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2021年 6月 30日 [ トピックス ]
NO.1005:企画展「つながる琳派スピリットー神坂雪佳」開幕
●「近代の琳派」とも評される雪佳
幕末の京都に生まれた神坂雪佳(1866~1942)は、明治後期から大正、昭和前期に京都で活躍した画家であり、図案家。明治という新しい時代には工芸図案(デザイン)が必要であると考え、装飾芸術である「琳派」に傾倒し、手がけたデザインは、染織、陶芸、漆芸から室内装飾や庭園まで、実に多面的で、「近代の琳派」とも評される。
琳派とは、江戸時代に興った絵画様式、またはそのグループに位置付けられた画家たちの総称だ。江戸初期の本阿弥光悦、俵屋宗達にはじまり、およそ100年後の尾形光琳やその弟の尾形乾山、さらに後の酒井抱一らに受け継がれた。
琳派がほかの流派と大きく異なる特徴は、組織によって伝承された様式ではなく、後世の人が先人の作風などに共感し、再生と変容を重ねてきたことだ。装飾性豊かな作風は、絵画や工芸といった領域を越え、さまざまな意匠を生み出し、近代以降も多くの分野に影響を与え続けてきた。
本展では、雪佳が手本とした琳派の美の潮流をたどり、暮らしを彩るデザインを生み出した近代琳派・雪佳の多彩な世界を紹介する。
●琳派の美から雪佳の多彩な世界まで
本展は「Ⅰ あこがれの琳派」、「Ⅱ 美しい図案集ー図案家・雪佳の著作」、「Ⅲ 生活を彩るー雪佳デザインの広がり」、「Ⅳ 琳派を描くー雪佳の絵画作品」の4つの章に分かれる。いくつか作品を紹介しよう。「Ⅰ あこがれの琳派」に展示中の俵屋宗達≪双犬図≫は戯れあう仔犬を水墨のみで表現した作品。黒犬は彫塗りによって目や耳をやわらかくもくっきりとした線で示し、たらし込みで毛並を表す。白犬は薄墨の輪郭線を用い、さらに外隈で白さを際立たせている。たらし込みとは、墨などを塗った場所が乾く前に、濃度の異なる墨または絵具をたらし、にじみ具合の偶発的な形や色彩の効果をねらった技法。琳派の画家たちが好んでこの描法を用いた。
「Ⅱ 美しい図案集ー図案家・雪佳の著作」では、雪佳が発表した主な図案集を紹介。『百々世草』の中の「八つ橋」はエルメス社の機関誌『エルメスの世界』の表紙に採用されるなど、雪佳の図案は地域を問わず、多くの人々を惹きつける新鮮な魅力を放っている。
「Ⅲ 生活を彩るー雪佳デザインの広がり」では、簡潔でモダンな雪佳のデザインが工芸家たちの高い技術によって具現化されてきたことがわかる。たとえば、雪佳の図案による≪鹿図蒔絵手元箪笥≫は、琳派で秋の情趣を伝える主題としてよく取り上げられてきた「鹿」がテーマ。鹿の角に貝を使っているが、体は落ち着いた色調の鉛で表現されている。制作したのは雪佳の弟で漆芸家の祐吉。光琳、乾山兄弟のように雪佳も兄弟で工芸にたずさわっていた。
≪菊花透し彫鉢≫も雪佳の図案。大ぶりの丸い器に菊の花を大胆に斜めに配置し、花弁部分の輪郭を残しながら透し彫りにした作品。器のデザインをまとめた巻子からは、立体作品に対する雪佳の構図感覚がうかがえる。
同じく雪佳の図案である≪水の図向付皿≫は、水文を器にする発想が斬新。独特の水模様は、光琳の≪紅白梅図屏風≫などに見られる「光琳水」と称される意匠に基づく。洒落たデザインは、現代にも通じる。
「Ⅳ 琳派を描くー雪佳の絵画作品」の冒頭には≪金魚玉図≫。丸いガラス容器に入れられた金魚が観賞者を見つめるという構図がユニークで、暑い季節に涼を運んでくれる。水のゆらめきが金魚に施されたたらし込みから伝わってくる。
金地に描かれた
県水墨美術館では、「琳派の精髄を受け継いだ雪佳の作品群をぜひ間近で鑑賞を。会場内では細見美術館館長による作品解説映像も上映中で、毎週金曜日は、金魚の図柄のあるグッズなどを持参すると、団体料金でご覧いただけます。うちわデザインコンクールも開催しており、7月13日(火)から優秀作、秀作などの作品を展示します」と話している。
- 問合せ
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●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
https://www.pref.toyama.jp/1738/