。
本展は6月19日(日)までを前期、21日(火)から7月3日(日)までを後期とし、作品の大部分が入れ替わる。前期、後期で異なった作品が鑑賞できるのも魅力だ。神秘と妖艶さの漂う観音像を表現するなど、聖と俗の狭間にあった華岳の感性にふれてみたい。
問い合わせ
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.jp/branches/3042/3042.htm
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm