- HOME : Toyama Just Now
- イベント
- No.902:桜の季節到来!県水墨美術館に中島千波作品「朧紅枝垂桜」、お目見え
2019年 4月 10日 [ イベント ]
No.902:桜の季節到来!県水墨美術館に中島千波作品「朧紅枝垂桜」、お目見え
●本物と日本画、創作の軌跡を探ろう
県水墨美術館は、今年度に開館20周年を迎えることを記念し、日本画家の中島千波氏(なかじまちなみ氏:1945年、長野県小布施町生まれ。東京藝術大学名誉教授)に同館のシダレザクラを題材とした絵画の制作を依頼していた。このほど作品「朧紅枝垂桜」(2018年 紙本着彩 縦116㎝、横162㎝)が完成し、常設展示「近代水墨画の系譜」で展示されている。
シダレザクラは1999年の開館に合わせて中庭に植えられた。もともとは秋田県角館町に近い農家に植えられていたサクラで、当時樹齢30年。移植以来20年間、広大な芝生の中庭に凛として立ち、同館のシンボルとして親しまれており、神通川沿いの桜並木(神通川左岸堤防)とともに「富山さくらの名所70選」の1つにも選ばれている。
中島氏は花鳥画や風景画、人物画を手掛け、特に日本各地の古木の桜や世界の名山を訪ねる旅を重ねてきた。今日、桜を描く画家として最も著名な日本画家だ。昨年4月1日に同館を訪れ、丸1日かけて写生を行った。作品に描かれたすべての花びらが正面を向いている。花びら一枚一枚の表情を丁寧に捉え、「花を肖像画として描く」という姿勢で描かれたという。水墨画を意識し、墨を用いて描かれた幹や花びら、風にそよぐ枝も印象的だ。樹齢千年以上の古木を描くこともある中島さんにとって、同館の樹齢約50年のシダレザクラは若木に見えるといい、「まだ若いこの樹の愛らしい姿を表現した」とメッセージを寄せている。
5月23日(木)からの企画展「美を謳う 中島千波の世界」<7月7日(日)まで>では、日本画30点、デッサン20点余りを展示する。日本画であり続けながら伝統に安住せず、常に新しい時代の表現を求めて実験と革新を推し進め、独創的な美の世界を謳い続ける中島氏の50年余に及ぶ画業をたどる。初夏の陽光に誘われて、企画展を訪ねてみたい。
●今回から「ひらけ墨画ワールド」と題し、新シリーズ展開
県水墨美術館では2002年から毎年、夏休み期間中に県内の子どもたちを対象に水墨画ワークショップを開催している。現在開催中の企画展「ひらけ墨画ワールド いろいろのいろ墨のいろ 荒井恵子と子どもたち」では、昨年7月のワークショップで講師を務めた水墨画家、荒井恵子氏(千葉県在住)の作品と、参加した39人の子どもたちの作品を展示し、墨による表現の可能性を紹介している。
ワークショップでは、まず子どもたちが白い紙に水をつけた筆で思い思いに線や形を描き、次に刷毛を使って墨をのせる。そうすると、水で描いた線や形が浮かび上がる。赤みがかった茶墨と青みがかった青墨の2種類の墨を用いたことで、墨にも色味があることを体感した。個人作品制作のあと、みんなで共同制作を行い、大きな紙に一人一筆ずつ線や形を描いていき、最後に荒井氏が墨をのせて作品を完成させた。展示作品には、子どもたちの個性豊かな墨の世界が広がっている。
荒井氏の出品作品は、宝成寺(千葉県)の襖絵「空」や、新作の「日々刻々α」、「日々刻々β」など13点。「墨と和紙での表現は子育てのようで、試行錯誤で育んでいく母親の眼差しによく似ています」と荒井氏は語る。「滲んでいく墨の色は無限の表情を見せ、私の気持ちを手、筆を介して和紙繊維の奥まで運んでくれます。染み込んだ墨は、私の想いを含みながら和紙と一体化していきます」。
会場では、墨や硯、筆、紙も展示し、多角的に水墨の世界を紹介している。墨は菜種油やごま油などの植物油、松の木などの煤(すす)を膠(にかわ)で練り、型に入れて乾燥させたもの。「百選墨」と呼ばれる100種類の墨の展示では、煤の粒子などによる色味の違いに触れることができる。
県水墨美術館では、「『いろいろのいろ墨のいろ』では、無限に広がる墨の表現世界を紹介しています。今後、対談やワークシップなども企画しています。ご期待ください。5月からの『美を謳う 中島千波の世界』では、中島氏の代表作を紹介します。ぜひご鑑賞ください」と話している。
- 問合せ
-
●富山県水墨美術館
TEL.076-431-3719
FAX.076-431-3720
http://www.pref.toyama.jp/branches/3044/3044.htm