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2019年 6月 19日 [ イベント ]

No.912:富山県美術館、日本初!チェコ・デザインを総合的に紹介

19世紀末から現代までのチェコ・デザインを紹介する企画展「チェコ・デザイン 100年の旅」が富山県美術館で開幕<7月28日(日)まで>。アルフォンス・ミュシャの作品をはじめ、家具、食器、ポスターなど約250点を展示する。併せて、県美術館の収蔵作品を展示替えした「コレクション展Ⅰ」<8月6日(火)まで>の話題もお届け。名作と出会う夏旅、富山旅へ。

●ミュシャのポスター《ジスモンダ》に迎えられて

 ヨーロッパの中心に位置し、歴史的にさまざまな文化が交差してきたチェコ。古都プラハを中心に、20世紀には次々と芸術運動が展開し、建築やインテリアにまで波及するチェコ・キュビスムという芸術様式も生まれた。また、豊かな天然資源を背景に、ボヘミアン・グラスをはじめとする産業が発達。戦争や政変を経ながらも、チェコ独自の美、デザイン、伝統の技が現代まで受け継がれている。


▲「チェコ・デザイン 100年の旅」の
第1章「1900年:アール・ヌーヴォー
生命力と自然のかたち」(左)
▲1920―30年代の展示(中央)
▲1950―60年代の展示(右)

 今回の企画展は、チェコのデザインを総合的に紹介する日本初の展覧会。チェコ国立プラハ工芸美術館の所蔵作品を中心に、家具、食器、ポスター、おもちゃ、書籍など約250点を展示する。第1章「1900年:アール・ヌーヴォー 生命力と自然のかたち」から第8章「1990年代から現代まで:自由化と機能の再発見」までの時代別展示、第9章「チェコのおもちゃと子どものためのアート」と第10章「チェコ・アニメーション」のテーマ展示の構成となっている。チェコ国外でこれだけ大規模に時代を追ってチェコのデザインを展示する企画展は初めてだ。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパでは自然主義的な植物の形や抽象的な曲線を生かしたアール・ヌーヴォー様式の装飾が広まった。第1章では、アール・ヌーヴォーの旗手として知られる画家、アルフォンス・ミュシャを一躍有名にしたポスター《ジスモンダ》などを展示。優美な女性像、繊細なパステル調の色合いが印象的だ。

 1910年代、チェコではキュビスム(立体派)が絵画や彫刻だけでなく、建築や日用品、インテリアの分野にまで影響を及ぼした。キュビストたちが最も完璧な自然の形とみなしたのは結晶。第2章「1910-14年:チェコ・キュビスム 幾何学的形態からキュビスム」では、黄鉄鉱の結晶を模した陶器の小箱、石碑を思わせる椅子などを展示している。

 このほか、幾何学的形態と抽象的単純化を民族的な要素と結び付けたアール・デコの装飾が工芸品や工業製品に用いられた1920年代、シンプルな形と機能性を重視した30年代、有機的なフォルムと天然素材に目を向けた40年代、ポップアート、サイケデリックなどがデザインに影響を与えた60年代、ポストモダンの傾向があらわれ始めた80年代、そして、国境を開いた89年のビロード革命以降、デザインが洗練されていった90年代から現代までを俯瞰できる。

●作品から聴こえてくる音を連想してみよう


▲「コレクション展Ⅰ」の“声・人物”の章

 富山県美術館は、収蔵作品を活用し、年4回テーマ展示を行っている。現在開催中の「コレクション展Ⅰ」では、ピカソやデルヴォーなど巨匠の作品が見どころとなる。<8月6日(火)まで>また、本展では、“耳をすませば”を主題とし、音を連想する作品鑑賞を4つの章立て1.「音・リズム」2.「声・人物」3.「ハーモニー・風景」4.「静けさ」を手掛かりに紹介している。画面に描かれた色やかたちのリズミカルさ、作家それぞれの作風で描かれた人物や風景など28点の作品を、「見る」と「聴く」を結び付けて鑑賞してみてはいかがだろう。

 2.「声・人物」の展示作品は、描かれた人物の特徴的なプロポーション、顔の表情、裸婦にみる肉体の生命感に注目できる。 藤田嗣治《二人の裸婦》は“乳白色の下地”とよばれる藤田独自の画風が特徴。うす塗りのつるつるとした白い画面に、流麗な輪郭線で描かれている。パブロ・ピカソ《肘かけ椅子の女》は、グレートーンで愛する女性、オルガを描いた作品。目線を伏せたその表情から何を言わんとしているのか、声を想像してみよう。ポール・デルヴォー《夜の汽車》は裸婦と汽車を組み合わせた不可思議な世界が広がる。個性豊かな作品を見ながら耳をすますように想像を巡らせてみてはいかがだろう。

 富山県美術館では、「『チェコ・デザイン 100年の旅』併設特別展示として『アルフォンス・ミュシャ ―株式会社インテック所蔵作品より―』も開催しています。黄金期とされるパリ時代のポスターやリトグラフなど23点を紹介しています。ぜひご鑑賞ください」と話している。


問合せ
●富山県美術館
TEL.076-431—2711
FAX.076-431—2712
https://tad-toyama.jp/

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