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2021年 3月 17日 [ トピックス ]

No.991:ジャパンオリジナル!県産スギのウクレレ開発

富山県農林水産総合技術センター木材研究所は、辻四郎ギター工房、県総合デザインセンターなどとの研究・開発チームで、県産材のみを使用したウクレレの開発を進めており、このほど試奏会を開催した。   
また、スギの粉と水のみを原材料にした「木粉塗料」の開発の話題も紹介しよう。

●富山から世界に通用するオール富山の楽器


▲試作品の第1号(左)と第2号


▲サウンドホール部分の装飾(左)
▲木材圧縮加工技術や
人工杢目付与技術を活用(右)


▲ウクレレ試奏会の様子

 ウクレレなどの楽器に使用されているローズウッドなどの海外産の高密度木材は乱伐などの問題で、今後、ワシントン条約により輸入できなくなる。そのため、代替材料のニーズが高まっている。

 県木材研究所では、ローズウッドなどと比べて密度が低く、部位によって硬度のバラツキがある、県産スギの間伐材を代替材料に使えるよう、研究所開発の木材圧縮加工技術を活用。弦楽器に使用できるように素材の密度を高めた。また、デザイン面で海外のブランド製品との差別化を図る目的で、意匠性を高めるため人工杢目付与技術を活用。サウンドホール(ボディの穴)のリングなどに高岡銅器や高岡漆器の伝統技術も活かして装飾した。

 ウクレレの試奏会がこのほど開進堂楽器(楽器センター富山)で開催され、関係者がプロによる演奏で音の響きを確かめた。4本のウクレレで音色の違いを聞いたが、「音に雑味があり、もう少しクリアな響きがほしい」、「音が単調」、「高音ののびが足りない」、「もっと深みのある音にならないか」など、さまざまな意見が出た。

今後、低音から高音までバランスよく音が出るように改良する。個性的なウクレレ、日本初のユニークな楽器の完成を目指す。研究・開発チームでは、海外への販路を開拓するため、国内外での展示会も開催し、楽器を通して富山の技術を世界に発信したい考えだ。

 県木材研究所では、「第1号、2号と試作を重ねてきました。材料から装飾までオール富山で、ジャパンオリジナルのウクレレ。今後、深みのある個性的な音が出せるように調整していきたい」と話している。

●脱炭素社会へ、木粉塗料


▲木粉塗料

 「木粉塗料」は、機械で砕きやすいボカスギの未成熟部分を使ったスギの粉と水のみを原材料とする。植物繊維を微細化した新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の製造技術を基に、木粉を1,000分の1㎜の大きさに細かくすることで、水と結合しやすく、塗料に適した素材になることが2年越しの研究で分かった。

植物由来の原材料のため、安全性が高いのが大きな特徴。吸水性や吸湿性、吸油性なども備えており、他材料と混ぜることもできる。加熱して圧縮すれば、硬度も高まる。断熱性が高く、屋内の壁や柱など内装材への活用が期待できる。製造コストを低く抑えられるのも魅力だ。

 現在、製法を特許出願中で、製品化に向けて民間企業と協議している。実用化されれば、石油由来の既存の塗料に代わり、二酸化炭素の排出量削減につながる。

 県木材研究所では、「製品づくりが進めば、木材資源の有効活用につながり、脱炭素社会の実現にも貢献できます。富山の山林を豊かにすることにもなります。いろんな活用策を考えたい」と話している。

問合せ
●富山県農林水産総合技術センター木材研究所
TEL.0766-56-2915
FAX.0766-56-2816
https://taffrc.pref.toyama.jp/nsgc/mokuzai/

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