トピックス

アーカイブ

2020年 12月 16日 [ トピックス ]

No.981:優良無花粉スギ「立山 森の輝き」、県外初出荷

富山県が全国に先駆けて開発した優良無花粉スギ「立山 森の輝き」。このほど苗木が林業用として初めて県外に出荷された。県内では、昨年度までに約20万本が植栽されており、クリーンな森づくりへの期待も高まっている。

●クリーンな森づくりへ


▲トラックに積み込まれる
「立山 森の輝き」(左)
▲コンテナ苗による生産風景(右)

 春、スギ花粉症に悩まされる人も多いだろう。国民病ともいえる花粉症の対策として、スギ林からの花粉飛散量をどう少なくできるかが課題だ。富山県では全国に先駆けて、花粉がない「無花粉スギ」の種子による量産技術を確立し、無花粉スギを本格的に山林に植栽し、普及に向けた取組みを行っている。

 富山県農林水産総合技術センター森林研究所(立山町吉峰)は1992年、花粉飛散の調査中、富山市内の神社で無花粉スギ(タテヤマスギの突然変異体)を全国で初めて発見。無花粉になる性質が一対の劣性遺伝子に起因していることを解明し、無花粉スギの品種開発に取り組んだ。

 2000年、全国から精英樹(成長、形質ともに特に優れたものを選抜・登録した個体)の花粉330品種を集め、そのうちの4品種(富山・石川・静岡・神奈川)が無花粉の劣性遺伝子を持つことを突き止めた。その後、初期成長と挿し木の発根性、雪害抵抗に優れた無花粉スギ「はるよこい」を選抜し、2007年、全国第1号の無花粉スギとして農林水産省に品種登録した。さらに、雄性不稔遺伝子(花粉を正常に形成できない遺伝子)を有するスギ精英樹を交配親に持つ「優良無花粉スギ」を育成し、種子による優良無花粉スギ(愛称:立山 森の輝き)の大量生産に取り組んできた。

 県内では、昨年度までに約20万本の「立山 森の輝き」が植栽されており、今年度から年間で県が4万本、県内民間業者が6万本の計10万本の育成を進めている

●高さ30~70cmの3年生の苗木


▲ラッピングされたコンテナ苗

 2020年11月25日、富山県森林組合連合会は、優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の苗木5,000本を、福井県あわら市の坂井森林組合に出荷した。県内への本格的な出荷がスタートした2012年度以降、林業用としての県外出荷は初めて。富山県は基本的に苗木を県内で植えているが、県内の需要を見極めた上で出荷が可能と判断した。生産者の県樹苗緑化協同組合が射水市内で坂井森林組合に苗木を渡した。苗木はコンテナ苗で高さ30~70cmの3年生。坂井森林組合によって、順次あわら市内の山林に植樹される。

 なお、コンテナ苗とは、主に樹脂製の多孔容器によって育成された根鉢付きの苗木。育苗に際しては、除草や植え替え、根切りにかかる手間が減る点や、ビニールハウスや小面積で育苗できることから機械化や大量生産に取り組みやすい点などが特長だ。普通苗に比べて扱いが容易で、専用の植付け器具の使用などによって植付け作業時間の短縮が期待できる。

 富山県森林政策課では、「今後も県内需要に十分対応したうえで、『立山 森の輝き』を県外、全国へ出荷していきたい。コンテナ苗やさし木苗など、効率的な苗木生産に向けた取り組みを進めています。『立山 森の輝き』は皇居東御苑や日比谷公園(かもめの広場)、2017年に全国植樹祭が行われた魚津桃山運動公園(魚津市)にも植栽されています」と話している。

問合せ
●富山県農林水産部 森林政策課
TEL.076-444-3389
FAX.076-444-4428
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1603/


コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑